光の申し子   作:松雨

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変わらぬ日常

 本格的な戦争が始まってから3ヵ月と少し、ありがたくも悲しきミリシアル軍の皆の尽力と犠牲で、沢山の自国民が住まう本土には一切攻撃がなく、いつもと変わらぬ光景を見る事が私は出来ていた。

 

 勿論、特有のピリピリした雰囲気は多少なりとも出ているし、陸海空軍やパル・キマイラ3隻による警戒の様子を見れば、嫌が応でも戦争を意識せざるを得ない。

 

 カームやビアの気遣い、美味しい料理や読書を嗜む時間、飼い猫の癒しを筆頭とした要素があってさえ、悪夢を見る事がたまにある程である。

 

「日本人、最近一気に増えたよね。いやまあ、他の国の人もいつも通りなんだけど、それにしたって多いなぁ」

「ええ。私としても、日本の皆さんがミリシアルを好いてくれているのは嬉しいです」

「それは言えてる……あっ。そう言えば何か、4週間後に日本との文化交流祭をルーンポリスでやるらしいんだけど、オロールさんも行かない?」

「4週間後の予定は……うん、なし。分かりました、行きましょう」

 

 そして、我が国を観光なり仕事なりで訪れる外国人に関しても、本当に戦争なんてしてるのかと言わんばかりに、各々が活気に満ち溢れている。

 

 更に日本人に至っては、マイカルでのミリシアル軍による人質救出以降、他国を凌駕する勢いで観光客が増え続けている。

 自前で大きく高性能なジェット旅客機や旅客船を持つ唯一の外国が故に、ミリシアル各地の港や空港の整備拡大計画が持ち上がり、実行に移される程であった。

 

 私の住むカルトアルパスにも帝都に次ぐ日本人観光客が訪れていて、主な人気スポットとして巨大商店が立ち並ぶエリア、魔導大図書館、行きつけとなった酒場が挙げられているらしい。

 

 お陰で待ち時間が増えたり、目的の商品が買えなかったりする事が大分増えたりしているものの、苦には全く思わない。誰にも言えないが、かつて(前世)の故郷だったからだろうけど。

 

「あっ! お母さん、あの人だよ! スッゴい魔法使いのお姉ちゃん!」

「あの赤髪の子?」

「うん!」

 

 そんな事を考えながら、ビアと一緒にデパートのお惣菜コーナーで買う物を選んでいると、聞き覚えのある声が耳に入ってくる。

 後ろを振り向いてみたところ案の定、観戦武官の仕事で日本に行った際の隙間時間、触れ合いを兼ねた魔法の実演をしていた公園に居た、小学校低学年の男の子だった。あの様子を見るに、親子で旅行に来ているようだ。

 

 当時の状況と安全性を考慮した結果、行ったのは風魔法を応用した物体の空中浮遊、()魔法を使ったアート製作だけではあったけど、観客の中でも特に喜びが大きかったのを覚えている。

 まあ、彼が大好きらしいヒーロー番組のヒーローを、彼の頼みで四苦八苦しながら作った訳だし、当然と言えば当然か。

 

「ようこそ、ミリシアルへ。その様子だと、随分と楽しんで頂けているみたいで良かった」

「ええ、それはもう。日本での仕事疲れが吹き飛ぶ新鮮な体験が出来てますから」

「おとといなんか、デッカいUFO飛んでたの見たもんね! 赤髪のお姉ちゃんたちは見なかった?」

「見たよ。迫力あったもんね、あれ」

「私も見たよー」

「そっか!」

 

 男の子は言わずもがな、お母さんの方もミリシアル旅行を楽しんでくれているようで、言葉の節々や表情などから感情が漏れ出ているのが良く分かった。

 

 魔導文明に対し、日本は純粋な科学文明国家である以上、色々と戸惑う場面も多々あるとは思う。調べてから来ているとは思うけど、文化や独自の決まり事とかもある訳で、尚更だろう。

 

 何なら、ミリシアルとグラ・バルカスが本格的に対立している情報も、日本政府からあらゆる媒体を通して伝わっているはずである。

 それでもなお、この親子含めた多数の日本人が観光客として来る事を選んでくれたのは、実に嬉しい限りである。

 

「おーい! そっちは買い物終わったかー? 終わったなら行くぞ!」

「はいはい、今行きますよ……では、私たちはこれで。お時間を取らせてすみませんでした」

「いえいえ、全然構いませんよ。旅行、楽しんでって下さいね」

「じゃあね、魔法使いのお姉ちゃん!」

「うん、じゃあね」

 

 で、男の子のお父さんらしき男の人が呼びかけてきたため2人と別れた後、中断していた買い物を再開、手早く目的の商品を手に取ってレジで会計を済ませ、デパートを後にした。

 

 今は私もビアも休日ないし仕事終わりではなく、1時間~1時間半ある昼休みの時間帯なため、()()()()服飾用品コーナーや図書コーナーを回る暇はない。

 

 今まで任された仕事はもとより、エモール王国との国境近くで『コア魔法(パンドラの箱)』が見つかってしまったために、皆のサポートがあってさえ仕事量が否応なしに増えてしまったのだ。

 

 特に、同時に発見されたらしい解説書に記された『対放射(たいほうしゃ)電磁結界』や『魔消の麗界(アルニッシャー)』はもとより、儀式級の超回復魔法『潜深なる癒波(アルティナヒール)』、これを扱えるようにするための各種調整が実に厄介で、かつ面倒なのである。

 

 あまりにも破壊力が高く、あまりにも惨い忌むべきそれ(コア魔法)を実用化して戦争に使うつもりはないにせよ、見つかった以上同様の遺跡が発見される可能性が出てきた。

 

 考えたくもないけど、何かしらの要因で悲惨な事故が発生する可能性も同様に出てきたのだ。各所に応用が利きそうな魔法っぽいので、そう言う意味でも早期の会得は必須だろう。

 

「オロールさん、食べ終わった? 時間も迫ってきてるから、早く仕事に戻ろう」

「そうですね……よし。ご馳走さまでした」

 

 頭の中でそう思考を巡らせながら、お昼休みがもうすぐ終わる時間になったため、飲食する場の後片付けをしてから仕事場へと戻っていった。




すみません、更新遅くなりました。それと勝手ながら、更新頻度を不定期にしようと思います。

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