光の申し子   作:松雨

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古代の目覚め

 文化交流祭まで残り1週間を切ったとある日、ルーンポリスにある魔帝対策省の古代兵器分析戦術運用部、その中でも部長の『ヒルカネ・パルぺ』さん含む選りすぐりの面々が相対する会議に、私は呼ばれていた。

 

 そう言える頻度で行われる訳ではないけど、いつものように技術的要素を多分に含む会議かと思いきや、そうではない。

 グラ・バルカス帝国との戦争に関して、()()()発掘古代兵器を使用するか否か、とんでもなく重大な内容のものだったのだ。

 

 事の発端は一昨日、ミリシアル外務省に日本政府から衛星写真が送られてきた事から始まっている。

 あまりにもおぞましく、言葉を失う程に衝撃的であった推定合計1000隻のグラ・バルカス帝国海軍の大艦隊が、各地の軍港に集結している様子を含めたものだった。

 

 恐らく、これらの艦艇群は私の大好きな国であるミリシアル、もしくはムーに対して向けられるものだろう。杞憂であって欲しいけど、今の情勢を見るに希望は薄い。

 

 日本に向けられたものかも知れないと一瞬考えたものの、技術力云々の前に距離があまりにも離れすぎている。宣戦布告されたとの話も聞かないから、これは違うとすぐに頭の中から追いやった。

 

「これは明らかに、ミリシアルの通常戦力の手に余る物量だねぇ。恐らくだが、我が国の旧式や哨戒艦を入れても追い付かないよ。とは言え、負けるとは思わんが」

「うむ。航空戦力では優勢を保てているものの、海上艦艇の技術力はほぼ同等……負けるつもりはないが、勝てても犠牲者が沢山出るのは間違いない。下手したら、国が死に体と化すだろう」

「皇帝陛下からは必要に応じた古代兵器の起動許可、元老院からも同様の言質をもらっていますし、使用そのものは確定でしょう」

「私も同じく、使用はすべきだと考えます。パルカオンは、やはり1隻ないし2隻は欲しいところですね」

「むぅ……しかし、それは非常に貴重なものですよ」

 

 他の会議参加者たちも同じ想像をしているからか、使用そのものに関しては満場一致だったけど、現存する古代兵器の中で何をどれだけ割り振るかに関しては、議論が過熱していて殆んど決まらない。

 

 まあ、稼働可能なものも含めて11隻現存しているパル・キマイラは例外にせよ、3隻現存かつ2隻稼働可能なパルカオンやたった1隻、それも所々破損しているシーヴァンの投入を渋る意見があるのも分かる。

 

 リバースエンジニアリングを進めているとは言え、修復したり生産体制が整っている兵装はほんの一部である。現状では劣化コピーの生産すらほぼ不可能であり、替えが効かない状況だからだ。

 

 来るべき魔帝復活の日に備えた古代兵器を、私はそう思っていないけど、自国とほぼ互角程の相手に使うなど以ての外だと、その考えは未だに根強く残っているのだから。

 

「理解しています。ただ、それでも人の命には代えられません。数十年単位で私含む皆が努力すれば何とかなるそれらと、失えばそれっきりの命、天秤にかけるまでもないのではないでしょうか」

「それはそうでしょうな。()()()()()()()()、対処は可能だが物量は脅威的だと言ってましたから」

「弾数はともかく、総艦艇数は少ないみたいだからねぇ。まあ、それでも我が国の通常戦力どころか、推定1000隻以上のグラ・バルカス帝国海軍艦隊すら殲滅し、古代兵器すら撃破し得る力はある訳だ……おっと失礼、脱線してしまった」

「この程度なら問題ない。とにかく、パルカオン1隻は出すべきではないか? 後は、パル・キマイラと対空・対潜魔船辺りか。シーヴァンは、ひとまず様子見だな」

 

 しかし、それでもどうにか皆の安全と笑顔のためにと感情を込め、話をし続けていった結果、最終的にパルカオン1隻を含む発掘古代兵器を9隻、万が一の際に攻撃で動かす事が決定した。

 

 無論、それだけでは数が足りなくなる可能性が高いため、魔導軽空母4隻と魔導戦艦3隻を含む20隻の艦艇を追加する手筈となっている。

 

 なお、パルカオンやパル・キマイラ、対空・対潜魔船には魔帝製の各種誘導魔光弾の他にも、試験兵装としてミリシアル製の艦対艦誘導魔光弾『ウルティマⅠ型(天の火)』、艦対空誘導魔光弾『クウ・ウルティマⅠ型』が搭載されている。

 と言うか、して欲しいと私やビア含む数名の魔導技師で頼み込んだ。

 

 ウルティマⅠ型に関しては、仮想敵としてパルカオンを想定しているが故に威力がこれでもかと言う程に上げていて、理論上は改装後ミスリル級を確定で1発、ミスリル改級でも状況により1発で撃沈可能となっている。

 

 クウ・ウルティマⅠ型の方は、魔帝製の誘導魔光弾ないし天の浮舟を主な仮想敵に据えつつも、将来的には全力防御中のパル・キマイラにも対抗する事を想定している。

 

 とは言え、どちらも大量生産体制が整ったとは言い難く、またコアに魔法系レアメタルが使用されている以上、凄まじいコストがかかっていた。

 

 当然、1000隻の第二次世界大戦級の艦艇を沈める量は用意出来ていないので、仮に相手取るとしたら魔帝製誘導魔光弾を使用するか、パルカオンの主砲『150㎜魔導電磁加速砲』を起動しなければならない。

 

 ただ、魔帝の下で全力を振るえた当時ですら、砲身の耐久(破損しやすい)や使用魔力量などの要素から、易々と放てるものではないとの文献がある。

 技術力が追い付いているならまだしも、追い付いていない今万が一破損しようものなら、修復が出来ずに終わるのだ。使うなら、どうにもならない時の最終手段としてだろう。

 

 まあ、何だかんだ想定してはいても、1番は抱いている心配が杞憂に終わり、ここでの会議に使った時間が良い意味で無駄に終わる展開なのだけど。

 

「さてと。大方結論も出たところで、稼働準備と皇帝陛下へのご報告に行こうとしますかね。皆さんはもとより……オロール君、長期休暇前の追い込み時に呼んですまなかった」

「メテオスさん。これは呼ばれて然るべき内容でしたし、構いませんよ。むしろ、呼んで頂きありがとうございました」

 

 どのような展開になったとしても、出来る限りミリシアルやミリシアルに住む人々の命が失われる事のないよう、強く願いながら私は5時間にも及ぶ会議を行った魔帝対策省を後にした。

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