光の申し子   作:松雨

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終わりの始まり(導入編)

 ミリシアル国内が戦時であると感じさせない程に平穏な中、発掘古代兵器を含むミリシアル海軍殲滅混成艦隊20隻は、ムー大陸南西1650㎞の海域を航行していた。

 

 自国へ攻めて来ようとしている悪魔が如き軍勢、膨大な量のグラ・バルカス帝国海軍艦艇を、取り返しのつかない被害をもたらす前に撃滅するためである。

 

 この艦隊にはパルカオン1隻にパル・キマイラ3隻、ユニバース級(対空魔船)を3隻にセイド級(対潜魔船)を2隻と、虎の子の発掘古代兵器が9隻も入れられていた。

 

 更に、サポート役として最新鋭かつ通常の魔導戦艦3隻に魔導軽空母4隻、可能な限りの必要な物資を積んだ補給艦4隻と、出来る限り多くのグラ・バルカス海軍艦艇を撃沈出来るような編成となっている。

 

「しかし、推定1000隻もの艦艇を一斉出撃させるだけの国力があるとは……グラ・バルカス帝国は化け物だな。察知が遅れたらと思うと、考えたくもない」

「ええ。ですから、本当に日本国様々ですよ。それにしても、あれだけの艦艇が沈めば、流石に奴らも厳しいでしょう」

「ああ、そうだろうと思いたい。だが、仮に金銭的に問題がなかったとしても、再建にかかる膨大な時間はどうしようもないはずだ」

「科学文明国ですからね。とは言え、現状この世界で魔導技術の頂点に立つ我々でも、同じ事が出来ないのは明らかなんですけど」

「ははっ。万が一出来てしまったら、それはもはや神だろうさ」

 

 普通に考えれば約50倍もの戦力差がある中敵に突っ込むなど、無駄死にするようなものであり、艦隊の士気は最低レベルまで落ち込むはずなのだが、実際は逆だと断言しても良い位には高い。

 

 古代発掘兵器のグラ・バルカスに対する圧倒的な技術的優位性、魔帝兵器に関連した各種研究を進めていくにつれて明らかになった事実、これらが精神的安寧をもたらしているのである。

 

 また、万が一の事態が発生した場合の連絡が入ってきた事に備え、予備戦力として古代発掘兵器を含む艦艇を幾ばくか、派遣する用意が成されていた。

 

「さてと。推定1000隻の艦艇を全部沈めていては確実に弾切れになる以上、敵空母や戦艦は優先して狙っておくか……奴らはまだ、こちらの射程距離には捉えられていないな?」

「はい、スフィア司令官。まだ250㎞以上も離れている上、時折飛び立つ偵察機らしき航空機も見当違いの場所へ飛んでいってますので」

「そうか。とにかく油断せず、敵の動向は注視しておけ。流石にないとは思うが、ディクトホーカー(垂直離着陸型早期警戒機)が撃墜されてしまえば、レーダーの探知範囲が大きく狭まってしまうからな」

「はい!」

 

 故に、混成殲滅艦隊の旗艦であるパルカオンの乗員も含め、全体としての雰囲気も戦場に向かう者として見れば、かなり和やかな方だと言える。

 

 無論、物量差は脅威的でしかない水準な上、グラ・バルカス海軍が何かしらの新兵器を繰り出し、僅かしか可能性がないにせよ被害を与える可能性があると考え、油断をする者は殆んど存在していなかったが。

 

「スフィア司令官! グラ・バルカスの偵察機らしき航空機が9機500㎞/hで接近中、クウ・ウルティマⅠ型の射程圏内へ入りました! 艦艇は我々より155㎞、まだウルティマⅠ型の射程圏外です!」

 

 ある程度の時間が経過し、両国の艦隊が徐々に距離を縮めていった頃、レーダー監視員から司令官へグラ・バルカス海軍の偵察機が、射程圏内へ入った事を伝える報告が成された。

 

 海上を埋め尽くすと言わんばかりの艦艇群については、各種古代発掘兵器に装備されている自前の対艦誘導魔光弾の射程にギリギリで入っておらず、空母や戦艦が射程に入るまでレーダーを注視する事が決められる。

 

「そうか……対空戦闘用意。情報を出来る限り持ち帰らせぬため、接近中の敵偵察機を全機撃墜せよ」

「了解……総員、対空戦闘用意! 接近中の敵偵察機を全機撃墜せよ!」

 

 加えて、少しでもミリシアル側の優位性を損なう状況を作らないため、クウ・ウルティマⅠ型による撃墜が決定、発射準備が超速で整えられた。

 

 なお、同様の理由で対潜魔船を除いた、古代発掘兵器群7隻が分担して発射する手筈になっている。その気になれば、第二次世界大戦相当の偵察機9機程度、対空魔船が1隻居れば対処は余裕なのだ。

 

 何なら、諸々の事情を無視しさえすれば、対空兵装に乏しい対潜魔船1隻のみですら余裕で全機撃墜が可能である。

 

「全艦、準備完了したとの報告が入りました。いつでも撃てます!」

「よし……撃て! 愛するミリシアルを滅さんとする不届き者に、裁きの鉄槌を下すのだ!」

 

 そして、対潜魔船を除く古代発掘兵器全艦の準備が完了したとの報告を皮切りに、偵察機を撃墜するための蒼白の尾を引く光槍が、空へと昇っていく。

 

 昼間かつ曇りと言う天候ではあるものの、空を超高速で昇り駆けていくその様は非常に美しく、外を何かしらの形で見る事が可能な殲滅混成艦隊の面々の大半は、その光景を各々思いを抱きながら見送っている。

 

「クウ・ウルティマⅠ型9発、不具合なく順調に飛翔中。このまま行けば、もう間もなく命中します」

「魔帝と日本国の技術を一部取り入れた集大成……グラ・バルカスの航空機程度、撃ち落としてもらわなくては困る」

 

 ちなみに、魔帝製の中距離艦対空誘導魔光弾『ラスター』や、中距離艦対艦誘導魔光弾『フォルスター』に関しては、ミリシアル製の誘導魔光弾がなくなった際に使用される事が決定していた。

 

 現状、自国製のものよりも威力や射程はともかく、誘導性能や対妨害性能に関しては明らかな差が存在していたため、先に使い切るのは憚られたのである。

 

「残り10秒で目標到達……5、4、3、2、1……全弾命中。敵航空機の反応、ロストしました」

「よし!」

「それと敵艦艇……戦艦と空母5隻、ウルティマⅠ型の射程圏内に入りました。対潜魔船以外の全古代兵器、発射準備は整っています」

「そうか……遠慮は要らん。侵略者共を海の藻屑としてやれ!」

「了解!」

 

 なお、クウ・ウルティマⅠ型は寸分の狂いもなく全弾命中し目標を撃墜、ほぼ同時にウルティマⅠ型の射程圏内へ敵艦艇が入った事により、本格的な海戦が開始された。

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