光の申し子   作:松雨

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驚愕の日本国

 ミリシアルの混成殲滅艦隊が、自国を攻めようとするグラ・バルカスの侵略者たち(極大規模艦隊)を圧倒的な力を以て全滅させ、死亡やそれに類する者も出さず無事に帰還してから2週間程経った頃、駐ミリシアル日本国大使の柳原(やなぎはら)と助手の峯山(みねやま)は、アルビオン城へと足を運んでいた。

 

 日本大使館へと派遣されたミリシアル政府の役人を介し、ミリシアル8世(国家元首)より「見せたい映像があるから見に来て欲しい」と、書面で伝えられたためだ。

 

「日本国大使よ、わざわざ呼び出してすまないな」

「大丈夫です、皇帝陛下。ところで、見せたい映像と言うのは一体どのようなものなのでしょうか?」

「ああ、それはな……貴国の人工衛星が捉えてくれたグラ・バルカス帝国の大艦隊、それと対峙した我が国の古代発掘兵器9隻込みの、混成殲滅艦隊20隻についてなのだ」

「なるほど、そうだったのですね」

「うむ。さてと……メテオス。パル・キマイラ、およびパルカオンが撮影した例の映像のデータが入った、魔導映像投射機を持ってきてくれ」

「了解しました」

 

 ただでさえ、自国を除けば現状この世界で圧倒的な国力と技術力を持つ超大国であり、科学のムー以上に深い友好関係にある国家の元首(皇帝)から呼び出しを受けたとあっては、さしもの日本側も緊張せざるを得ない。

 

 自国政府の人間、および自分たちがやらかして呼ばれた訳ではないにせよ、事が事なだけに尚更であった。

 

 皇帝の発言により、対峙したミリシアルの艦隊に古代発掘兵器の存在があると察したとは言え、それを数に入れてさえ20隻しかない。

 

 にも関わらず、グラ・バルカス帝国海軍の1000隻を超える大艦隊と、単純計算でおよそ50倍もの戦力差がある中戦ったミリシアル()()の人たちが、心配で仕方なかったのである。

 

「「……へ?」」

 

 だが、そんな日本大使と助手2人の思考は、ミリシアルの混成殲滅艦隊……主に古代発掘兵器9隻だが、魔導映像投射機越しに見たその彼らの圧倒的な蹂躙劇を見たため、中断された。

 

 当たれば戦艦すら1撃で轟沈させるウルティマⅠ型(艦対艦誘導魔光弾)、日本で言う大和型戦艦相当の艦艇の砲撃すら素で余裕で耐え、1撃で沈める破壊力の主砲(ラノス)を持つパルカオン(海上要塞)、これらが出た際の反応は特に際立っている。

 

「念のために言っておくが、映像の前半部分で古代兵器群より発射されたウルティマⅠ型、あれ以外は()()()()()()()だ」

「いやはや……終始圧倒されっぱなしですよ。それでいて、こんな超兵器を全力で運用していた古の魔法帝国(暴虐の権化)が、いずれ必ず復活する。日本も、考えなければなりませんね。軍拡を」

「はは! 頼りになる友人が本気を出してくれるのなら、非常にありがたいな」

「ありがとうございます。ただ、我々にも国内事情がございますので、実際にどうなるかは不透明と言うのをご理解頂ければ幸いです」

「無論だ。国家としてはもとより、個人的にも要求するつもりはないから、心配はしなくても良い」

 

 この世界に転移してきた時から接触ないし友好関係を結んだ国々、敵対した2ヵ国から伝え聞いた、古の魔法帝国の伝説と所業。

 

 一部魔導技術は第三文明圏随一の『パンドーラ大魔法公国』、講和条約締結後の性格が真反対となったパーパルディア皇国、ミリシアルの大魔導師による『魔法』の利便性や危険性の周知。

 

 エモールの『空間の占い』やミリシアルの遺跡から出土する物品、現存するどころか()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()などによる、過去での実在と復活の根拠補強。

 

 これら以外にも大小様々なこの世界でしてきた経験も加われば、実在や復活が夢物語ではないと確信するのも、当然の摂理と言ってもおかしくはないだろう。

 

「ミリシアルが持てる力を全て発揮し、無辜の民に犠牲者や負傷者を一切出さず、グラ・バルカス帝国艦隊の侵攻を完全にはね除ける事が出来たのも、日本国の情報提供があってこそだ。ありがとう」

「いえいえ、とんでもない。我々としましても、邦人の命を守るために行った面が大きかったので……」

「それでも、ミリシアルが助かった事に変わりはない。そうだろう? メテオス」

「はい。私といたしましても、日本国の人工衛星による情報提供がなければ初動が遅れ、大変な騒ぎになっていたと考えていますので、皇帝陛下の仰る通りだと思います」

「と言う訳だ。どの国も自国の民が最優先なのは変わらぬのだから、あまり思い詰めないでくれ」

 

 そして、記録されていた映像観覧が終わると、机を介して正面に座っていたミリシアル8世が立ち上がり、深々と頭を下げて感謝の意を伝えた。

 内心落ち着いた体で居ながらも、皇帝より頭を下げられた2人は緊張感が倍増しである。

 

 しかし、同時に並大抵ではない程の威厳があり、対峙した者に緊張感をもたらす存在でありつつ、どこか親しみを覚えやすい雰囲気だとミリシアルの人々が口々に言う意味を、真に理解・実感出来た瞬間でもあった。

 

 無論、日本に居る友人や同僚と接するような砕けた態度を取るのは色々な意味で論外だが、2人のミリシアルに対する好感度は更に上昇していく。

 

 とは言うものの、ミリシアルはこの世界では、他にムーしか存在しない、日本に対して友好的で理知的かつ先進的な文明国家だ。元から好印象である。

 

 また、貿易などによる経済的な繋がり、現状最先端の魔導文明国家と科学文明国家の交流による相互理解や技術力の向上、クワ・トイネやクイラとはまた別の意味でなくてはならない国でもあった。

 

 理不尽で正当性が微塵もない理由で戦争をおっ始めるような、当時のロウリアやパーパルディアみたいな国家でなければ、交流を縮小ないし完全に絶つ選択は日本には一切ない。

 

「今後とも、官民一体での交流続行をよろしく頼む。日本国の首相にも、改めて伝えておいて欲しい」

「勿論です、皇帝陛下。日本政府の意思といたしましても、神聖ミリシアル帝国との交流は変わらず続けていく方針です。なので、ご安心ください」

 

 故に、ミリシアル8世が自身の目的を達成した後、控えの役人に先導され部屋を出ようとする日本大使たち2人に向けた言葉に対し、非常に前向きな返答が帰ってくるのも、当然の摂理と言えるのであった。

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