光の申し子   作:松雨

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終わりの始まり(中編)

 互いの艦隊先頭の距離が70㎞を切り、対空・対艦戦闘共にミリシアル側が圧倒的優位で推移していく最中、パル・キマイラ1号艦含む艦隊全体を包む緊張感は、未だに保たれたままであった。

 

 意図的に残された敵旗艦級戦艦(グレードアトラスター級)2隻を除き、無傷で敵戦艦および空母の撃沈を達成、他艦艇の多数撃沈にも成功していたものの、それでも未だに750隻(巡洋艦や駆逐艦)近くも残っていたからである。

 

「これは、何とも凄まじい。誘導魔光弾の欺瞞を狙う兵器を出してきた時は驚いたが、大した事なくて良かった」

「そうですね。攻撃命中前の敵空母より発艦した艦載機もエルペシオ4より低速なので、パル・キマイラの各兵装を効果的に運用しさえすれば、敗北はないでしょう」

「だろうねぇ。物量差は凄まじいものの、残存艦艇はシルバー改級相当かそれ以下相当ばかり……おっと。念のため、回避運動を行いつつ、万が一当たる可能性のある砲弾はクウ・ウルティマⅠ型で撃墜しておけ」

「了解」

 

 現在、事前に用意していた全てのウルティマⅠ型、およびフォルスター(魔帝製艦対艦誘導魔光弾)を使い切ってはいるが、戦果としてはこの上ない。

 後者はともかく、前者の自国産も魔帝製に大きくは劣らぬ優れた性能を発揮していたので、当然の摂理と言えた。

 

 ちなみに、クウ・ウルティマⅠ型およびラスター(魔帝製艦対空誘導魔光弾)に関しては、発艦してしまったグラ・バルカスの艦載機を多数撃墜してなお、更に多くの対空目標を撃墜可能な程、残弾に余裕がある。

 

 古代発掘兵器の仕様や遺跡の調査による数々の発見、友好関係にある日本からの強力なアドバイス、訓練時の模擬海戦の結果、他多数の要素が重なりあったが故に、元から持ち込んでいた量が多かったのが理由だ。

 

 後は、事前の方針により敵空母艦載機ごと、敵空母をウルティマⅠ型やフォルスターで轟沈させていた事も無視は出来ないだろう。

 

 もし、全ての敵空母から発艦されてしまった場合、魔導コンピューターの処理能力を普通に超えてしまい、最悪いずれかの艦に被害が及ぶ可能性があるのだから。

 

『総員。離陸済みの残存敵航空機、および敵戦艦2隻により一層注意しつつ、砲撃戦に移行せよ。決して驕らず、同等の相手と対峙する心持ちで行け』

「了解……さて、気張ろうか。弾種は徹甲榴弾、少しでも艦艇への負荷を増やすぞ」

「はい!」

 

 超望遠魔導波検出装置を使用せずとも、旗艦級以外の未だ残る膨大な数の敵艦隊の砲撃射程圏内に入り始めてしまう17㎞を切ったタイミングで、旗艦の司令官(スフィア)より砲撃戦の指示が下ったため、パル・キマイラ1号艦内でも乗員が準備に入る。

 

 搭載艦艇や連装砲か単装砲かなどによって、システム上の細かな違いはあるものの、魔帝製超兵器および艦艇に搭載されている『15cm魔導砲』の最大射程は25㎞、有効射程は18㎞である。

 

 ただし、砲弾そのものに誘導性は存在しないため、魔導コンピューターや魔導射撃管制装置による補助があれど、ほぼ必中クラスの命中率を叩き出すのは不可能であった。

 

「命中、命中、また命中! 装甲の比較的厚い重巡洋艦級であっても、徹甲榴弾なら撃沈は難しくない模様! なお、敵旗艦級には魔導徹甲弾でも効果は薄い模様!」

「そうか。魔帝製とは言え所詮は15cm砲、魔導徹甲弾では戦艦の装甲は貫けない。ともなれば、一部の弾を魔導破榴弾に変えたまえ」

「了解しました……弾種、下部15cm砲のみ魔導破榴弾! ひたすら当て続けろ!」

 

 しかし、それでも従来のミリシアル艦の砲に比べれば圧倒的であり、毎分30~35発もの速射性能も相まって、短時間で多数のグラ・バルカス海軍の駆逐艦や巡洋艦へ命中弾を出し、撃沈・轟沈させていく。

 

 メテオスが艦長を務める1号艦だけではなく、ワールマンが艦長を務める2号艦や優秀な大魔導師が艦長を務めている3号艦もほぼ同等の命中率を叩き出し、凄まじい勢いで艦艇数が減少していった。

 無論、旗艦のパルカオンや対空・対潜魔船に搭載されている15cm単装魔導砲も、驚異的な戦果を上げ続けている。

 

「なっ……敵旗艦級2隻の主砲弾、弾道計算上1発が本艦直撃コース! 2発が3号艦への至近弾、ないし直撃コースに入ってます!」

「ほう、敵艦にも化け物級に優れた砲術士が居るようだ……まあ良い。空中目標には対空榴弾がセオリーだろうが、強固な徹甲弾の可能性が否定出来ぬ以上、念のためにクウ・ウルティマⅠ型を敵砲弾1発につき2発放ち、味方に対するものも含めて確実に全弾迎撃したまえ」

 

 そして、15cm砲では命中しても大したダメージを受けず、旗艦級戦艦2隻が反撃として多数放ったものの内、一部が直撃コースを飛翔していた46cm3連装砲9門の砲弾に関しても、クウ・ウルティマⅠ型による迎撃が実行される事となる。

 

 ミリシアルや魔帝製の、艦対空誘導魔光弾の飛翔速度であるマッハ3~4よりは遅く、砲弾の大きさもそれなりなため、捕捉自体はあまり難しくはなかった。

 

 ただ、互いの距離や弾種などの各種要素にも左右されるが、何の策も講じず直撃を受けてしまった場合、最悪は完全防御形態を取るパル・キマイラすら深手を負わされる可能性がある。

 

 こう考える者が殆んどなため、油断丸出しの振る舞いをする者はおろか、考える者すら存在していない。

 

「クウ・ウルティマⅠ型全弾命中、オールクリア。直撃弾の撃墜に成功しました」

「うむ、当然だ。しかし、あの爆発は……まさか本当に、徹甲弾だったのか」

「恐らくは。パル・キマイラが戦艦級の大きさを誇る船体とは言え、対空戦闘に徹甲弾を放つなど、正気の沙汰ではないですよ。まあ、実際に何もしなければ直撃していたので、彼らの技量ありきでしょうが」

 

 結果、パル・キマイラ1号艦の優秀な乗員および高性能な兵装、システムがフルに活用され、余裕綽々に直撃弾となっていた砲弾……徹甲弾の撃墜を成功させている。

 

 なお、クウ・ウルティマⅠ型は対空用としてはかなりの高威力であったため、弾体の耐久性が高い徹甲弾が相手でも、命中しさえすれば1発で十分と今回の防御により判明した。

 

 ただ、今回以降も全弾命中が確実に可能かと問われれば、決してそうとは言い切れない。なので、いざと言う時のために追加で発射出来る態勢は、しっかりと整えられていく。

 

『総員。本艦はこれより、()()()()()()()に入る。その間の対空戦闘(砲弾迎撃)は任せた』

 

 それから、グラ・バルカス艦隊とおよそ14~17㎞の距離を保ちつつ砲撃戦を行い更に127隻を沈め、空母撃沈前に発艦した艦載機476機も実質全滅させたその刹那、旗艦(パルカオン)よりミリシアル艦隊全体に衝撃をもたらす通信が入る。

 

「そう言う事だったのか……しかし、これは予想外だねぇ」

「そうですね。砲身、大丈夫でしょうか……」

 

 と同時に、パルカオンの兵装内で最大級の破壊力と貫徹力を誇る、2基2門の150㎜魔導電磁加速砲『ラノス』の砲身が旋回、敵旗艦級戦艦2隻へと各々向けられていった。

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