パーパルディアに向かい、ミリシアルの第一外洋派遣艦隊7隻が軍港に誘導された後、日本の外交官2人とパーパルディアの役員2人……エルトとその秘書は、軍港に用意された部屋で締結に向けての最終会談を繰り広げていた。
見守り兼記録要員のアーヴィス含むミリシアル大使館職員3名はもとより、
「これが、全て最低ラインと言う訳ですか」
「いえ、被害に合った日本人やフェン王国に対する賠償の内容などについては、今後要相談で問題ありません」
「なるほど」
「しかし、皇国側の公式な謝罪と虐殺に関わった被疑者・重要参考人の引き渡し、これは日本国としても妥協し難い項目ですね。個人的には言わずもがな、国内世論としても
「客観的に見れば理解は出来ます。が、これは……厳しいと言わざるを得ません」
ただ、日本側が講和の条件として出した項目の内、被疑者や重要参考人の引き渡しについての議論が、パーパルディア側にとって非常に厳しいものであったが故に、一定のところから進んでいない状況となっている。
処刑と言う名の虐殺を命令され実行した兵士の1人のみであれば、容赦なく引き渡しが行われていただろう。第一外務局の職員数名が加わったのであれば、まだ何とかなっていた可能性が大いにあった。
しかし、フェンでの虐殺を命じたのが皇族の1人、レミールである点が良くなかったのである。
「厳しい……なるほど。念のためお聞きしますが、どの辺りが該当するでしょうか?」
「『被疑者や重要参考人の引き渡し』ですね。レミール様だけでなく皇帝陛下も該当するとなれば、恐らく
「全面戦争……」
「ええ。そして言いたくはありませんが、貴国にとってはわざわざ交渉などせず、魔帝級の軍事力で事を進めた方が恐らく楽でしょう」
「……」
皇帝のルディアスの方は直接指示を下した訳ではないものの、事後報告時にレミールの行為を一切咎めなかった点、かなり強い権限を与えていた点からして、無関係とは言いにくかったのも大きい。
なので、関わっていた可能性高しとしている日本に引き渡せば、ロクな運命になりそうにないと、エルトと秘書は考えていた。
「勿論、今までの皇国の振る舞いからして大分身勝手であるとは重々承知しておりますし、事情がおありなのも同様です。しかし、国家崩壊の危機ともなればどうしても、こう願わざるを得ないのです」
「願わざる、ですか」
加えて、レミールはともかくルディアスに関しては、一部の属領を含む勢力圏内の一般人の多くからかなりの支持を得ている存在である。
万が一引き渡しに応じようものなら、一部過激派に加えて皇帝を慕う穏健派、一部の民衆までもが蜂起して講和を台無しにしかねない。何なら、行き過ぎて暴走した結果国中が大荒れとなってしまう可能性が、大いにあった。
結果、後に待つのは日本により完膚なきまでに軍隊が叩き潰されるか、それがなくとも色々なごたつきで弱ったところに追撃を食らい、列強としての地位を失う事となってしまう未来である。下手すれば、国の滅亡すら視野に入ってしまうのだ。
「どうにかなりませんか? その、皇帝陛下と
「……」
当然、属領での
故に、エルトは講和云々に関しては全権を持たされつつも、可能な限り不利な流れとならないようにしてくれと、皇帝本人から命を受けていた。
最悪、自身は象徴と意見を述べる
なお、その際のルディアスの表情はエルトはもとより、最も彼に近かった者ですら見た事のない、悔しさや怒り、悲しさなどが混じった例え難い表情だったと言われている。
「確かに、我が国としても皇国崩壊からの、
「そうですか……日本国の方の厚意に、感謝致します」
「ですが、レミールさん含む虐殺に関わった人物については、要求通り引き渡して頂く事になります。よろしいですね?」
「……承知致しました。陛下にはそうお伝えします」
そんな中、並大抵の人であれば逃げ出したくなるような圧がかかる雰囲気の部屋で、長々と続いていた被疑者や重要参考人引き渡しの話について、ようやくお互いに折り合いがついた。
パーパルディア側は、ルディアス含む数名の引き渡しについては取り下げさせ、日本側はその代わりにレミール含む虐殺に関わった人物については、引き渡しに同意させた形となる。
多種多様な情報網による日本の性格調べ、所々誇張しつつも正しい国内事情などの説明、威圧感を決して出さない喋り方、他にも細かな要素が加わった結果と言えるだろう。
「な、なんだと!? クソッタレ、冗談じゃないぞ!」
こうして、後は戦艦の甲板上での調印式のみとなったはずであったものの、秘書の持っていた小型の魔導通信装置に入った1つの知らせにより、それどころではなくなってしまった。
本作独自の種族に関しての質問
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多くして欲しい
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多くしても問題ない
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これ以上は望まない
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作者にお任せ