光の申し子   作:松雨

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本編
最新鋭の艦


 神聖ミリシアル帝国……地球とは異なる1つの世界にて、最も発展・安定している『第一文明圏(中央世界)』にある、列強国の1つである。

 また、魔法やそれに由来した魔導技術が幅を利かせているこの世界にて、列強国を含めた中で最も平和と繁栄を謳歌している、名実共に最強の国でもあった。

 

 勿論、それも全て古代に名を馳せた国ながら、今なお恐れられている『古の魔法帝国』の遺産(超兵器)発掘と解析、人的資源や技術・情報への莫大な投資、得た成果をふんだんに使用して揃えた強大な軍事力がある故だ。

 

 当たり前だが、軍事に人やお金を湯水の如く使わなくても済むのなら、それが1番ではある。戦争など、ない方が断然良い。

 しかし、()()()()がなければいざと言う時に抵抗出来ずにあっという間に喰われ、良い様にされてしまうため、そうはいかないのだ。

 

 列強レイフォルをたった1隻の戦艦『グレード・アトラスター』で滅ぼし、今もなお近辺の勢力図を書き換え続けている『グラ・バルカス帝国』なんかが、良い例である。

 

「うーむ。あれが、最新鋭の防空巡洋艦……実に素晴らしい()()()()ですねぇ。貴学院の技術研究開発部は、とても優秀なようで」

「ええ、そうでしょう! 尤も、我が魔導学院随一の奇才と、その彼女が率いる魔導技師が居なければ、完成し得ない代物でしたが」

 

 そんな、地球(現代日本)とは常識が色々と違う世界での最強国家に、私は25年程前に何故かハーフエルフの女性『オロール』として転生していた。

 

 色々あったが、今は主に軍事関係の技術者の1人として、権威ある『カルトアルパス魔導学院』の技術研究開発部に籍を置き、働かせてもらっている。

 

 勿論、今まで相応の努力を積み重ねてきたのは言うまでもないが、元はしがない一般人がここまで至れたのは、優れた天性の能力がいくつもあったからだろう。そういう意味では、恵まれているとは思う。

 

「大魔導師のオロールさんか。良くもまあ、あれ程の人材を抱え込めましたな」

「苦悶しましたよ。他にも彼女を取ろうとするライバルが多かった上、酷い時は違法スレスレの妨害までされましたから」

「なんと……まあ、彼女程の逸材がそうそう出てこないと考えれば、あり得ない話ではない」

 

 しかし、その分私は生まれつき身体に大小問わずいくつかの問題を抱えている。過去のトラウマ級の出来事のせいで、精神面でも補助が必要である。

 

 他にも、若干不運寄りな体質なためか面倒事に巻き込まれやすかったり、家事能力が一部を除いて壊滅的だったりと、細かい部分で他の人よりも劣っている。

 努力しようとしても、一定のライン以上の改善が出来なかったので、今はもう開き直っている。

 

「少し、お話よろしいか?」

「どうぞ」

 

 多くの人々や多額の予算を注ぎ込んだお陰で完成した、防空に重きを置いた巡洋艦のテストの様子を見ながら考え事をしていると、学院長と話をしていた軍の関係者が話を終え、私の方へとやって来た。

 

 今の状況や彼が軍の関係者なのを鑑みて、恐らく技術面で何かしら聞きたい事でもあるのかも知れない。防空巡洋艦と銘打つ分、対艦や()()の方が疎かになっていないか、と言う感じか。

 

 とは言え、対潜に関しては魔帝の遺跡で誘導魔雷や魔導潜水艦、魔音発探知装置などが発見されたのは割と最近の話なので、違うかも知れないけども。

 

「『日本』と言う名の国を、知っているだろうか?」

「なっ……はい。文明圏外ながら、そのくくりで言えば大国のロウリア王国軍を、完膚なきまでに叩きのめす軍を持った国だと」

 

 と言う訳で、私の眼前でテスト中のマラカイト級防空巡洋艦の1番艦『マラカイト』の装備について、色々と解説しようとした私だったが、話の内容は日本についての事だったため、頭の中が一瞬真っ白になる。

 

 いつぞや、気まぐれで入った酒場にて日本の名を聞いた時は、周りの注目を浴びる程に驚いたものだ。

 転移国家を主張していて、かつ私が転生してから時間が大分経っている点からして、元居た日本と同一次元の存在とは考え難いけど、1度訪れてみたいとは思っている。

 

「ふむ。ならば、情報局が仕入れてきたかの国の主力艦の魔写、ロウリア王国での聞き取りなどから得た情報なのだが、これを見て貴女の思った事を聞かせてほしい」

 

 すると、彼が手持ちのバッグから数枚の写真と、ロウリア王国での戦闘諸々の情報が記された書類を、私に手渡してきた。余程見てもらいたいものらしいので、見逃しがないようにしっかりと確認する。

 

(イージス艦『みょうこう』に旭日旗、戦闘機には白地に赤い丸……間違いない。まさかこんな事が起こるとはね……)

 

 遠く離れた動く船やワイバーンにすら命中する大砲、金属製の艦船や航空機より放たれるワイバーンを追う超速の光の矢、制空型『天の浮舟』を優に超える速度で飛ぶ戦闘機、高精度高威力の爆弾……話を聞くだけでも凄まじい。

 

 だとしたら、ロウリア王国程度の相手が勝てる道理など、相対した時点でなかった訳だ。

 

 ないとは思うが、もし日本と対峙する事となった場合、空中戦艦『パル・キマイラ』や海上要塞『パルカオン』、超潜艦『シーヴァン』を稼働出来なければ、現在の装備では遅かれ早かれ敗北するだろう。

 

 やはり、出来る限り早く古代発掘兵器のリバースエンジニアリングを完了させ、自国の技術として取り入れる必要性を、これらの情報から実感した。

 

 まあ、皇帝陛下(ミリシアル8世)のお陰で、私や部下の魔導技師以外にも帝国には沢山の優秀な魔法技師が存在しているし、総力を挙げれば未来はそう遠くないとは思うが。

 

「優秀な情報局の皆様を信じ、これら情報が真実と言う前提でお話するとなると……悔しいですが、ミリシアル最強の第零式魔導艦隊ですら、日本国には歯が立ちません。各種古代発掘兵器をある程度動かせて、ようやく勝ちの目が見えてくると言ったところでしょうね」

「そこまで言うのか」

「仮に、魔写以外が嘘または情報統制による誇張であったとしても、低く見積もって『ムー』と同等の強さでしょう。グラ・バルカス帝国の事もありますし、どちらにせよ相対した場合は列強国相当の扱いにすべきかと」

「なるほど……ありがとう、参考になったよ。流石は()()()()()とも呼ばれるだけある」

「どういたしまして。私も、より一層頑張ろうかと思います」

 

 前世云々は抜きに、現在の職業と見せられた資料、ミリシアルの現状から思った事を伝えると、彼は私に頷いて感謝してくれた。

 この見解が、今世の私にとって愛すべき祖国を守る助けに、少しでもなってくれるのを願おう。

 

(ふぅ……痛っ! さて、そろそろ帰るか)

 

 軍の関係者との話を終えた後、学院長に一言断りを入れてから私は自宅へと帰っていった。

本作独自の種族に関しての質問

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