光の申し子   作:松雨

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第八帝国

 最弱とは言え、列強であるレイフォルをたった1隻で滅亡にまで追い込んだ伝説(実績)がある戦艦『グレードアトラスター』、この艦船を建造する力を持つグラ・バルカス帝国は今現在、軍関係者や情報局『バミダル』や部下の『ナグアノ』と言った人物を中心にかなり騒いでいた。

 

 何故なら、世界征服の野望で最大の障壁と判断した神聖ミリシアル帝国が、当初の想定以上に脅威的だと判明してしまったためである。

 

 列強以外は考えるまでもなく、その列強もレイフォルとパーパルディアは論外寄り、エモールは航空戦力が厄介な可能性があると言うのが、グラ・バルカスの大まかな認識である。

 

 また、ムーは現時点で圧勝出来るにせよ、発展性と技術者の優秀さが凄まじいため、油断は禁物との論調が根強い。

 そして、ミリシアルは自国と同等の大きさを誇る戦艦(ミスリル級)や空母・巡洋艦を建造でき、駆逐艦や潜水艦はかなり少ないとの情報から、本気で戦えば損害は出ても勝てはすると考えていたのだ。

 

「未だに魔法とやらの原理は理解出来んが、ミリシアルの国力はかなり高い事だけは確かだ」

「はい。特に、艦隊の中でも目測270m前後の巨大戦艦(ヴァーテイン)や情報の中にあった巨大空母(アロンダイト)、搭載されていたと言うプロペラのない機体……1隻でも厄介なのに、あんなのが複数隻あれば、脅威以外の何物でもないですよ」

「ああ、違いない」

 

 しかし、パーパルディアに派遣されていた、隠密を得意とする諜報員からもたらされた第一外洋派遣艦隊7隻、空母の各種艦載機についてある程度の情報がやって来ていた。

 

 故に、同程度の艦船の1隻あたりの最大建造期間、総保有数やより詳しい性能などによっては、本気を出しても海戦では痛み分けや敗北する可能性すらあるとの認識が、徐々にではあるが広まりつつある。

 

 無論、航空戦力に関しても1機あたりの最大製造期間、総保有数や詳しい性能によっては、空戦でも不利に傾いた状況が更に不利へと傾いてしまう。このように考える人物も、同様に増加の一途を辿っていた。

 

「巨大戦艦は最低でもヘルクレス級2~3隻、もしくはグレードアトラスターを相対させれば良いだろうが……航空戦力は、制空型で目測時速800㎞は出ていたと言う話だから、それを発揮した戦法を取られれば厳しい。低速低空域での格闘戦なら、望みはあるだろう」

「同じく。しかし、相手がわざわざこちらの土俵に立って戦ってくれる道理などありませんし、空戦では正面からの激突は好ましくないでしょう」

「確かにな。だが、いずれ必ず相対する事となる相手、どうにかしていかなければ」

 

 ただ、相手が技術力で自国と同等か()()()()()()()()()()()とは言え、それだけなら短期間の圧倒的物量でどうにかなる。

 

 色々な意味で現実的ではないが、最悪1400隻を超える海軍艦艇や1800を超える航空機の投入が可能であり、大半の国家が持つ防御能力を飽和させる事がグラ・バルカスは出来るからだ。

 

 とは言うものの、魔法は科学と技術体系が異なるが故に、一見同等に見えてその状況をひっくり返す何らかの要素を秘めていてもおかしくはない。

 

 そのような考えも存在していたため、ミリシアルに関しては異なる体系の上に成り立つ文明なれど、脅威度は前世界(ユグド)の『ケイン神王国』を超えると上方修正し、情報収集により力を入れていく事が話し合いにより決定した。

 

「ところで、純科学文明な日本国については何か情報はあるか? ミリシアルの艦隊に混じって、かの国の巡洋艦が1隻居たと聞いているが」

 

 ミリシアルについての話が終わるとすぐ、第一外洋派遣艦隊と共に居た、日本の巡洋艦(イージス艦こんごう)についての話題へと移っていく。

 例の事件以前、ロウリア王国との戦いからの情報収集により、純科学文明かつ転移国家である事だけは判明していたため、それなりに力を入れてはいた。

 

 ただし、あまりにも距離が遠すぎる事もあってか、ミリシアルやムーなどと比べると情報精度は低く、現在の評価は謎が多く脅威度が確定出来ない国と見られている。

 

「あるにはあります。ただ、得ているこの情報の仕入れ元からして、正確性に難がありますが」

「構わないから言ってくれ。どのみち、情報の精査は平行して行なわなければならないからな」

「分かりました。ではこれを……」

 

 しかし、これもナグアノが出した1冊の本や各種資料が提示された瞬間、大きく変わる事となる。日本の艦船や航空機、戦車や各種歩兵装備も勿論だが、中でも誘導弾(ミサイル)やこんごうを含めたイージス艦の性能が彼らにとって、もはや空想の領域に達していたからだ。

 

「これが科学……嘘だろう? 魔法でなくてか?」

「確かに、魔法なら出来てもおかしくはないでしょう。同様に、科学でも出来ない道理はありません。現に我が国でも、70~80年前の戦列艦が主力だった時代から、ここまで進歩してきたので」

 

 概念すらなかった兵器もいくつかあるものの、前世界ではそんな事をせずともライバルであった国々に、勝利し続けてきた経歴を持っている。

 自国を仮想敵として軍備を強化しているにせよ、地球とは訳が違うのだから無理もないだろう。

 

 しかし、今世界では自国を打倒し得る国が2つ……ミリシアルと日本があった。そして、日本の民間書籍からいくつかの兵器の概念を得る事も出来た。

 故に、今日まで大きく不足していた次世代を追及する力も、少しだが磨く事も出来ている。

 

「ああ、言われてみればそうか。しかし、そうなると日本国と我が国は70年~80年も差がある事になってしまうな……ナグアノ。ミリシアルと同じかそれ以上に、情報収集に力を入れるぞ」

「分かりました」

 

 そして、ミリシアルすら大幅に上回る科学の極致とも呼べる国家なのが事実か否か、より精度の高い情報を求めるべく、力をより一層入れていくと決定された。

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