光の申し子   作:松雨

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マイカル市街地戦(前編)

「おぉぉ……コイツは、何と酷い有り様だ。良いかお前ら! まかり間違っても生き残りの民間人、特に我が国の民と日本人を誤射しないように気を付けろ!」

「「「了解っ!!」」」

 

 マイカル沖の海戦にて、ミリシアル側がグラ・バルカス帝国海軍を撃破した後、派遣艦隊に守られていた魔導輸送艦5隻に搭乗し(搭載され)ていたミリシアル陸軍は、地上に巣食う侵略者を排除するため、マイカル港から市街地へと上陸していた。

 

 魔甲歩兵9100人に加え、魔装重戦車『ヴォルカⅠ型』11両に魔装中戦車『アルカスⅠ型』30両、魔装軽戦車『ウィングⅠ型』19両と、相手の圧倒的物量と不意打ちにも対応可能な編成となっている。

 

 無論、これら師団規模の部隊が全てまとまっている訳ではなく、複数の大隊規模に分かれて街全体に散らばり、各々がグラ・バルカス帝国陸軍と戦闘を繰り広げている。

 

敵中戦車(チハ擬き)5両、敵歩兵待ち伏せ2……っ! 砲撃被弾、されど正面装甲のため、無傷!」

「日本国の情報通りか。とは言え、念のためだな……ヴォルカⅠ型を前に押し出しつつ、手痛い反撃を食らわせてやれ!」

「了解……主砲、撃てぇーーっ!!」

 

 しかし、ミリシアル陸軍きってのヴォルカⅠ型の装甲は非常に強固であり、敵戦車主砲や対戦車砲の不意打ち攻撃を易々と弾くか耐え、擦過痕すらなく無傷で凌ぐ。

 

 逆に、敵戦車はヴォルカⅠ型の9.2cm魔装戦車砲や、アルカスⅠ型の7.1cm速射魔装戦車砲より放たれる複数の砲弾(魔導榴弾)に耐えきれず、正面装甲があっさり撃ち抜かれて沈黙した。

 

 同時に、副兵装の30㎜魔光超重機関砲や外れた戦車砲弾、魔甲歩兵の自動小銃から放たれる弾幕により、200人近くの敵随伴歩兵も大した反撃が出来ずに地に倒れ伏した。

 なお、これによるミリシアル側の損害は軽傷者が10人、戦闘継続不可能な重傷者は6人発生したものの、幸いにも死者は1人も出ずに済む。

 

「敵戦車、および随伴歩兵沈黙! しかし、この戦車砲はえげつないですね」

「そりゃあ、ヴォルカⅠ型の155㎜正面装甲、コイツと同等の対象にダメージを与える想定で開発された砲だしな。と言うか、副兵装も化け物過ぎて笑えるわ。グラ・バルカス相手なら普通に12.7㎜魔導機関銃とか、20㎜魔光重機関砲で良かっただろ」

「ははっ、確かに。ただでさえ、車体の大型化と魔法による重量対策で費用がかさんでいたところに、専用の弾薬と発射機構の開発で更に上乗せされてしまいましたし」

 

 無論、損害軽微で済んだ理由に、優秀な各種装備の存在があったのは間違いない。旧式の装備であったなら、全滅はないにせよ間違いなく死者がそれなりの数出ていた事だろう。

 

 しかし、今の待ち伏せに対処したのが『第零式魔装戦車連隊』と『魔甲歩兵連隊』に次ぐ練度を誇る大隊であったため、当然間違いではなかった。

 経験の浅い部隊だったなら、同様に死者が出る可能性もあったのだから。

 

「まあ、とにかく高性能ってのも分かるが――」

 

 そうして警戒しつつ、時折立ち塞がる敵中戦車隊を排除しながら進んでいると、高所からの狙撃と思われる攻撃により、ミリシアル兵数名が魔甲スーツごと身体を撃ち抜かれ絶命してしまう。

 

 小口径の拳銃弾程度であれば完全無効化し、手榴弾などの携行小型爆発兵器もある程度防ぐ防御力を持つものとは言え、大型の銃から放たれる大口径弾は流石に防げなかった。

 

 なお、魔甲スーツ着用者が大魔導師クラスの魔法の使い手であった場合、防御魔法との併用で理論上は防げるようになるものの、詠唱時間や消費魔力量の多さが故に、現実的ではない。

 

「チクショウ! 魔甲スーツが容易に撃ち抜かれるとは……狙撃の腕もさることながら、破壊力も対物魔導狙撃銃と同等を誇るらしい」

「正しい場所さえ分かればやり返してましたが、そうも行きませんね。空母の爆撃隊に支援を要請しましょう。モタモタしていると移動され、我が軍の兵士の死者を増やす事になります」

「分かっているさ。だがな、どこに何人の民間人が居るか分からん以上、空爆は厳しいぞ」

「どうしても、ですか」

「ああ。ムー人は当然として我が国や日本、その他国家群の民間人を万が一殺してみろ。ある程度ならコラテラルダメージと言えなくもないが、何事にも限度ってものがあるだろう?」

「……ええ、確かに。では、偵察機による地上偵察を要請するに留めますか」

 

 そして、戦闘場所を取り巻く複数の問題によって本来の最適解を選べない状況下にあるため、大口径の銃で狙撃される危険を犯しつつ、先へと進む選択を取る事となった。

 

 ただし、超高性能な軍事用魔導カメラを筆頭に、偵察に特化した装備を搭載、武装を取り払った代わりにミリシアル航空機史上最速の偵察機『サテラーチ1』へ、通常高度飛行から低空飛行での地上偵察を要請すると同時に決まる。

 

「おい。あそこからこっちに走ってくる人、日本人じゃないか? しかも、明らかにヤバそうな怪我してるぞ!」

「子供も3人、家族なのでしょうか……あっ、建物からグラ・バルカス兵!!」

「「「なっ!!!」」」

 

 すると、魔導通信機を介した要請を終えた直後、連隊前方に居た彼らの視界に、怪我をしている民間人らしき子供3人と大人1人、その子供の存在に気づいたグラ・バルカス陸軍兵士が入る。

 

 距離的にはかなり離れていて、表情含め細かな動作は見にくいか見えていないはずなのに、どう言う訳か醜悪な笑みを浮かべているように見えたお陰か、連隊全体に別種の緊張感が速攻で伝播していく。

 

「狙撃成功……今です。彼女たちの保護を」

「メリア殿か、感謝する! よし、急ぐぞ!」

 

 しかし、ミリシアル陸軍で最も優秀な狙撃手であり、大魔導師でもある『メリア』が神業を発揮した事により、最悪の事態にはならずに済んだ。




大分期間が空いてしまい、申し訳ありませんでした。

本作独自の種族に関しての質問

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