光の申し子   作:松雨

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警戒する日本国

 神聖ミリシアル帝国と、破竹の勢いで侵略戦争を進めているグラ・バルカス帝国が戦争状態へと入ったと言う、衝撃的なニュースが世界を駆け巡っていた頃、日本の首相官邸執務室では閣僚たちが話し合いを行っていた。

 

 この世界では自国を除いて最も先進的であり、非常に友好的でもあるミリシアルには、官民問わずに沢山の日本人が滞在している。そんな彼らに対し、避難命令を下すか否かで意見が割れていたのである。

 

「勿論、注意喚起は当然行いますし、駐ミリシアル日本大使館を通した、多角的な情報収集は続けていくのは変わりありません。しかし、現時点では()()を下す域にはないのではと考えます」

「何を言ってるんだ、防衛大臣。フェン王国の件も鑑みれば、すぐに命令を下すべきだろう。適当すぎるのも大概にしたらどうなんだ?」

「それは心外ですね、環境大臣。こちらとしても、何の根拠もなくそう言っている訳ではないのですから」

 

 フェン王国で起こってしまった、当時のパーパルディア皇国による日本人虐殺事件もあり、ニュースが流れてから国内でも渡航を控えるように政府から強く言うべきだとの声も大きくなった。

 第二次世界大戦末期のアメリカ並みの国力と技術力を持ち、当時のパーパルディアに勝るとも劣らない振る舞いをする国が相手であるため、致し方ない面もある。

 

「まあまあ、落ち着きなさい。で、それは何故だ? 防衛大臣」

「地理的要因も非常に大きいですが……グラ・バルカス帝国と通常技術力で互角か若干優位、物量もそれなりにある上、古の魔法帝国(ラヴァーナル帝国)が残したと言う、我々から見ても超兵器と思える空中戦艦『パル・キマイラ』3隻を、戦時中の国土防衛に常時使用すると言ってきたためです」

「なるほど。しかし、古の魔法帝国か……凄まじいな」

「はい。1万年以上も前の兵器を稼働可能な状態で残せるなど、とんでもない技術力です。所有しているのが、かの国(ミリシアル)で本当に良かった」

 

 しかし、ミリシアルも技術体系が違う上に国力(物量)はある程度劣っているものの、総合的な技術力は同等か若干優位であると日本側から判断されている。

 

 それに、ある程度公開しても問題ないとミリシアル上層部に判断されたパル・キマイラ、対空魔船(ディアン)対潜魔船(シービス)の存在、それのリバースエンジニアリングによる技術会得、地理的要素などの要素を加えた場合、差はより広がるとの考えが主流ではあった。

 

 異世界への転移後、出来る限り急いで上げ続けた超高精度人工衛星による監視でも、即座に脅威となる100隻単位での海上侵攻がルーンポリスやカルトアルパス、他港町へ向かう様子も見られていない。

 

 何なら、国交樹立当初から交流を両国政府で積極的に推し進めたのも相まって、今現在では防衛省や自衛隊だけでなく、日本の民間人からも比較的ミリシアルはその力を信用されている。

 

 なので、あくまでも政府からは注意喚起に留め、旅行などで行きたいなら行き先や情勢に気を配りさえすれば良いのではと、そう考える人々が多数派を占めている。

 

「では、政府からは注意喚起に留めると言う感じで良いかね? 無論、情勢の変化次第では色々と変わるところもあるだろうが」

「防衛省としては、それで問題はないかと」

「同じく、外務省としても問題ないです」

 

 結果、防衛大臣の案が大筋で採用される形となり、衛星での監視網を強化しつつ、民間に向けては渡航に対する注意喚起を行う事でひとまずは済まされる事となった。

 

「さてと。続いてはムーについてだが……こちらの方が問題だぞ」

「第一次世界大戦~第二次世界大戦初期の技術力な上に、国境を接していますからね。グラ・バルカス帝国が神聖ミリシアル帝国を攻略するには、必然的にムーの攻略が行われるはずですし」

「むぅ……かの国はこの世界では貴重な科学技術国家、落とされたらミリシアルだけでなく、我が国までも色々な面で脅かす事になりかねんぞ。派遣も検討すべきではないか?」

「しかし、現行の法律ではロウリア王国戦の際ですら拡大解釈だった点を見るに、自衛隊派遣は無理なのでは? まだ侵攻は行われていない上にムーから救援依頼が来ていないので、尚更ですよ。財務大臣」

 

 そして、ミリシアル関連での会談が終了してからは、色々な意味でより危機的状況にある科学技術国家ムーについての話題へと移っていく。

 

 かの国にはミリシアルが所持しているような、少ない数で戦況をひっくり返す発掘超兵器がなかった。

 基礎的な技術力も最高で二次大戦初期と、グラ・バルカスやミリシアルよりも劣っている。

 

 有能な技術者を多数排出し、たった一国で研究開発・発明が出来る大国なため、時間があれば追いつく事も可能と見られているが、グラ・バルカスがミリシアルとの戦争に舵を切った以上、侵攻が始まるまでに恐らく間に合わないとの見方が強い。

 

 そうなると、外国からの救援がない限りは敗北の憂き目に合う確率が極めて高い状態で推移し、伝え聞く暴虐ぶりからしてロクでもない未来になるのは確定する。

 無論、当たり前の如くミリシアルや日本にも飛び火してくる事となると、断言出来てしまうのだ。

 

「とにかく、まずは法律云々から手をつける必要があるな。いざと言う時に動けないとなれば、巡りめぐって我が国の首を締めるだろう」

 

 そのため、この場に居る閣僚たちと同様の考えを持つ総理大臣の一声により、万が一に備えてこれまで以上に動いていくと、この閣議で決定される事となった。

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