光の申し子   作:松雨

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マイカル沖大海戦(後編)

『よーし、ざまあ見やがれ……うおっ、至近弾か!』

『そりゃそうでしょう。我が国と戦い、撃沈艦すら出す程の強者です』

 

 敵味方の艦艇から口径の大小問わず、鉄の暴風雨が如く砲弾が飛び交う艦隊決戦が始まってから数時間、改装されたゴールド級魔導戦艦2隻を主として組まれた15隻の高速遊撃艦隊は、追い込まれた数隻の味方を助けるべく、敵艦11隻に急襲攻撃を仕掛けていた。

 

 改装ミスリル級魔導戦艦程の速力と砲火力はなくとも、それに準ずる力を誇る改装ゴールド級魔導戦艦2隻に、巡洋艦の中では高い速力と砲火力を持つ、最新鋭のシルバー改級魔導巡洋艦含めた4隻が加わっている。

 

 そこに、平均して40ノットの速力や超機動力、長射程高威力の魚雷を標準搭載と火力も申し分ないサファイア級駆逐艦10隻も居るため、敵艦隊の足並みを乱して初手で損害を出させる事に成功してはいた。

 

『敵戦艦主砲、副砲の一斉射撃……がっ』

「味方巡洋艦3発被弾、大破!! 主砲弾の威力は我が方の改装後ミスリル級と同等と推定!」

「そうですか、流石は目測200m級の戦艦。この『サファイア』は雷装重視な上に駆逐艦、1発たりとももらう訳にはいきません」

「当然で……あ、敵巡洋艦多数発砲! 内4発が我が艦の至近弾ないし直撃弾の可能性あり!」

「この弾道なら……よし。面舵いっぱい! 何としてでも回避しなさい!」

 

 しかし、マイカル沖に限らずムーを攻撃していたグラ・バルカス帝国軍は、本国の超精鋭には至らずともかなり優秀な軍人が多い。

 無論、高速遊撃艦隊が急襲した相手も例外ではなく、とある戦術に嵌まって轟沈した艦が2隻出ても動揺をすぐに収め、素早く反撃を試みていた。

 

 とは言うものの、マイカル沖のグラ・バルカスの航空戦力はミリシアルの制空隊や防空巡洋艦を筆頭とした、派遣艦隊の強力無比な防空網で全滅している。

 

 加えて一旦空母に戻り、燃料や魔導爆弾や魔導魚雷の補給を済ませ、再出撃したミリシアル対艦攻撃隊の数は100機を超えていた。

 

 他に相対すべき艦艇がまだ残っている以上、全てが高速遊撃艦隊の相手している方へ向かう事はないが、それでも時折20機前後の編隊が援護爆撃や雷撃を回避し切るのは難しく、大なり小なり損害を与え続けられてしまう。

 

 グラ・バルカスの艦艇が分散していて、地球の東西冷戦時と同等かそれ以上ならまだしも、技術力と練度がほぼ互角な以上、高速遊撃艦隊側の被害が少なめなのも致し方ない。

 

「敵、速度と進路を変えずに30ノット程で急速接近! 特に、駆逐艦らしき船との距離は10㎞を切りました! 他方から敵の援軍も6隻接近中!」

『むぅ……厄介だな。我が艦ともう1隻(改装済みゴールド級魔導戦艦)は主に巡洋艦、魔導巡洋艦は敵駆逐艦を中心に砲撃、駆逐艦サファイアは他9隻の駆逐艦と共に敵戦艦への雷撃を決行せよ!! 何とか、援軍に接近される前に落としてくれ!』

「了解っ!! ですが艦長(司令官)、ちゃんと援護してくださいよ? 私の艦、1発もらえば轟沈しかねないんで」

『そんなの当たり前だろ! しかし、致し方ないとは言え、たかが1隻の戦艦艦長の俺がこんな命令を……お前たちには申し訳なく思う』

「これも戦争ですからお気になさらず。では、行って参ります!」

『……ああ、本当にありがとう』

 

 そんな中、ムー海軍と相対していた帝国海軍(グラ・バルカス)が一部分離、その艦が援軍として接近しているとの報を受けた旗艦が10隻の駆逐艦に魚雷戦実行を指示、敵駆逐艦の接近も相まってより両軍の距離が縮まっていく。

 

「右舷後方、左舷より魚雷接近! 雷速48ノット、数は順に5と6! 更に敵艦船より砲撃、回避行動を取らなければ確実に1発直撃コース!」

「これはまずいですね。機関を過負荷モードに、超加速しつつ舵を切り、砲撃してきた艦の居る方に魚雷を発射しなさい! 後、旗艦にも()()()()()()()()()()との通信を!」

「了解……お前ら、ここが正念場だ! 気張れよ!」

 

 で、海上では近距離と言える7㎞まで近づいた頃、敵艦の砲撃と共に航跡が複数、潜水艦の放ったものと思われる魚雷まで来ていると、駆逐艦サファイアの音響探知員より報告が挙がる。

 

 音波による海中探知を妨害するような要素が多々あった事、そもそもグラ・バルカスの潜水艦が取っている基本的戦法などの要素から、魔音波発探知装置でさえ探知が遅れたものの、時間差で潜水艦の反応を捉えられはした。

 

 ただ、残り5隻からの砲撃や魚雷攻撃が激しさを維持しているこの状況、対潜戦闘のために少しでも駆逐艦の速度を緩めるのは、かなり危険であった。

 加えて、探知した敵潜水艦の位置が7隻からたったの900mと、もはや目と鼻の先だったのが最悪でしかない。

 

『仕方ないか。駆逐艦が魚雷を発射後、回避行動を取りつつ全艦速やかに距離を取れ! 無論、潜水艦に対する警戒は怠るな!』

 

 故に、自分が撃沈された上で敵が健在との事態になりかねないと言う事で、一旦相手との距離を取る選択が取られ、旗艦よりそう指示が下る。なお、サファイアの軍人含め、反対意見はどの艦の誰からも出たりはしなかった。

 

「いや、本当に魔音波発探知装置(コレ)は凄えや。航跡が目立たない魚雷でも、見えているかのようだ」

「本来なら発射母艦を沈めたかったですが、流石に900mはかなり無謀でしょうし」

「一斉射撃食らって絶対に轟沈しますもんね。軍人どころか、一般の大人でも分かります」

 

 単に距離を取るだけでは、足のかなり早い巡洋艦や駆逐艦はともかく戦艦はじわじわ追い付かれ、ほぼ一方的に撃たれるだけとなるため、砲撃や魚雷攻撃で相手への足止めと反撃もしっかり行われている。

 

「魚雷命中……敵駆逐艦2隻轟沈! 戦艦の砲撃で敵巡洋艦大破! おお、良い感じです!」

「よし! 残りは戦艦のみで、敵との距離もそれなりに開きましたね。魚雷は全部放ってしまったので、我が艦はひとまず主砲で全力射撃を続けましょう。魚雷同様、味方に当てないように注意しなさい」

 

 必中の誘導魔光弾(ミサイル)や誘導魚雷(魔雷)はない以上、攻撃を命中させるのも一苦労で、戦闘を始めてから相手を残り2隻まで追い詰めるのに、相当の時間を要していた。

 

『よっしゃ! さっきのお返しだこの野郎!』

『救援に来てくれた皆さん、本当にありがとうございました!』

 

 しかし、その結果高速遊撃艦隊の攻撃に耐えかねた、上部構造物から黒煙を立ち上らせた相手戦艦が反転すると、味方魔導戦艦2隻他3隻の改装巡洋艦が今までの恨みと言わんばかりに主砲の全力射撃を近距離で敢行、2回目の一斉射撃で弾薬庫への誘爆により、凄まじい早さで海中へと沈められていく。

 

 同時に、他方でも犠牲者を出しながらもミリシアル側の奮戦により、マイカル沖のグラ・バルカス帝国海軍が壊滅状態となったお陰なのと、攻撃隊の攻撃により1隻轟沈の大損害を被った援軍も反転していった。

 

 そして、ほぼ同時にオタハイト沖の海軍艦艇も日本に完封殲滅、他港町を攻撃していた艦艇やマイカル沖の残存艦艇は数が少なかったために戦略的撤退を選択、ムーの海から海上や海中の侵略者を追放する事に成功した。




次回の更新については、もう1つの小説更新などの私事が理由で、最大で5日程空きます。

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