光の申し子   作:松雨

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魔導技師の息抜き

「ようやく終わったぁ……皆、お疲れ様!」

 

 メテオスさんより、グラ・バルカス帝国海軍の極大侵攻艦隊の殲滅が知らされ、全員が無事に戻ってきてから1ヵ月経過したとある日、私は同僚や部下の子を含めた十数人と一緒に自宅で羽を伸ばしていた。

 

 魔帝のシーヴァン(超潜艦)を念頭に置いた『アスターヴィⅠ型(誘導魔雷)』、通常の潜水艦に対応した『アスターヴィⅡ型』、通常の水上艦艇に対応した『アスターヴィⅢ型』、これらの性能試験を同時に終わらせる地獄を乗り越えた皆を、労うためである。

 

「お疲れ様です、ビアさん。他の皆さんも、ありがとうございます。頑張ってくれたおかげで、予定より早く終わらせる事が出来ました」

「当然でしょ! オロールさん、せっかくワーカホリックが治ってきたところなのに、再発させたら持病が悪化しちゃう!」

「確かに、グラ・バルカス帝国のせいで仕事量が倍増してめっちゃ大変だけど、お陰でこの人の下で働けてウチの技能が更に上がるし、見下してきた奴らを見返せて鼻高々だし、短期間で給料と評価も上がるしで万々歳! ありがたや、ありがたや~」

「流石に再発はさせない……って、ユリアさん!? 私は神様じゃないから止めて……!」

「「「あはははっ!!」」」

 

 私もそうだけど、ここ2週間は相当な激務で疲れているはずだ。しかし、皆はそれを一切感じさせない程に盛り上がっている。

 

 確かに、ビアさんや地方に里帰り中のカーム、警備をしてくれている陸軍の人、政府関係者の人以外は私の家に初訪問だ。

 多種多様な建築物が建ち並ぶカルトアルパス内でも、その様相や広さは中々に……いや、相当異質で目立っている。

 銃を持った陸軍兵士が門前に立っているのも相まって、中が気になるのも無理はない。

 

 それに、完全なプライベート空間に他人を招く行為は、招待者が招待客をどのような形であれ、相当信頼していると示したも同義である。自分で言うのもあれだけど、私に招かれて嬉しかったのもあるだろう。

 

 誤解を招かないために皆には事前に宣言してあるけど、私が家に招待した事のない人は全員、信頼していない訳ではない。ただ単に、自身を含めた各々の都合や気分が合致しなかっただけなのだ。

 

「にゃぉにゃ~」

「おっと? やたらウチに懐いてきますね、オロールさん家の猫ちゃん……おーよしよし。ご主人様に随分大切にされてるみたいで良かったね~」

「あらあら。ルーちゃん、ユリアさんを大分気に入ったみたいですね。そう言えば、貴女も猫ちゃん飼ってるんでしたよね」

「はい。ココナって名前で、ウチが帰宅した瞬間に飛び付いてくる、とっても可愛げのある子なんです」

「なるほど」

 

 なお、私の家には飼い猫のルーちゃんが居るが、グラ・バルカス帝国との戦争が始まった直後に部下としてやって来た、『カルカノス商会』令嬢の『ユリア・カルカノス』さん含め全員が猫好きか、好きでなくても平気な人ばかりなので問題はない。

 

 それにしても、分野違いの魔導技師になったと小耳に挟んだ時は当然驚いた訳だけど、超が付く程の努力家な面が幸いしたのか、彼女の能力向上ペースは凄まじい。

 

 元々の能力が高く、私がマニュアルを沢山作っておいたのもあるだろうけど、今ではもう頼りになる戦力だと言える。

 

(いやぁ……本当、ユリア様々だよ。それに、ビアや他の皆も居なかったらと思うと……)

 

 今後の戦争計画……グラ・バルカス本国と、レイフォルを含む植民地や同盟国間の通商破壊、ムー大陸からの全力追放戦、本土への大規模空爆と同時に行われる海軍・輸送艦艇への攻撃を決行するにあたり、発注される潜水艦および通常の魔導魚雷・爆雷はとんでもない量となっている。

 

 誘導魔雷に関しても、作戦決行時までに可能であれば100~200発欲しいと要望されていると言う、凄まじい状況に置かれているのだ。

 

 人材の工面を、ミリシアル政府がサポートしてくれていてすら忙しすぎる状況故に、優秀な人手は居れば居る程ありがたい。

 

 ちなみに、必要な金銭に関してもどえらい領域へ突入しているが、コア魔法が出てきた遺跡から発見された解説書、これに記された魔法が使える大魔導師の派遣確約の見返りに、日本政府が金銭的支援を約束してくれた事で、課題は解決済みとなっていた。

 

「良く考えたら、ここ最近の給料と評価アップも戦争のお陰なんですよね」

「そればかりではないかと思いますが、否定は出来ませんね。実際、仕事増えてますし」

「確かにな。何なら、ここ最近の急速な技術・経済発展も戦争がある故だろう」

「恩恵はある……けど、死に逝く人(戦争犠牲者)たちの事を考えたらウチは、早く終わってくれると嬉しいなって思います」

「そりゃそうだ。ここに居る全員、続いてくれなどとは微塵も思ってないさ」

「「「その通り!」」」

 

 しかし、ユリアさんが言うように本来死ぬべきではない、死ななくて済んだ人までその命を散らしてしまう、最大にして最悪なデメリットが戦争にはついて回る。

 

 今回のようにこちら側に原因がなく、相手から無情に仕掛けてきたパターンであるなら致し方ない。どう足掻こうとも、戦争は回避不可能なのだ。

 

 だが、それでもミリシアルの人々の命を糧にした技術や経済の発展など、私からすれば冗談抜かせと叫びたくもなる。

 勿論、ミリシアルの人でなければ犠牲にしても良いなんて事は思ってないし、仮に思ってたとしても行動には起こさない。

 

 この世界の人々にとって不倶戴天の敵であり、存在が災厄そのものな光翼人のような立ち居振る舞いをする、それ即ち人類の敵なのだ。

 

 万が一、悪意を持った誰かに命令されたとしても絶対にやらない。そんな事をやるくらいなら、自滅を選ぶ。

 

「オロールさん、ごめんなさい。元凶のウチが何言ってんだとか、だったら最初から振るなよと思うかもですけど、今は楽しみましょ? せっかくの息抜きに、これ以上は良くないって思いまして」

 

 なんて事を考えながら会話を交わしていると、無意識に私の顔が険しくなっていたらしい。

 

 謝罪と共に、申し訳なさそうにこちらを覗いてくる青い瞳……ユリアさんに声をかけられたため、取り敢えず今はこの件について考えるのを止める事にした。

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