誰からであろうと、また何万何億回同じ事を尋ねられようと、私は神聖ミリシアル帝国とそこに住まう人々を、心から愛していると言えよう。無論、恋愛的な意味ではなく、家族愛的な意味だ。
そして、如何なる理由があろうともこの国の人たちが理不尽に傷つき、命を失う光景は見たくない。当然だけど、故意に傷つけるような輩はそれ相応の報いを受けるべきだと思っている。
「とうとう向かうんですね、ラーテイさん」
「ええ。相手が相手、きっと厳しい戦いになるでしょう。もしかしたら、2度と帰って来れないかも知れません」
だから、地理的要因からとばっちりで侵略を受け始めたムーからの救援依頼を受け、救援に向かおうとしているミリシアル軍の皆を見ていると、引き留めたくなる衝動に駆られてしまう。
しかし、まかり間違っても行かないでとは言わないし、言えない。表向きの理由はともかくとして、私を含めたミリシアルに住まう民に災禍が降りかからないように行くのだし、そんな彼らを止めると言う事は、私自身がいずれ直接手を下すのと何ら変わらないのだ。
それに、余計な事を言ったが故にもう既に覚悟を決めている、派遣軍総司令官のラーテイさん以下多数の軍人さんたちの精神を乱す可能性だってあるだろう。なら、尚更ご法度な行為だと断言出来る。
「遅かれ早かれこうなるから、私は戦争は大嫌いです。何もしていなくてもある日いきなりやって来て、抗えなければ理不尽に命を危機に曝し、果ては家族の命を無惨に奪っていくのですから」
「ええ。だからこそ、弱き民を災厄から守るべく軍人になった自分が国の盾となり、死の恐怖に耐えつつ、相手が敵とは言え命を直接間接問わずに奪う咎を、背負わなければいけない」
「……強いですね」
ちなみに、グラ・バルカスがミリシアルに対して宣戦布告を行った、私が最も来て欲しくないと願っていたその日から、今日でちょうど5ヵ月である。
ムーへの空母機動部隊を含む
なので、ミリシアルが派遣する戦闘艦も最新鋭から旧式艦艇を含めた115隻と、保有総戦闘艦数のおよそ2割を誇っている。
なお、内訳は魔導空母5隻に魔導戦艦9隻、防空や対潜を含めた魔導巡洋艦40隻に駆逐艦61隻だ。
無論、長期戦に備えた補給を行う魔導補給艦、陸軍の兵士や陸戦に必要な兵器を輸送するための魔導輸送艦も相応に派遣されるため、派遣総艦艇数はかなり多くなっている。
「ですから、ラーテイ司令官を含めた皆様に私から贈る言葉はこれだけにしておきましょう……
「当然ですよ、オロールさん。覚悟は出来ていると言っても、俺含めた奴ら全員負けるつもりはおろか、死ぬつもりもありませんから」
「そうだぜ! 時間はかかるだろうが、きっと帰って来てみせるから待っててくれよな!」
「……ええ!」
ここまで色々と考えながらラーテイさんと会話を交わしつつ、あまり引き留めていくのも申し訳ないので、簡単な一言を最後に送って最後とした。
人の命など紙切れの如く簡単に散りかねない、戦闘の前線で命のやり取りをミリシアル軍の皆が行っている間、分野も場所もまるで違うけど、私も持てる力を最大限に発揮させなければならない。
戦時体制に入り、費用も人員も平常時より沢山融通してもらっている以上、至極当然の話だ。
「オロール、大丈夫……じゃないか。愚問だったわ、ごめんなさい」
そして、国内最大級のルーンポリス海軍基地とその周辺に集まった多数の艦船が、水平線の向こうに隠れて見えなくなるまで手を振り続けていると、一緒に見送りに来ていたカームに目元をハンカチで拭われた。
彼らが居なくなったから、分かってはいても最悪の未来をどうしても想像してしまい、かなりの量の涙が溢れてきていたからだろう。まあ、そこまでしてもらわなくても自分で拭えたし、現に拭おうとしてたのだけど、別にわざわざ言う必要もないから言わないけど。
「ううん、謝らないで良いよ。カームは心配してくれただけなんだしさ」
「ありがとう。それにしても、あの話には驚いたわね。何かと軍の派遣に消極的な日本国が、自衛隊を派遣するだなんて」
「事前の命令で避難し切れなかったかしなかった、ムー国内の日本人が結構居たみたいだし、だからだと思う。まあ、他にも色々と派遣を決定した理由はあるかもだけど」
「ミリシアル軍も居るし、そもそも魔帝並の軍事技術力を日本は持ってるから、多少は安心したのだと思うわ。きっと」
しかし、ミリシアル軍の皆を援護するためではなく、自国民の保護や救援依頼があったためではあれど、日本が自衛隊をムーに派遣する話を聞いてはいるので、状況は最悪の中の最善と言ったところではある。
この手の事案だと、日本の場合結構意思決定に相当時間をかけたのかと思ったものの、カームが他2人と共に日本人へ質問した時曰く「全力で各所の憂いを消したから、割とそうでもなかった」と、日本政府側から返答が帰ってきたらしい。
まあ、ムーが陥落してしまうとミリシアルはもとより、日本にとってもかなり大きな損失になるのだし、モタモタしている暇はない。どのような手段で派遣にこぎ着けたかは不明なものの、出来る限り日本の民間人が生存してくれているのを願うばかりだ。
「さて、これから私も頑張るか……!」
「ふふっ。応援しているわ、オロール」
そんなこんなで、私自身も出来る事をしっかりやろうと決意を固めつつ、全ての艦船が出払った後のルーンポリス海軍基地を立ち去っていった。
宣言ギリギリの投稿となってしまい、すみませんでした。
本作独自の種族に関しての質問
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多くして欲しい
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多くしても問題ない
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これ以上は望まない
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作者にお任せ