光の申し子   作:松雨

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隙間時間での執筆が思いの外進んだので、早めに投稿しました。


火種への着火

「見えてきたな。しかし、もうすぐ会談か……正直、難航する気しかしない。むしろ、やるだけ無駄かも知れん」

「ええ、同感です」

 

 官民問わず、ミリシアルにとって衝撃的な事件が起きてから1ヵ月弱、政府は情報局員を含めた4人の職員をミスリル改級魔導戦艦『グニール』に搭乗させ、護衛の4隻と共にグラ・バルカス帝国との外交窓口があるレイフォル行政府へと向かわせていた。

 

 目的としては、例の事件(カルトアルパス魔導学院襲撃)に関わっていた点は言わずもがな、その影に隠れた複数の各種工作にもしっかり関わっていた確証が取れたため、それらに対して報いを受けさせる事がある。

 

 ついでとはなってしまうものの、西方国家群への侵略行為や非人道的行為の即刻停止、それらに対する謝罪と賠償の要求も併せて行う予定となっていた。

 

「どうした、サテラ。何か心配事でもあるのか?」

「シワルフさん。えっと、リリアさんの遺族の方が開いた会見、思い出してて」

「あれか……心苦しいな。涙を流し、震えながら「私の娘を返せ、返せよぉ!!」と叫んでいたあの光景で、一挙に世論がグラ・バルカスを脅威的な敵国と認定する方に舵を切ったが、納得でしかない」

「私もそう思います。彼らには、相応の報いを受けてもらわなければなりません」

「全くだ。かの国の過剰なまでの覇権主義は、脅威に値する」

 

 例の事件が起こるまでは、グラ・バルカスに対しては脅威かも知れない程度の認識であり、外交使節団4人含むミリシアルに住まう人々はどこか他人事でいた。世界最強の国に、そんな愚かな行為を働く者や国家が存在した歴史はないのだから仕方ない。

 

 しかし、今回は歴史上初めてかつ犠牲者まで出た事もあり、ミリシアル全体としては当然の事ながら、特にカルトアルパスに住まう人々に危機感を強く与えている。

 

 結果、政府としてもカルトアルパスはもとより、各魔導学院や機密度の高い施設へ重要拠点警備隊を追加で派遣、出入りする際のチェックもより厳しくする命令を出している。

 無論、それに伴って増えていく費用にも、政府からの補助金支給などで対策されているので、そこそこ手間暇かかるようになる事を除けば、問題はさほど生まれたりはしていない。

 

 また、こんな事をする位なら不意打ちで艦隊による攻撃を仕掛けてくる程度はしそうだと、皇帝を含む政府上層部は考えていた。

 

 そのため、軍事費の追加や防衛体制の強化に加え、技術体系は違えど自国以上に優れた技術を持つ日本との交流についても、軍事民事問わず強化していく方針が固まっている。

 

「あなた方がミリシアルの使者か。緊急で話がしたいとの事らしいが、我が帝国の軍門に降る気にでもなったのか?」

「「「……」」」

 

 そんな中、長い航海の果てにレイフォル行政府へと到着した一行は、事前に魔導通信で連絡を受けていた行政府職員の案内を受けて外交官が待つ建物へと向かうも、そこで相対した『ダラス』の態度が予想外にも程があったため、言葉を失ってしまう。

 

 ミリシアル側は、彼らに今までの立ち振舞いから紳士的な対応を端から期待してはおらず、魔信での連絡時に詳しい会談理由を述べていなかった。

 しかし、来て早々軍門に下りに来たのかと尋ねられるとは、大半の人は予想出来ないだろうから、致し方ない。

 

「何をどうしたらそうなるのか理解に苦しみますが、違います。我が国が今日ここに来たのは、貴国にいくつか要求……いえ、命令をするためです」

「ほう。港の戦艦と巡洋艦、駆逐艦3隻を見るに我が国に迫るか同等の技術を()()()()()()()()()()()ようだが、それで思い上がったか。まあ良い、とにかく命令とやらを言ってみろ」

「……では、これをご覧下さい」

 

 今日までされた事のない態度に、情報局局員のサテラやザマス、技術開発部のゴルメスは当然として、西方国家との外交を担当するシワルフも不快感を露にした。

 が、すぐに落ち着きを取り戻し、1つの書類を取り出してダラスへ見せたところ、今度は彼の方がそれ以上の不快感を露にし始める。

 

 例の事件含めたミリシアル国内での敵対行為、西方国家群での侵略戦争や非人道的行為の即時中止、加えて生じた損害に対する謝罪や賠償を行えと、命令口調で述べられていたので仕方のない話だろう。

 

 なお、この様子を目にした4人は既に()()が断られる未来を想像していたものの、一抹の希望がない訳ではなかったので何も言わずに待つ。

 

「ハハハ! そんなもの(ミリシアルへの工作)は知らん。後者の方は考慮するまでもないな……断らせてもらおう。世界征服は皇帝陛下の意思、例えあなた方にそう言われようとも止める訳にはいかないのだ」

「そうですか。もう1度窺いますが、本当によろしいのですね?」

「くどいぞ。何度問われたところで、我々の返答は変わらん!」

「分かりました。それが貴殿方の意思と言う事で、皇帝陛下に伝えておきましょう」

 

 しかし、案の定渡された書類を一通り見渡したダラスは、笑いながらそれをシワルフへと突き返し、断る意思を明確に示してしまった。この瞬間、本格的にグラ・バルカスとミリシアルの対立が確定してしまった訳である。

 無論、そうは言ってもお互いに殲滅戦を行うつもりは微塵もないので、降伏方法などの議論も軽くではあるものの行われた。

 

「我が国は、貴国のような下劣な侵略者に負けはしませんよ」

「ほざいていろ。そちらこそ、後で泣きついて来ようと知らんぞ」

 

 こうして、すべき事を済ませたミリシアル使節団の4人は、足早に応接室を去っていった。

本作独自の種族に関しての質問

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