光の申し子   作:松雨

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海中の憂い

 ミリシアル政府の人的・金銭的支援により、ここ数ヵ月で魔導電磁レーダーの生産体制構築率が5割に達し、記念すべき初の国産魔導潜水艦『シーハイド』の完成や魔音波発探知装置の解析が終了するなど、調子がすこぶる良い時が続いていたとある日の昼間、仕事場にて私はビアへ相談を持ちかけていた。

 

 内容は、彼女含めた何人かの優秀な部下の子たちに、防空巡洋艦や対空装備の研究・製造指揮を完全にではないにせよ任せ、自分は別の何人かと共に魔導潜水艦や駆逐艦、対潜装備の研究・製造指揮により一層力を注ぎたいと言うものである。

 

「海中の脅威? 巨大海魔は確かに脅威だけど、そこまで言うって事はもしかして、潜水艦?」

「その通りです。ビアさんは、マグドラ群島ってご存知ですか?」

「うん、知ってる。私のおばあちゃんがその中の有人島『フォグ』出身だから、良く話を聞かされてたし……何かあったの?」

 

 無論、それに至る理由は存在している。魔導通信から、アルネウスさん経由で国防省の『アグラ』さんより、可能なら対潜装備や艦船、魔導潜水艦の建造にもっと力を入れてもらえないかと依頼されたからだ。

 

 何でも、ここ最近マグドラ群島近辺海域の巡回兼訓練を行っている『第零潜水駆逐隊』より、所属不明の潜水艦を2隻探知したとの報告が1度挙がっていたらしい。

 

 その際、装置の解析が完了した事によって修理だけでなく、体制が整えば生産すら可能となっているので、発掘してすぐ使える状態だったものを搭載して待機中だった2隻の駆逐艦は、第零潜水駆逐隊を構成する艦として活動を開始していた。

 

「確か、潜水艦を持っている国ってミリシアルと日本だよね。でも、日本が領海侵犯するはずないとなれば……」

「確証はありませんが、可能性としてはグラ・バルカス帝国が1番高いでしょう。かの国の事ですし、何かしら活動をしていてもおかしくありません」

「そっかぁ……」

 

 お陰で、指向性を持たせたアクティブソナー音を出しつつ追いかけ、撃沈するかしないかギリギリの場所で魔導爆雷を投下、脅して領海から追い出したため被害をゼロに出来たとの事だけど、海中に味方ではない潜水艦が居るなんて、冷や汗ものでしかない。

 

 だからと言って、第零潜水駆逐隊を常時巡回させておく訳にもいかないだろうし、魔帝のセイド級対潜魔船『シービス』は万が一損傷してしまえば、魔音波発探知装置以外を修理する事は現時点でほぼ不可能なのだ。アグラさんがそう頼んでくるのも、当然の摂理と言える。

 

 なお、当時は水平線を見渡す限りでも艦影はなく、旗艦のシルバー改級魔導巡洋艦『ロイヤー』に搭載された高出力魔導レーダーにも、ミリシアル以外の航空機が領空内に居る様子は見られなかったとの事。少なくとも、即戦争をしに来た訳ではなかったようだ。

 

「オロールさん。貴女の頼み、了解したよ! 世界征服を企む国の潜水艦が、知らず知らずの内にすぐそこまで来ているかも知れないともなれば、断る訳にもいかないしね」

「ありがとうございます、ビアさん。後々私からも声をかけますが、もし良ければあの子たちにも伝えておいてくれますか?」

「勿論、その程度なら任せて!」

 

 で、私からのお願いに関してはビアが即了承してくれて、防空巡洋艦や各種対空装備の研究開発・製造指揮については心配要らなくなったため、今度はこの事を私と一緒に動いてもらう予定の子たちへ伝えるべく、学院内を探し回りにこの場を後にした。

 

(焦らず冷静にって言ったって、私には……でも)

 

 数ヵ月前、日本とパーパルディアの講和条約締結のため、派遣された第一外洋派遣艦隊を過激派が襲ったと聞いた時はかなり驚いたものだけど、今回のこれはそれを凌駕する位の驚きと焦りが私の心を埋めている。

 

 古代発掘兵器を除けばミリシアルと普通に張り合える程の技術力、もはやおかしいとしか言い様がない程の国力(物量)、講和条約締結前のパーパルディアみたいな思想と鬼畜の所業、これらが揃えば無理もないだろう。

 

 それ故に、明日から5日間も定期的に行う身体検査やカウンセリングのために通院する時間込みで、休日を申請してしまった事を早くも後悔し始めてきたものの、当たり前だがこのまま予定の変更はしない……と言うか、絶対に出来ない。

 

 カームや魔導学院の皆、アルネウスさんやメテオスさんとの約束があるからなのは言わずもがな、まさかの皇帝陛下から間接的ではあれど「休める時にしっかり休んでおけ」と、ありがたい一言を頂いているからだ。

 

 魔音波発探知装置の解析完了報告のために、ルーンポリスを訪れた時の出来事なのだけど、何も聞かされていない状態で側近の人から手紙をもらった時は、本当に心臓が止まりそうだったのを覚えている。

 

「ん? あ、オロール技術長。お疲れ様です」

「はい、お疲れ様です。皆様、お仕事中失礼ですが、少しよろしいでしょうか?」

「はーい、どうぞ。仕事中って言っても私ら今、重要なところを終わらしてて少し暇なんで」

 

 頭の中で過去の振り返りをしながら探し回る事15分、建造中の駆逐艦2隻があるエリアに目的の子たちがいたので声をかけ、魔導通信でのアルネウスさんを介したアグラさんとのやり取りを説明し、理解を求めた。

 

 とは言え強制などではないので、無理と答えが帰って来た場合は食い下がらずに引き下がり、色々と厳しくなったのでご期待に添えないかも知れませんと、アグラさんに魔導通信で伝えるつもりでいるが。

 

「そりゃ、断る訳ないじゃないですか。オロール技術長」

「違いないわ。領海内に他国の潜水艦が潜航しながら入ってきてたとか、冗談抜きで大事件だもの」

「よし、私らと他の魔導技師たちでとびきりの奴を作ってやりましょう! ソイツらが2度と馬鹿な真似をしようと思わなくなる程に!」

 

 しかし、私の話を聞いた3人に加えて、その場に居た他の優秀な人たちも賛同してくれたため、これからしばらくは対潜装備や駆逐艦、魔導潜水艦に力を入れていく事が決定した。

本作独自の種族に関しての質問

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