光の申し子   作:松雨

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マイカル沖大海戦(導入編)

 心地よい海風が吹き、ほぼ雲もなく波も穏やかなとある大海原にて、ミリシアルの戦闘艦115隻を含めた他多数の補給艦や輸送艦を擁する艦隊は、ムーの湾岸都市『マイカル』へと向かっていた。

 

 各所からもたらされた情報より、敵の数が最も多い上に自国の民間人が、首都『オタハイト』に次いで多いと知ったためである。

 

 ミリシアルを攻略するための前線基地として、理不尽な戦争を仕掛けているグラ・バルカス帝国海軍はマイカル以外にも、オタハイトを含めた大小様々な港町、陸軍はアルーの街やその周辺の市町村へ襲撃をかけている。

 

 侵略を止めさせるためには、攻撃されている全ての場所で帝国軍を排除しなければならず、いくら大艦隊を派遣してきたとは言え、ミリシアル軍だけでは苦労するだろう。技術力が拮抗しているが故に、尚更その傾向が強い。

 

「ふぅ……何と言うかまあ、良い天気だな。本来船旅は楽しいもんだが、嬉しくないな」

「私たちが乗っているのは戦艦で、航行の目的がグラ・バルカス帝国軍との戦争ですもんね」

「全くだ。共闘する訳じゃないが、日本が居なけりゃもっと地獄だったよ」

 

 しかし、幸か不幸かオタハイトには日本国海上自衛隊『第4護衛隊群』と潜水艦数隻、補給艦や輸送艦を加えた艦隊が邦人保護などを理由に向かっていると、日本政府より知らされていた。

 

 更に、グラ・バルカス帝国軍は戦力を一極集中させておらず、ある程度各地に分散させていたのも、ミリシアル軍にとっては都合が良かった。

 艦艇や航空機、戦車や装甲車はもとより、それを動かすための人員の損失を抑えられるためである。

 

 複数方向から挟み撃ちなどを受けるリスクはあるものの、物量差さえあればそうなる前に戦闘を終わらせられる。物理的な距離もあるし、ムーの軍隊も死に物狂いで抵抗中なのも相まって、その可能性はかなり高いのだ。

 

「しかし、オタハイトに居る敵軍の数も相当多いぞ。日本の艦隊はたったの11隻、潜水艦も居るらしいが……大丈夫なのか? いやまあ、魔帝と同等の軍事技術力を持ってんのは知ってるけど、どうしてもな」

「心配しなくても大丈夫ですよ、ラーテイ総司令官。グラ・バルカス帝国軍は、日本艦隊には絶対に勝てません。陸上でも、言わずもがなです」

「だよな、リンベル艦長。日本に勝ちたきゃ、陸海空全てで最低でも俺らをほぼ無傷で倒す実力は必要だ。多少、数的に不利であろうと」

 

 ちなみに、ミリシアル航空機への日本製敵味方識別装置の無存在、艦船や航空機や兵器の性能の隔絶した差、両国の法律などの国内的問題、これらの要素から特殊な場合を除き、日本との共闘は行われない。

 

 ただし、自国優先の鉄則は守りつつも、艦船への搭載可能人員や各種物資、時間に余裕があった場合にのみ、お互いの国民を保護する簡単な協定は交わしている。

 言わずもがな、それにかかった費用を後日何らかの形で補填する話も、しっかりと済まされていた。

 

「さて、日本の心配をしてる場合じゃないな。こっちは77隻の敵艦を相手にしなきゃならん。敵空母の艦載機は航空隊が抑える手筈だが、最悪別の場所から来かねないぞ」

「ですね。マイカルだけでも敵空母が4隻居ましたから、他のところにはもっと居る可能性は高いでしょう」

 

 そのため、日本云々よりも技術的に拮抗している自分たちの方が心配だと、旗艦含め派遣艦隊に乗る軍人の間ではそう考えられている。

 

 なお、全力で戦ってさえかなりの劣勢に立たされる程に敵が強かった場合、()()()()()()()()()()を派遣して撤退の手助けをする手筈になっているため、皆の不安はすぐに解消される事となったが。

 

「報告! 空母『アロンダイト』『オートクレール』、および軽空母『フラガラッハ』『アラドヴァル』より先程発艦した航空隊、敵航空機ないし艦船への攻撃を開始! なお、他方を攻撃していた敵からの援軍があまりにも数が多すぎるため、一部こちらにも向かって来られています!」

「ちっ、予想はしていたが……機数と速度は?」

「60機で、660㎞/hです! 更に70機、攻撃機と思わしき機体が550㎞/hで来てます!」

「ジグラント4とほぼ同速の戦闘機か。そこそこ速い攻撃機も数が多い……一極集中している訳でもないのに、なんともふざけた物量だが、雷撃主体ではない事を祈ろう」

 

 すると、艦隊がマイカルまで残り120㎞を切ったタイミング、旗艦の魔導戦艦『トルティン』内はレーダー監視通信員よりもたらされた報告で、緊張感が更に増していった。航空攻撃に来る敵の数が、かなり多いためである。

 

 敵の航空攻撃に備え、各艦の対空能力を最大限に発揮出来るように極大輪形陣を敷いている上、アロンダイト級空母1隻は防空のために戦闘機を丸ごと残してある。

 とは言え、相手との技術力に差があまりない以上、この戦場に絶対はない。この事実が、旗艦含めた艦隊ほぼ全ての乗員を埋め尽くしていた。

 

「よーし。総員、対空戦闘用意! 射程に入り次第、各艦の判断で射撃開始せよ。なお、低空を飛行してくる雷撃機を優先的に落とせ!」

「了解しました……総員、対空戦闘用意! 主砲と魔導対空砲の弾種、連鎖榴雷弾!」

 

 そして、ラーテイ総司令官が魔導通信を艦隊全部に聞こえるように完全開放、指示を出した事により、全ての艦で素早く対空戦闘の準備が進められていく。

 

 魔導電磁レーダー搭載艦も一定数存在し、そうでない艦も高出力魔導レーダーでないよりマシではあれど、敵機を捉えられている。

 各種対空兵器も、日本や魔帝のような誘導性能はついてないものの、同水準の相手からしてみれば十分脅威的な水準に達していた。

 

 航空機に至っては、ミリシアルの攻撃機ですら相手の新型を速度で僅かだが上回っている。

 旋回や加速・上昇性能などは不明なものの、戦法と状況読みを間違えず、油断さえしなければ勝てない相手ではない。

 

「気張れよ、リンベル艦長!」

「はいっ!!」

 

 こうして、残りの空母からエルペシオ4が発艦してある程度の敵を食い止め、それでも抜けてきた敵を極大輪形陣前方に陣取る十数隻が、主砲や対空砲で迎撃を試み始めたのを皮切りに、緊張感は最大限に高まっていった。

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