光の申し子   作:松雨

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マイカル市街地戦(後編)

「進め進め! あんな鬼畜共に慈悲など要らん! 非戦闘員(戦闘が不可能な者)以外は容赦なく叩き潰して行け!」

 

 グラ・バルカスの兵士に狙われていた4人の日本人を保護した後、相変わらず敵兵士や戦車を駆逐しながら進んでいたミリシアル陸軍最強クラスの連隊は、ムーの空軍基地が併設された『マイカル空港』を強襲していた。

 

 無論、マイカルを占領していたグラ・バルカス陸軍の司令部が置かれていて、それ故に脅威となる戦力が最も集結しているからという理由もある。

 この場所を制圧出来れば、マイカル解放が決まったも同然となり、仮に徹底抗戦を選ばれたとしても後は掃討作戦を行うのみとなるので、当然の流れだと断言しても良い。

 

 しかし、占領された空港や空軍基地の建物内部への侵入・制圧、囚われた民間人保護担当の魔甲歩兵連隊に関しては、それ以外にもう1つ大きな理由が存在した……と言うよりは、生まれたと表した方が正しい。

 

「隊長、めちゃくちゃ怒ってますね。まあ、かく言う私もこの上なく腹が立ってます」

「そりゃあな。あんな事をされれば、誰だってそうもなるさ。ん? 6時の方向に敵兵16! 対戦車砲持ちも居る、気を付けろ!」

「歩兵に対戦車砲とか殺意が凄まじ……うぉぉ!? 危うく粉砕されるかと思いましたよ……」

 

 中程度の部屋に突入した際、囚われていた複数の子供含む民間人を人質に取った挙げ句、巻き添えも厭わない銃撃や手榴弾による攻撃を相手側が仕掛けてきたので、致し方ないだろう。

 

 なお、条件反射的に己が身を掛けての防御魔法展開が間に合った魔導師(陸軍兵士)数人、全魔力を使用した超回復魔法を唱えた大魔導師1人の活躍により、奇跡的に()()()()()()()出ずに済んでいる。

 

 とはいうものの、早急に治療が必須の重傷者は出てしまっている。ミリシアル帝都の『ルーン大魔導病院』ないし、日本の大病院クラスによる治療が必要なレベルだ。保護そのものは成功しているにせよ、油断は禁物としか言い様がなかった。

 

 ちなみに、マイカルより逃げ遅れた民間人を捕らえる事はともかく、人間の盾として使うと決めたのは司令部以下数名であり、この作戦に賛成の意を示した兵士は約半分(47%)である。

 

「ぬぅ、敵手榴弾……結界展開! 全員、距離を取って伏せろ――」

「ぐあぁ! クソ、豪快にやってくれるじゃねえか!」

 

 敵の砲火が少し弱まったタイミングを見計らい、連隊の一部が民間人輸送のために戦場を離脱した後も、残った陸軍兵士で建物の奥へと進んで行くが、当然敵の抵抗も激しさを増していく。

 

 室外での戦闘とは違い、特定の例外を除き室内では各種戦車や装甲車との連帯、航空機による援護爆撃がない。

 また、海上・海中や空中での戦闘に比べ、陸上戦闘は技術的な優位による戦況の優位性が生じにくい。対策はしていても負傷者や死亡者が出てしまうのは、如何ともし難かった。

 

「クソっ、この先へは進ませんぞ――」

「『眠れば、貴方は永遠なる深海の世界へ行かん』」

「なん……だとぉ……ぁ」

「よし今だ! 止めを刺しつつ駆け抜けろ! 」

 

 だが彼らは、強力な魔法や優れた各種装備に加え、この世界にとってイレギュラーな日本を除けば、練度も最高クラスであった。無敵ではないものの、敵対者にとっては脅威となり得る強さと言える。

 

 加えて余裕がある戦線からの、魔導通信機による戦力提供要請を念のために行っている事で、徐々にマイカル空港にミリシアル陸軍の面々が集結、戦況はミリシアル側優勢へと傾いていく。

 だからと言って、油断しても問題ない程ではないので、変わらず気を抜かずに敵を撃ちながら先へと進んでいっている。

 

「貴様が侵攻部隊の司令官だな? 時間はやらん、降伏し人質を解放する代わりに生存兵とお前の()()()は助かるか、抵抗を選んで死を選ぶかしろ。ああ、勿論沈黙は否定とみなすぞ」

 

 そうして時折、手榴弾や対戦車砲、対物ライフルによる一斉射撃で負傷者ないし死亡者が発生しつつも、かなりの速度で進撃しながら民間人保護を続けていくこと2時間と少し、魔甲歩兵連隊は司令官の居るマイカル空港最深部への到達に成功した。

 

 当然の如く護衛の兵士4人が銃を構えるも、大魔導師でもある兵士の1人『アクアース』が水属性睡眠魔法(フルイムニャス)を先制で発動、司令官もろとも即座に眠らせて制圧下に置く。

 

 ただし、これでは色々と行うべき話が出来なくなるため、同じ兵士が解毒魔法を唱えて司令官のみを眠りから覚まさせた。

 かなり強力かつ上位の魔法であるため、詠唱者の魔力は今までの戦闘で使用した分も相まり、ここでほぼ枯渇する事となる。

 

「はぁ……仕方あるまい、不服だが受け入れよう。少しだけ、呼び掛ける時間をくれないか?」

「……」

 

 今のやり取りによって、司令官がそれなりに素早く下した判断は降伏の受諾である。

 ミリシアル側の派遣した艦隊との海戦、上陸してきた陸軍の鬼神が如き強さを発揮した戦車群や魔甲歩兵、今見た『魔法』の得体の知れなさを総合的に鑑みた結果、これ以上の抵抗は無意味と考えたが故だ。

 

「……分かった。ただし、妙な真似はするなよ?」

「ああ、心得ている」

 

 抵抗されると考えていたミリシアル側にとって、こうもあっさり降伏を受け入れられたのは、ある意味衝撃的ではあった。何かあるのではないかと疑う心も、芽生えてはいた。

 

 しかし、戦争をしなければならない時間が少しでも短くなる点については、素直に歓迎すべきだろう。隊長含め、全員が内心でそう考えている。

 

「これで呼び掛けはした。降伏を受諾せず抵抗する者の処遇については……屈辱だが、お前らに任せるとしよう」

 

 こうして、ミリシアルはある程度の犠牲を払いつつも、グラ・バルカス帝国軍から勝利をもぎ取る事に成功した。

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