日本食エリアのラーメンブースにて、各々が食事を十分に堪能した後、私たちは芸術エリア内にあった『折り紙』ブースへと足を運び、その超絶技巧から出来た作品を眺めていた。
前世の頃からずっと思っていたけど、たった1枚の紙から技巧に応じた多種多様かつ、複雑怪奇な作品を生み出せるその奥深さは凄まじい。
全てに当てはまる訳ではないものの、2枚以上の折り紙を使う作品ともなれば、やり方を見たり教えてもらいながらですら、相当に苦戦すると言わざるを得ないのだ。
私のような完全記憶能力持ちなら、他の人よりもある程度のアドバンテージを得た状態で始められはするものの、あくまでも完全ではない。
ショーケース内に飾られている超絶技巧作品の作者方、鶴を片手間の作業が如く量産している日本人に比べれば、真似してすらある程度は見劣りしてしまうのだ。
「この紙1枚でこんなのが作れるなんて……えっ、嘘でしょ? 本当に作れるんだ」
「『ドラゴン』とか『鎧兜』なんて、やり方聞いて教えてもらいながらですら厳しいんだよねー。メジャーどころらしい『鶴』だって、相当な難易度だしさ」
「本当にそう思うわ……って、あの日本人凄くない? とんでもない早さで鶴量産してるんだけど」
「もしかしたら、あの方は折り紙のプロなのかも知れませんね。この文化交流祭、各ブースに1人は確実にその道を極めた方が居るとの事なので」
当然、そんな能力がない上に折り紙を初めて見た、ないし多少経験した事がある位でしかない3人が、やり方を見た程度で作れる道理はない。
しかし、上手い人に教わりつつやり方を解説した本などを見ながら練習し続ければ、いずれ何かしら作れるようにはなる。
私も、完全記憶能力なんてなかった前世の小さかった頃、親や友達や保育園の先生に教わった結果、鶴程の難易度の作品であれば作れるまでに、腕が上がったのだ。
とは言え、最終的にどの領域までに到達するか、またどの位の時間が必要となるかについては、個人差が大きくなるとは思うけど。
「すみません。私たちにも折り紙の折り方、教えてもらえませんか? 貴方の折るところを見ていて感銘を受け、やりたくなってきたので」
「おっ? 嬢ちゃんたち、嬉しい事言ってくれるじゃないの。よっしゃ! 頑張って俺の持つ技術を教えたるわ! 何が折りたいとかってリクエストあるかい?」
「先ほどまで貴方が折っていた、鶴が良いです。他の難しいやつは、まずは鶴を折れるようになってからにするので」
「了解! じゃあ、早速やるか!」
そんな事を考えながらいると、超高速で鶴を量産していた折り紙のプロらしき男の人の手が止まったのを確認出来たため、声をかけて教えてもらいながら折り紙体験をする事を決める。
私やビアの友人の1人は鶴であれば折れるものの、ビアやクエリアに関しては折り紙未経験なので、もっと簡単な奴の方が良いのではと考えてはいた。
ただ、彼の超高速折り鶴製作の技巧に魅せられたらしく、やるのであれば鶴が折りたいとの希望だったので、こちらからは何も言うつもりはない。楽しんでくれさえすれば、何も問題はないのだから。
「ちょっ……早いですよおじさま! えっと、こんな感じですか?」
「おぉっと、すまねえ。どれどれ……おう、初心者の割には良く出来てると思うぞ! しかし、そっちのお二人さんはやたら上手いが、経験者か?」
「はい! 日本旅行に行った友人から、教えてもらった事があります!」
「右に同じく、
「そうか。いやぁ、俺の知らないところで折り紙好きが増えてくれているのは、嬉しい限りだぜ」
それにしても、折り紙を教える先生が超絶技巧を見せてくれた人とは言え、初心者なはずの2人が短時間で上達する飲み込みの早さを発揮しているのは凄い。
ビアに関しては付き合いも長いから特に驚きはしないけど、クエリアがそれ以上に飲み込みが早い……いや、早すぎるのはちょっと驚いた。
確か、彼女はルーンズヴァレッタ魔導学院の魔導技師だと言っていたけど、道理で航空機の発展が凄まじい訳である。
分野がまるで違うので確実にそうとは言えないものの、例え知らない知識や技術があったとしても、少しの時間さえあればそれをものに出来るのだ。
「凄いですね、クエリアさん。この飲み込みの早さなら、仕事場でも相当に優秀なのでは?」
「あはは、そんな事はありませんよ。努力の末に得たものか才能かは置いておいて、私と同程度の能力持ちなら向こうに沢山居るんで」
「そうですか。それなら、ミリシアルの未来は明るいですね」
しかも、他にも同等クラスの能力を発揮している人が居るらしいので、この様子だと開発中の
そうなれば、グラ・バルカス帝国が次世代航空機を投入してきたとしても、間違いなく優位性を保つ事が出来る。
勿論、戦争は航空機のみで雌雄が決する訳ではないし、ミリシアルのそれと同程度の性能を誇るジェット戦闘機が登場する可能性もなくはないから、油断大敵ではあるけども。
「あの……これは?」
「俺が出した折り紙の本だ。配り続けてもう1冊しかないが、良ければ持ってってくれ」
「良いんですか? ありがとうございます!」
そんなこんなで折り紙を楽しみ、ビアとクエリアが教えてもらいながら鶴の完成にこぎ着けたタイミングで、彼から自身が監修したらしい本を1冊手渡された。楽しみながら折り紙をしていた私たちを見て、嬉しく思ったようだ。
なお、4人の内誰がもらうのかとの問題については、1番楽しそうにしていたビアにすると満場一致で決まる。
私やビアの友人は元々ある程度の作品を生み出せる技術はあるし、同じくらいに楽しんでいたクエリアも、使いたければ貸してもらうから良いと言っていたのだから、当然の如くそんな流れになるだろう。
「ありがとうございました!」
「はいよー! これからも、折り紙楽しんでくれよな!」
そうして最後、生み出した作品は先生に引き取ってもらい、家などで折れるようにと新しい折り紙をもらった私たちは他の日本文化を楽しむため、お礼を言ってからこの場を後にしていった。
本作独自の種族に関しての質問
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多くして欲しい
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多くしても問題ない
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これ以上は望まない
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作者にお任せ