光の申し子   作:松雨

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不穏な影

 対潜戦闘の要となる駆逐艦や各種装備、魔導潜水艦の研究開発・製造指揮に力を入れ始めて3ヵ月が過ぎた頃、とある出来事の発生が原因で、学院含むミリシアルの軍事関連施設の警戒態勢がより一層厳しいものへと変化していた。

 

 大抵の人が寝静まる時間帯であろう真夜中に、どう見てもその道のプロ(特殊工作部隊)と思わしき人物が4人、私の職場である学院内へと侵入してきたと言う、1週間前に起きた事件が原因である。

 

 結論から言ってしまえば、不届き者4人の内2人はミリシアル陸軍の『重要拠点警備隊』により、逃亡を許されずに確保された。残り2人については、銃撃戦の果てに死亡が確認されているようであり、軍事情報流出などと言った被害も、確認された範囲内では一切なかったとの事。

 

 なお、今現在確保した2人の武装を全部解除した上で、結界魔法による拘束もされていて、更なる情報を聞き出す尋問が行われているとも聞いているが、芳しくないらしい。

 

「アルネウスさん。今、()()()()()()()()()()()()、判明したりはしていますか?」

『それでしたら、鹵獲した敵の装備品……これが、()()()()で使用されていたものとそっくりだと判明しています。つまり、グラ・バルカス帝国が仕向けた工作員による仕業、この線が濃厚かと」

「あの鬼畜ば……ふぅ、失礼しました。それで、抗議や賠償などの各種要求は当然行いますよね? まあ、知らぬ存ぜぬを突き通しそうですが」

『勿論です。ただ、こちらとしても準備が整っていないので当分先になりそうですね』

「なるほど。すみません、ありがとうございます。ではまた」

 

 しかも、超絶運悪く鉢合わせてしまったと聞いている、夜勤をしていた学院の魔導技師……仲良くしていた部下の『リリア』を含む4人の命が失われ、更に警備隊の人が3人爆弾で重傷を負うと言う、各種報道機関で大々的に報じられるレベルの死傷者まで出てしまっていた。

 

 当時、私自身は長期休暇中の旅行でルーンポリスに居たため、難を逃れていたのだけど、正直嬉しく思えない。

 自分が仕事で学院に居たら、多少の怪我はしててもあの子の命は救えた可能性が、少しだけあったのだから。

 

(ごめんなさいリリアさん、犠牲になった魔導学院の皆……私、頑張るから見てて下さい)

 

 ただまあ、私なんかよりも遥かに辛い思いをしている人、彼女の両親の憔悴しきった表情を見ているので、今は相対的に辛さは消えている。むしろ、俄然皆を守ってみせようとする気が漲っている。

 

 具体的には、ミリシアルのあらゆる軍用艦船に使われている高出力装甲強化システムの術式、これを軍事関連の施設で働く人の衣類に応用出来ないかどうか、研究を行うなどだ。

 

 後は、私の家に保管されている私独自の『結界魔法理論書』をコピー、それらを優秀な各学院の大魔導師やメテオスさん他魔帝対策省の面々に送付、場合によっては解説しに訪ねたりする事である。

 

「にゃー?」

「ああ、ごめんねルーちゃん。私は大丈夫。いつもありがとう」

 

 無論、私には一切の手抜きが許されない非常に重要な本業があるため、前者の事柄に対してはどうしても片手間になってしまう。

 不可能だと言う証拠はないものの、時間をかけにかけた挙げ句やっぱり出来ませんでしたとなる可能性が、なくはなかった。

 

 しかし、やらなければやらないで私が参ってしまう。だから、皇帝陛下や付き合いのある皆との約束はしっかりと守りつつ、無駄を極力減らして時間を増やし、更に安心して仕事を行える環境作りを行っている。

 

『あー……もしもし、オロールさん。ミリシアル政府の者です。いらっしゃるのであれば、お返事をよろしくお願いいたします』

 

 自分の家で、飼い猫のルーちゃんに餌をやったり戯れたりしながらのんびり過ごしていると、備え付けている魔導通信装置から声が聞こえてきた。

 

 何の用事かは不明なものの、ミリシアル政府からの会話を求めてくる時は、決まってかなり重要な用件である事が殆んどである。

 その上体調が絶望的に悪い訳でもないのだから、当然出ないと言う選択肢はない。

 

「お待たせしました、オロールです。相当に重要な用件でしょうか?」

『そうですね。実は……』

 

 装置のボタンを押し、ミリシアル政府の人にどうしたのかと聞いたところ、案の定相当な重要案件であった。

 簡単に言えば、私が関わっている仕事が仕事なだけに万が一を考え、家に魔甲スーツと低反動9.1mm魔導短機関銃、各種魔導手榴弾を装備した、ミリシアル陸軍6名の警護をしばらく置きたいと言うものだ。

 

 そして、比較的家の敷地が広いが故に庭にテントを張ったり、警護に必要な物資を置くための場所を貸して欲しい旨も伝えられた。

 保管場所を敷地外にして、いざと言う時に役に立ちませんでしたとなったら洒落にならないし、当然の摂理だと言えるだろう。

 

 ちなみに、外出時は護衛を1人ないし2人つけるか、外出時の結界魔法展開を確約してくれれば、特段制限などはかけるつもりはないとの事。

 まあ、仮に仕事時以外極力家にこもれと指示されたとしても文句はないけど、制限はないならない方が断然良いので当たり前だ。

 

「情勢が情勢なので構いませんけど、テントで良いんですか? 仮眠なり普通の睡眠を取るなり、その時位家に入っても私的には別に良いですよ。手榴弾系の爆発物の管理さえ、しっかりして頂ければ」

『了解しました。3日以内には派遣致しますので、それまでは念のためいつもより気をつけてお過ごし下さい』

「はい、分かりました。警護の方には、是非ともよろしくとお伝え下さい」

 

 多少過剰な気がしないでもないけど、これを断るに足る理由は一切存在していない。そのため、家への警護人員派遣を私はお願いする事を決めた。




各種事情により、次回の投稿は5日空く予定です。

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