光の申し子   作:松雨

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終わりの始まり(前編)

 皇帝グラ・ルークスの命によってミリシアルを攻略すべく、自国が持つ戦力の7割(1065隻)を割いてまで出撃した極大艦隊、その旗艦を務める『グレードアトラスター』艦内は、非常に慌ただしくなっていた。

 

 周辺海域の偵察に向かっていた『コメット(艦上偵察機)』9機が、蒼い光の槍が追ってくるとの通信を送ってきたのを最後に連絡が途絶し、それとほぼ同時に原因不明の電波障害が発生してしまったからである。

 

 更に、事前の各種調査や通信途絶前の一言から、日本艦隊もしくはミリシアル艦隊による艦上偵察機の撃墜に、誘導弾が使用された可能性が極めて高いと言わざるを得なくなってしまう。

 

 相手と自国の技術力の差がどの程度かにもよるが、現状のグラ・バルカスでは対処は非常に難しく、何も対策しなかった場合に推定される命中率は、最低でも9割を超えている。

 ほぼ必中と言っても過言ではないため、尚更慌てる者が多くなっていたのだ。

 

「ラクスタル艦長。この状況、どう見る?」

「恐らく……いや、十中八九誘導弾によって撃墜されたと思います。日本国艦隊が放ったものと言う可能性が高いですが、ミリシアル艦隊が放ったものと言う可能性も、現状では否定出来ません。原因不明の電波妨害も、恐らくはどちらか2ヵ国の仕業かと」

「だろうな。最新レーダーですらまともに機能しなくなる精度の電波妨害、未だ我が国では試作に至れるか否かの領域にある誘導弾、脅威だな。後者の対策に関しては試作の域を出ないが、先進技術研究開発部が開発した兵器があるが、この状況下で果たしてどの程度の効果を発揮してくれるか……」

「艦船搭載型の『フレア』や『チャフ』でしたよね。確かに、私もそう思います」

 

 しかし、司令官のカイザルや旗艦艦長のラクスタルを含め、かなりのベテランである乗員は比較的冷静であり、現状どうにもならない電波妨害に関しては程々に、可能な限りの誘導弾に対する対策を話し合っている。

 

 なお、情報源はミリシアルへ頻繁に出入りする商人、ないし周辺国の商人に扮したスパイから入手した書籍であり、軍関係者と言った人物からは情報を殆んど入手出来ていない。と言うよりは、故意的に入手していない。

 

 戦争初期の頃は割と積極的に行われていたものの、カルトアルパス魔導学院への特殊部隊派遣が失敗に終わり、厳戒態勢が敷かれるようになってしまったのが原因である。

 

「偵察機が飛んでいった方角に敵航空隊ないし敵艦隊が居るはずだが、さてどうしたものか……やはり、攻撃隊を差し向けるべきか?」

「日本国の書籍に記してあった対艦誘導弾(誘導ロケット弾)が存在している可能性を鑑みれば、やはり――」

「カイザル司令官、ラクスタル艦長! 他の皆様も、あれを見てください!」

「「ん??」」

 

 そして、偵察機が向かっていった方角へ第1次攻撃隊を400機程、差し向けるか否かを決める流れに入ろうとしたその刹那、外を見ていた監視員が声をあげる。

 

 直接言葉に出した訳ではないものの、何がなんでも見て欲しいとの強い意思が込められた呼び掛けに、カイザルやラクスタルも話を中断して窓から双眼鏡を使用し、外を覗く。

 

「あれは……不味いぞっ!! 総員、対空戦闘用意! 発煙筒ないし発光信号、取れるありとあらゆる手段を講じて空母に発艦命令を伝えろ!」

「対空があるなら対艦もある、自明の理ですね。しかし、蒼い光の尾を引き、かつこの距離で上空に見えるものではなかったような気がします。書籍情報ですが」

「情報に間違いがあったか、ミリシアルが独自の誘導弾を開発したか……相手が用意した弾数にもよるが、どちらにせよ我々は岐路に立たされている。迎撃出来なければ、最悪死ぬだけなのだから」

 

 すると、白い雲が覆う空に目立つ蒼い尾を引く光の大槍(ウルティマⅠ型)が多数、一部は戦艦や空母を狙って落ち始めている光景が2人の目に入ってきてしまう。

 

 無論、即座にカイザルが旗艦は当然の事、レーダーが使用不能な事から万が一を想定した手段を用い、伝言ゲームが如く艦隊に命令を伝えようと努力するも、その間に凄まじい速度で接近してくる。

 

 なお、命令が伝わる前に気づいていた艦も勿論存在していて、対空戦闘を独自に開始したりもしているが、弾幕が足りなさすぎて命中するどころか掠りすらしていない。

 

 何なら、技術的に同程度の航空機が相手であれ、第二次世界大戦クラスの技術では対空射撃は牽制の意味合いが強いのだ。

 それよりも速く、大きさも小さい光の大槍を撃墜するなど、同等以上の技術を以て対抗するか、まぐれ当たりを期待するしかないのである。

 

「ぐっ、命中してしまったか! しかし、なんと言う爆炎の大きさだ」

「見る限りでは本艦の主砲の威力を軽く超えていますね。明らかに戦艦でもそうそう受け切れない破壊力、ほぼ必中と断言出来る命中率が加わり……ん?」

「どうした……は?」

 

 故に、必死の対空戦闘の甲斐なく落ち始めていた光の大槍は1つも撃墜される事はなく、不具合などによる墜落も一切なかった。

 結果、旗艦に程近い場所を航行していたヘルクレス級戦艦2隻にオリオン級戦艦3隻、ペガスス級航空母艦3隻他軽空母4隻へ亜音速で直撃、内部に秘められたその絶大な破壊力を解放する事となる。

 

 そして、要塞級の船体と防御力を持つ魔帝のパルカオン(超兵器)を撃沈する目的で作られたそれは、戦艦か否かは関係なく当たった艦艇を1分弱と言う極短時間で海の藻屑と化させてしまう。

 

 狙われた艦艇の中で、フレアやチャフを搭載していた艦艇は当然の如く発射しながらの回避運動を行ったものの、威力が高すぎて多少命中箇所が逸れた程度では意味をなさなかった。

 

「俺は、夢でも見ているのか? ついさっきまで、そこに艦艇があったはずなのだが?」

「まさか……まさか、戦艦が1撃で轟沈するなど……百歩譲ってオリオン級ならともかく、ヘルクレス級までも……!」

 

 戦艦を、それもグラ・バルカス帝国内で旗艦に次いで、象徴的かつ防御力の高いヘルクレス級がたった1撃で、かつ目の前で轟沈してしまう経験は彼らにはなく、普段冷静沈着な2人が声をあげて驚いてしまうのは無理もない。

 

「おいおい、冗談じゃないぞ……すまない、ラクスタル艦長。俺にもう少し力があれば、新型試作兵器を持ってこれただろうに」

「いえ、謝らないで下さい。まだ、運命は確定した訳ではありませんから」

 

 しかし、命中した艦艇が轟沈してから時間も経たない内、まるで蒼い流星群と言い表したくなる程の量が水平線の彼方から飛来してきた事で、すぐに2人を含めた皆の思考がそっちの方へと塗り変わっていった。

本作独自の種族に関しての質問

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