光の申し子   作:松雨

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文化交流祭(中編)

 マナポリカル魔導大館で開催中の文化交流祭、最初に立ち寄った日本食エリアのラーメンブースで各々ラーメンを頼んだ私たちは、備え付けのフードコートで存分に堪能していた。

 

 私は濃厚味噌ラーメン、ビアとクエリアさんは醤油ラーメン、他の友人たちは豚骨ラーメンを頼んでいる。私は特殊なので例外としても、他の皆もパンフレットを見て即決めていたから、口に合わなかったらどうしようかと考えていた。

 

 それに、良く考え込んだとしても口に合うかどうか、実際に食べてみるまで分からない訳だけど。

 

「あぁ……これは、お箸が進む美味しさだわぁ~。オロールさんも、そう思わない?」

「ええ。流石は、最高級の腕前を持っている職人の方々ですよ」

「その分値が張ったけど、元の価値分はあるねー。日本旅行行ったら、この店行こうかな?」

「ふふっ、余程気に入ったみたいですね」

 

 ビアたちが自身の頼んだラーメンを凄く美味しそうに、日本方式で(啜って)食べる様子を見て、抱いていた漠然とした不安は消え去った訳である。

 

 と言うか、全員やたらとお箸の扱いが上手い。ミリシアルで麺料理を食べる際は、地球で言うところのフォークに相当するものを使用するため、普通ならある程度は苦戦するはずなのだ。

 

「オロールさん、お箸の使い方上手だよね! 練習しましたー?」

「仕事の際に日本食を嗜む機会がありましたので。それより、皆さんも相当上手ですね。やはり、それなりに練習を?」

「勿論です! 今日に備えて、日本旅行をした友人に教えてもらったり、日本を解説した書籍で練習したりしてましたので!」

「自分はビアに少し教わった程度ですよ。多分、相性が良かったんだと思います」

「なるほど……」

 

 しかし、今日の文化交流祭が相当楽しみだったらしく、各々可能な方法で練習を行い、普通に食事が出来るレベルにまで腕を磨いたようだ。

 この様子だと、1度日本旅行に連れていったら食事のみならず、日本そのものにより興味を抱いてくれそうな気がしてくる。

 

 いつぞや、タイミングの良い時にカームやアルネウスさんと日本旅行をしようと約束したけど、そこに今日の文化交流祭メンバーを連れて行っても良いか、相談してみる事にしよう。

 

(ん? 通信機に着信……この魔導周波数は、メテオスさん?)

 

 そんなこんなで、究極の美味しさを誇るラーメンを堪能しつつ会話を続けていると、ミリシアル政府から提供された最新型携帯魔導通信機に、メテオスさんからの通信が入ってきた事に気づく。

 

 何の用もなくかけてくるような人ではないのは言わずもがな、その用がプライベートなものであったとしてもほぼ同じなので、これは確実に何かがあったと推測出来る。

 

 古代兵器関連で新発見でもしたか、誘導魔光弾や誘導魔雷関連でかなりの衝撃的な事でも発生したか、グラ・バルカス帝国との戦争に関して相当な進展でもあったのだろう。まあ、聞いてみなければ確実ではない。

 

『ああ、もしもし。オロール君、今通話は大丈夫かね?』

「えっと、少々お待ち下さい……どうぞ。メテオスさん、ご用件をお願いします」

『休暇中に済まないねぇ。だから、手短に用件を伝えるが……』

 

 と言う訳で、自宅に展開している結界『静寂と不聴の域(クワイトロニス)』を少し変えた上で2重に、私たちの座る席全体と私の周りに展開し通話に出ると、ある意味予想通りだったが故に驚いてしまう。

 

 何せ、グラ・バルカス帝国海軍の極大規模の艦隊が出撃、ほぼ確実にミリシアルへ攻めてくる航路を取っていると判明したと言うものだったのだ。情報源は勿論、日本政府である。

 

 当然、用意されていた各種発掘古代兵器や兵装を含めた、あの殲滅混成艦隊に出撃命令が下った訳で、パル・キマイラの1号艦艦長も務めているメテオスさんも、例外ではない。

 

「そうですか……」

『まあまあ、そう心配しなくても大丈夫だ。魔帝製やミリシアル製の誘導魔光弾もある上、何なら魔導電磁結界も使用可能……無論、油断せず慎重に行くのは変わらないだろう』

「はい、是非ともそうして下さい。死んだら怒り(泣き)ますからね」

 

 技術力や物量が地球で言うところの、第二次世界大戦後半のアメリカ合衆国に比肩する程の力を持つ国が、全力かどうかは不明なものの本気を出してきた。

 

 全力全開の現代日本に迫り、一部は追い越している魔帝の発掘古代兵器をも使用したとは言え、不安なものは不安なのである。

 

 だが、今はその事を考えるべきではない。せっかく、ビアたちと楽しく文化交流祭を楽しんでいるのだし、もし考えるなら休暇明けからで良いだろう。

 

『勿論……あぁ、それともう1つ。エモール王国との国境付近で発見された例の解説書、皇帝陛下から許可をもらってすぐにオロール君の進言通り、コピーを駐ミリシアル日本大使館を通して提供してみたんだが……』

「どうでした?」

『凄まじい食い付きだったねぇ。可能なら、対応出来る大魔導師の派遣を要請したいとまで言ったそうだ』

「やはりそうでしたか」

 

 そして、メテオスさんからの話はこれだけではなかった。私が数々の仕事と並行して行っている、コア魔法が発見された遺跡にあった解説書に記された3つの強力な魔法、これが日本に強烈な印象を与えたと言うものもあったのだ。

 

 細かな箇所での違いはあれど、お互いに似た者同士なコア魔法と核兵器、これらによる環境的破壊を極限まで小さく出来るとあっては、食い付きが良くなるのは自明の理と言い表せる。

 

 言わずもがな、私ですらかなり会得に苦戦中なこの魔法、他の優秀な大魔導師でも会得するには相応な時間が間違いなく必要となる。日本に派遣が可能となる程の余裕が出来るまでには、尚更時間が必要となるに違いない。

 

 まあ、日本の場合は核兵器云々よりも、原子力発電所の廃棄物問題や万が一の事故時の放射能漏れによる被害軽減、汚染地域や物質の浄化に使いたいと考えているだろうけど。

 

『とまあ、こんな感じで用件は終わりだ。それではオロール君、長期休暇をのんびり楽しんでくれたまえ』

「はい。ゆっくり楽しませていただきます」

 

 おおよそ20分、携帯型通信機を介したやり取りを続け、メテオスさんが通信を切断したのを確認した私は、展開していた結界を解除していく。

 何年も前から使い続けて扱うのに慣れた魔法なので、ほんの僅かでも時間さえあれば、解除および展開はお手のものだと自信を持てる。

 

「すみません。少々立て込んだ理由があったものですから……」

「別に構わないですよー。それより、もっと別の場所に行きましょう」

 

 そして、突然の行為でビックリしたであろうビアたちに謝罪を行ってからは、全員かなり満腹近くまで行っていた事もあり、流れるがままに芸術品などが多数揃うブースへと、向かう事が決定した。

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