「総員、速やかに定位置につけ! これは訓練ではない! 繰り返す、これは訓練ではない!」
講和条約締結に向けての会議中、エルトの秘書にとある知らせが届きその場の全員に伝わるのとほぼ同時刻、軍港に停泊していた第一外洋派遣艦隊の中、アロンダイト級魔導空母『アロンダイト』艦内はかなり慌ただしくなっていた。
パーパルディア各地の海軍や陸軍の基地、現在アルタラス王国に存在している軍基地から、一部の過激派が勝手に竜母2隻含む魔導戦列艦を出航させ、講和を台無しにしてやろうと動いたのがミリシアル大使より知らされたからだ。
加えて、陸軍からも一部が離反し、同様の目的で動き始めているとの知らせも入っているとの事だが、そちらの方はパーパルディア皇国陸軍精鋭部隊が既に対応に当たっているため、問題はない。
そして、気づくのが遅れるなど数々の要因が重なって皇国側が止めきれず、攻撃しに向かってきている過激派の魔導戦列艦20隻、ワイバーンオーバーロードやワイバーンロードで構成された航空戦力の撃破を、司令官に命じられて今に至っている。
エストシラントの三大基地、工業地帯であるデュロ防衛隊、他大半の関係ない皇国軍を見分けるのが難しい問題については、そもそも会議中は皇国軍が軍港周辺をうろつく事を、陸海空問わずに禁じられていた。
とどのつまり、軍港周辺で動いている奴らは全員過激派と言う訳であり、襲ってきた場合の反撃は当然認められているため、考える必要はない。
「頼んだぞ、エア! 一応言っておくが、相手はこちらの半分かそれ以下の速度であれど、油断するなよ」
そんな慌ただしくなる中、ミリシアルの最新鋭戦闘機エルペシオ4に乗り込むエースパイロットの『エア』は、誰よりも先に出撃しようと機体に乗り込んでいた。
後に続く仲間やアロンダイト他6隻の乗員の負担を減らし、死傷者を出させない確固たる意思を持っているからだ。待機所自体が近くにあるし、訓練は行き届いている上にそもそも士気はかなり高いので、大して変わりはしなかったが。
「言われなくても、油断などしませんよ。死にたくないですし、仲間を死なせたくないですから……では、行ってきます!」
このタイミングで居た、戦闘機の整備士と軽くやり取りを交わして風防を閉め、圧縮魔波式カタパルトの力で急加速、こちらへ向かってくる不埒な輩を撃墜すべく、エアは大空へと飛び立つ。少し遅れて、味方のエルペシオ4も順次飛び立っていった。
なお、戦列艦の撃沈は新型魔導爆弾を搭載した爆装型『ジグラント4』、ミリシアル史上初の魔導魚雷を搭載した雷装型ジグラント4が行う手筈となっていた。
両機共に最高速力が680㎞/hと、ワイバーンオーバーロードの430㎞/hを大きく超えてはいるが、万が一があってはならないので護衛のエルペシオ4はついている。
ちなみに、ミリシアルの空母以外の6隻、日本のイージス艦こんごうについては、航空隊の迎撃を抜けた敵の対処に当たると、かなりの速さで決定された。
「はぁ……全く、面倒な事をしてくれる奴らだよ。巡りめぐって自分等の首を絞めてるのが分からないのか?」
『ははっ! まあ、分かってたらこんな事はしませんわな!』
「だよねぇ……おっ、見えてきたね」
『ざっと50騎か。数的には40も不利だな』
日本の外交官はこんごうに、ミリシアル大使館職員やパーパルディア側も、各々安全な場所へと避難する事自体は出来た。
だが、講和を台無しにするためだけに日本やミリシアルだけでなく、自国の人間までも巻き込もうと仕掛けてくる過激派の愚かさに、エア含めた制空戦闘機隊は全員内心呆れている。
「さあ、ここで会ったが百年目。墜ちろ!」
そうして相手よりも遥か上を取り、位置エネルギーを味方につけた急降下をエア以下4機が実行、すれ違いざまに30㎜魔光機関砲と20㎜魔光機関銃を叩き込んで4騎撃墜した事で、空戦の火蓋が切られる。
無論、過激派のワイバーンロードも下へ抜けていったエルペシオ4を追おうとするが速度差がありすぎて追随出来ず、止めたところで逆にその隙を突いてきた別の機に魔光機関砲を浴びせられ、バラバラになって海に落ちていく末路を辿る。
『よっしゃ、3騎撃墜! しっかし凄ぇ威力だなコイツは。ワイバーンがバラバラだぜ』
『おお、調子良いな。ただ、ちょっと速いとは言え相手が相手だし、腕が鈍りそうだ』
「はいそこ、油断してたら喰われるかもよ?」
『へーい』
『相変わらずのエース様だこと』
決して格闘戦に自ら持ち込まず、また持ち込ませずに倍以上の速度差を活かした一撃離脱戦法の徹底が功を奏し、戦況はパイロット同士が通信で軽口を叩き合える程に、ミリシアルの圧倒的優位となっていた。
『こちら爆撃隊、敵竜母2隻撃沈! 損害なし!』
『雷撃隊、同じく損害なし。なお、5隻の撃沈に成功しました』
『おお、使える試作品とかも突っ込んだ新兵器の割には、結構良い感じだな。訓練の賜物か?』
『うーん……とは言え、外れたものも多数ありましたので、精進せねばなりません』
同時に、海上では爆装型ジグラント4が竜母2隻を250kg魔導爆弾で轟沈させ、雷装型ジグラント4の魔導魚雷が100門級魔導戦列艦を次々に海の藻屑とするなど、こちらも余裕寂々な戦闘経過となっている。
「うおっと! 危ない危ない……よーし、喰らえ!」
機体性能と飛行技術の差で相手を寄せ付けない味方を尻目に、エアもそれ以上の技術と超反応で不意の流れ弾も避け、鮮やかなバレルロールなどを駆使して立て続けに4騎を撃墜していく。
会敵してから30分にも満たない時間ではあるものの、50騎居たワイバーンも残り3騎となり、20隻の魔導戦列艦はジグラント4の余った爆弾や魔導魚雷、魔光機関砲によって既に壊滅させられていて、大勢は決したと言えるだろう。
まあ、列強同士とは言え格の違うミリシアル、更にはそれを超える日本のイージス艦が1隻居た時点で、こうなるのは自明の理と言えたが。
「ふぅ……まあ、こんなものかな」
そして、破れかぶれで艦隊に攻撃を仕掛けようとした3騎がエアによって速攻で撃墜された瞬間、周辺の空域や海域から過激派は完全に姿を消した。
申し訳ないですが、次回の更新については諸事情により、4日~6日程間が開きます。
本作独自の種族に関しての質問
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多くして欲しい
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多くしても問題ない
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これ以上は望まない
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作者にお任せ