光の申し子   作:松雨

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海中の暗殺者(前編)

 今現在、グラ・バルカス帝国領となっている元レイフォルにて、最大級の港町の『レイフォリア』。

 

 そこから西に63㎞程離れた、グラ・バルカス本国とレイフォリアを繋ぐ海路の下……水深120mの海域にて、ミリシアル帝国海軍『第零潜水艦隊』所属の魔導潜水艦7隻は、とある目的のために潜航していた。

 

 この海路を航行するグラ・バルカス本国やその同盟国、植民地を行き来する貨物船や輸送船や軍艦を沈め、敵を弱らせる通商破壊を実行するためである。

 

 彼らは本来、ミリシアル本国の海域を通る艦船を海中の敵より守ることを主任務としているが、現在は政府の指令により下された通商破壊任務を、実戦の経験を積む事も兼ねて任されていた。

 

 なお、ムー大陸にある『ニグラート連合』との国家間条約により、領海ギリギリの海域にある無人島群に急遽作られた『フィネル統合軍基地』を、戦争中の母港としている。

 

 ミリシアルの歴史の長さで考えた場合、潜水艦(海に潜る船)の概念すら生まれたのは最近だと言える。

 当然ながら、実際に建造・運用され始めてきたのも同様であり、また戦争中なのもあって、訓練期間はあまり長くない。

 

 しかし、そんな中でも第零潜水艦隊に所属する潜水艦乗りは、ミリシアル海軍元帥選りすぐりの超絶優秀な軍人だった。拙い面もあるものの、機器のサポートさえあれば戦闘もこなせるとの判定が下されている。

 

「周辺の状況は?」

魔音波発探知装置(魔法版ソナー)に敵潜水艦の反応はなし。水上艦艇の位置、および隻数も9隻より変化せず、通常の魔導魚雷はもとより誘導魔雷(アスターヴィⅢ型)の有効射程外ギリギリです」

「うむ、そうか……引き続き、警戒を怠るな」

 

 特に、旗艦『オーシャーン』の人族女性艦長『スメイズ・ウォタノーン』含めた50人は、海の申し子と呼ばれる程に潜水艦乗りとしての適性()、相当に高かったのだ。

 

 任務の都合上、長期間潜水艦の中と言う限定された狭い空間内、かつ娯楽が地上や水上艦艇での任務に比べて乏しい中、数十人単位で居るともなれば、精神的に堪えてしまう。

 

 水上艦艇での長期間航海ですら、その手の問題が発生してしまう事があるのだから、適性の高さは必須項目と言えるだろう。

 

 そこに加え、魔法帝国の超兵器であるシーヴァン(超巨大潜水艦)のような、発見後に撃ち合ったり誘導魚雷(魔雷)の被弾に耐えたりする力が、ミリシアルの魔導潜水艦にはまだない。

 

 今回の相手が、第二次世界大戦のアメリカ相当と日本政府が判断するグラ・バルカス帝国だとしても、ミリシアル政府が要望した結果搭載された誘導魔雷があるとしても、攻撃前に発見されるのはあまりよろしくないと断言出来る。

 

 ちなみに、現場海域とその近辺にはミリシアル政府より、艦艇や航空機などの種類を問わず、全ての国に向けて入る事のないように注意喚起が成されていた。

 

 場所や状況的にあり得ない話ではあるものの、万が一を考えて艦艇および航空機を通過させたい場合は、事前に通知を宛てて欲しいとも呼びかけられている。なお、作戦決行までにそのような通知は一切来てはいなかったが。

 

「スメイズ艦長。誘導魔雷、射程距離内に入りました。周辺に無関係の艦艇、巨大海洋生物の陰もありません。装置の不調も現状ないため、問題なく命中させられます」

 

 あまりにも変化に乏しく、艦内に設置されている無音の魔法時計のみが時の経過を伝える中、オーシャーンの魔法版ソナー(魔音波発探知装置)を含むあらゆる機器が、敵を有効射程(20㎞圏内)に捉えた事を知らせてくる。

 

 そして、驚異的な聴力と判断力を兼ね備えた、ソナー担当の軍人が正確無比に課せられた任務をこなし、得られた各種情報が射撃管制へと伝えられ、命令さえ下ればすぐさま発射する態勢が整う。

 

 これらのやり取りは、全てが立てる『音』を最小限に抑えられるように行われているものの、艦内は日本を参考に極限の静寂を保たれているため、問題なく全ての必要な人員に伝わっていた。

 

「そうか……よし。1隻に2本ずつ、我が艦は2隻4本発射だ」

「了解……艦首530mm誘導魔雷発射管4、誘導魔雷装填、発射用意」

「誘導魔雷装填4、発射用意」

 

 それからすぐ、スメイズ艦長より誘導魔雷の発射命令が下り、射撃に関わる要員により手早く装填が行われた後、艦首の発射管4つへ少しずつ注水が始まる。

 

 ほぼ同時刻、この注水音を味方の魔導潜水艦6隻の魔法版ソナーが捉えると、各々の艦内でも同様のやり取りが交わされ、搭載されている誘導魔雷の発射態勢が刻々と整っていく。

 

 狙った目標が重複しないようにするための装置、および対策に関してもしっかり成されてはいるが、魔帝や日本よりはどうしても劣っていた。

 

 ちなみに、魔導潜水艦への搭載数は若干多めにしていて、なおかつ1隻につき2つを放っているのが、第零潜水艦隊の対策である。

 

「……行ったか」

「はい、行きましたね」

 

 そうして注水が終わると、発射管前方の扉が開いてから数秒後、魔法により圧縮された空気により4発の誘導魔雷が押し出され、同時に内部に仕込まれた装置が起動、艦艇の発する音を頼りに向かっていった。

 

 態勢の整った魔導潜水艦からも順次放たれていき、最終的にはその数を18発へと増やしていく事となる。

 

「さてと、手筈通りに行くぞ」

「了解しました」

 

 なお、しっかり目標に当たってくれるかどうかを確認するためにすぐに撤退せず、少し距離を放して場所を変えた上で、第零潜水艦隊は待機し続けると事前に決められていた。

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