光の申し子   作:松雨

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マイカル沖大海戦(中編)

「大艦隊だな。こいつは、激しい戦いになりそうだ」

「そうですね、艦長。攻撃隊の皆が居なければ、もっと多かったのかと思うと……何とも恐ろしいです」

 

 魔導空母の制空戦闘機隊や、各艦の戦闘要員たちの必死の努力により、損失を最小限に抑えつつ敵の航空隊を撤退した数機以外全滅させる事に成功したミリシアル派遣艦隊は、息つく暇もなく敵海軍艦隊との決戦の構えを取り始めていた。

 

 ミリシアルの対艦攻撃隊の爆弾や魔導魚雷により、マイカル沖に展開するグラ・バルカス帝国艦隊は、77隻から60隻に数を減らしていた。中破以上の大損害を被った艦艇も15隻と、かなり多い。

 

 その分、ある程度の技術的優位性があるにせよ、弾幕の中に突っ込んで攻撃を仕掛けに行く必要がある都合上、ジグラント4も12機が撃墜され10機が中破する被害を被ってしまった。

 

 また、グラ・バルカス帝国の航空攻撃でも、最終的に115隻いた艦艇の内7隻が撃沈、中破以上となった艦艇が10隻と、ミリシアル側も決して少なくない損害を受けている。

 

「半ば旧式化していたこの艦は、学院の面々のお陰で『カレドウルフ改』として生まれ変わり、新たな力を得た。奴らは脅威でしかないが……コイツはきっと、奴らの牙を叩き斬る鋭利な刃となるだろう」

「そうですね。就役当初から、ミリシアルを守り続けてきたこの艦は、皆にとっても自分たちにとっても、()()()()()()ですから」

「おうよ。勿論、強くなったからって油断大敵だがな」

 

 それ故に、ミスリル級魔導戦艦『カレドウルフ改』艦内では戦闘が始まった当初よりも雰囲気のヒリつきが増し、心のどこかで相手を見下していた一部の軍人も、今では自国と同等の強敵として見るようになっていた。

 

 ただし、最新鋭の技術により大規模改装を受けたお陰であらゆる能力が上昇し、特に速力がミリシアルの平均的な巡洋艦並みの34ノットと言う、戦艦としては常識外れの力を得たが故に、過剰な不安や恐怖などの感情は生まれてはいない。

 

 なお、防御力に関しては高出力装甲強化システムの搭載がなされていても、さほど上昇したりはしてないが。

 

「敵戦艦2隻より発砲炎確認! 弾道計算中……我が艦や周辺の味方艦に対する至近弾ないし直撃弾はありません!」

「ふむ。しかし、この距離(37㎞)で撃ってくるとはやるな。よし、我々も今すぐ撃ち込んでやれ! 最大射程ギリギリだから当たらんだろうが、当ててやる気概で行け!」

「分かりました……舵を切りつつ、主砲発射用意! 弾種は魔導徹甲弾!」

 

 お互いに近づき続け、咄嗟に組まれた高速艦船8隻で構成された陣形の前方に居たカレドウルフ改が、同じく近づいてきた敵戦艦に主砲から砲撃を受けたのを合図に左へ旋回、自慢の高初速38.1cm3連装魔導砲3基9門での砲撃を開始した。

 とは言え一斉射撃ではなく、着弾位置の調整による次射の命中率向上などの理由もあり、1射目では1基3門のみとなっている。

 

 なお、少し遅れて同型艦でもある『コールブランド改』も主砲での砲撃を開始したが、こちらに関しては一斉射撃を決行していた。

 

「……至近弾もなし、全弾外しました。コールブランド改も同じ模様」

「やはり駄目か。だが、予想よりは近くに行けたな」

「はい。やはり、技術の進歩は凄まじいですよね」

 

 しかし、最大射程ギリギリなのに加えて、敵も味方もお互いに動きながらの射撃であるため、1射目での直撃弾や至近弾は出なかった。敵からの砲撃も同様である。

 

『敵戦艦に1発、味方戦艦による直撃弾あり!! クラレント改です!!』

 

 主砲の角度の微調整などを行いつつ、敵戦艦の主砲弾に対する回避運動をしながら船間距離が30㎞を切ったそのタイミング、斜め後方6㎞に居た同型艦『クラレント改』が1発、敵戦艦に初の直撃弾を出す快挙を成し遂げた魔導通信が入った。

 

 敵艦との距離が36㎞も離れていて、1射目かつ主砲の最大射程ギリギリから放った砲弾が直撃弾を出す確率は、恐らく1%にも満たないだろう。もしかしたら、0.1%以下でもおかしくないかも知れない。

 

「なっ……嘘だろ? アイツら、マジでやりやがった!」

「これは驚きました。まさか、あの距離で直撃弾を出すとは……奇跡の一撃ですよ!」

「「おぉ……うぉぉぉ!!!」」

 

 当然、この一撃では撃沈にまで追い込む事は出来なかったものの、滅多にない奇跡を見せたのが味方のミスリル級魔導戦艦と言う事実は、ミリシアル派遣艦隊の軍人全ての士気を大幅に上げた。

 誘導魔光弾のような兵器を使用しない限り、決して容易に狙えないとは理解されてはいるが、それでも喜ばずにはいられなかったようだ。

 

 加えて、一時的かつ個人差はあるが、死の恐怖や不安に押し潰されそうになっていた経験の浅い若い軍人へ希望を持たせ、精神を安定させる強い効果ももたらしている。

 

 言わずもがな、経験豊富な軍人や覚悟を決めている軍人も、心の奥底では死への恐怖や不安が燻っている。

 若い軍人に比べれば耐性がついているにしても、そうは言っても辛いものは辛いと考える人が殆んどなので、ある程度の効果はもたらされているが。

 

「お前ら、クラレント改の奴らに続け! 敵を撃破し、絶対に生きて帰ってやるぞ!!」

「「「うぉぉ!!!」」」

 

 こうして、クラレント改の起こした奇跡によって、士気が大幅に上昇したミリシアル派遣艦隊は、心の強さも大幅に上昇した状態で本格的な艦隊決戦へと挑んでいった。




資料集の編集や私事により、次回の更新は最大で1週間空く感じになりそうです。

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