光の申し子   作:松雨

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海中の暗殺者(後編)

「誘導魔雷18発全弾命中。目標艦艇、全て撃沈に成功しました」

「うむ。第零潜水艦隊の初戦果としては上々だな」

 

 通商破壊任務を開始してからしばらく経過した頃、ミリシアル海軍第零潜水艦隊7隻は搭載していた誘導魔雷(アスターヴィⅢ型)を放ち、航行していたグラ・バルカス帝国艦艇9隻の撃沈の瞬間を見届ける事に成功していた。

 

 勿論、魔音波発探知装置とモニター越しではあり、なおかつ魔帝のシーヴァン(超潜艦)のように、綺麗な色つき映像では見れてはいない。

 

 だが、放った18発の誘導魔雷は何の誤作動も起こすことはなく、想定通りの性能を発揮してくれた。これだけでも十分な戦果と言えよう。

 

 潜水艦の概念を広く浸透させた、カルトアルパス魔導学院の魔導技師オロール率いる一派肝いりの兵器、これが効果覿面と分かったのだから。

 

 そうすれば、ミリシアル政府も更に予算をカルトアルパス魔導学院、潜水艦関連技術への投資へと回すようになる。

 

 結果、潤沢な予算に優れた技術者の力が加わることにより、より一層生産性と性能面が向上していき、現場に出る自分たちが戦死する可能性が低下していく。

 

 で、そうなると神聖ミリシアル帝国に住まう一般人に、理不尽な危害が及ぶ可能性も低下していき、笑顔の数を減らさずに済む訳である。

 

 だからこそ、スメイズ艦長の乗るオーシャーン(魔導潜水艦)の乗員含め、愛国心の高い第零潜水艦隊全員は声を上げずとも、心の中では満面の笑みを浮かべているのだ。

 

「しかしだ。あの命中精度に破壊力、グラ・バルカス艦艇の誘導兵器に対する防御兵装の貧弱さ……いや、皆無か。ともなれば、1隻につき1発で十分そうだと私は思うが、どうだ?」

「スメイズ艦長の言う通りかと。誤作動などもありませんでしたし、ミスリル改級の相手なら分かりませんが、シルバー改級以下の軍艦であれば尚更です」

「そうか。ならば、今後の戦闘に活かすとしよう。まだ余裕はあるな?」

「はい、あります。楽観的に見れば40隻は大破撃沈させる事が出来るでしょう。ただし、レイフォリアの状況が不明ですし、楽観的に考えている都合上、10~14隻辺りを想定していた方がよろしいかと」

「なるほど……了解した。まあ、何であれ頑張るとしようか。出来る限りだが」

 

 しかし、航行していた9隻を全て沈めただけで、第零潜水艦隊の課せられた通商破壊任務は終わらない。

 

 兵装の残数や航続距離、水や食糧などの量、乗員の精神状態がフィネル統合軍基地へ無事に帰れる基準を下回るギリギリまで、可能な限り戦い続ける事が求められているからだ。

 

 勿論、可能か不可能かは別にしても、レイフォリア港停泊中ないし本国へ航行中のグラ・バルカス帝国の艦艇を全滅させれば、その時点で帰還が認められる。

 

 なお、7隻の潜水艦に搭載出来る武装の数はたかが知れているし、グラ・バルカス帝国は技術力はともかく物量に関しては目を見張るものがあった。

 

 数々の戦闘を経て大きく消耗している点、レイフォルが本国の防衛などのために必要不可欠な場所である点を考慮に入れたとしても、レイフォリア港とその周辺にある海軍基地には、戦艦や空母を含めて数十隻単位存在している。

 

 ミリシアルが艦隊を差し向けて対峙するならまだしも、物理的に第零潜水艦隊が沈められる艦艇には限界があるのだ。

 

 そのため潜水艦に拘るのであれば、魔帝の超潜艦シーヴァンを1隻この海域に向かわせる。

 

 もしくは、ミリシアルが現状保有する全ての潜水艦に、最新鋭の誘導魔雷を搭載した上で向かわせなければ、第二次世界大戦レベルとは言え、軍艦数十隻を全滅させる事は不可能である。

 

 なので、第零潜水艦隊は搭載している誘導魔雷を撃ちきり、安全第一を基本として無誘導の魔導魚雷も同様に全て撃ちきり、フィネル統合軍基地に1隻も欠けずに帰還する事が任務成功の条件となるのだ。

 

「……艦長、新たに15㎞前方に5隻の反応を確認。音紋は先の戦闘にて撃沈した艦艇と同型艦です」

「援軍要請でもしたのか? それとも第2陣が来たのか……ともかく、全て沈めろ。少し前の戦いでは1隻に2発だったが、今回は1隻につき1発だ。我が艦は中央の船を狙うぞ」

「了解しました……艦首530mm誘導魔雷発射管1、誘導魔雷装填。目標、15㎞前方の艦隊中央の艦艇」

 

 そんなこんなで、ほぼ最大深度を維持しながら航行を続ける事3時間半、オーシャーンの魔法版ソナーが再びグラ・バルカスの艦艇を捉えたため、即座に残っている誘導魔雷の発射準備に入る。

 

 すると、艦隊後方2隻以外の魔導潜水艦にて1度目の戦闘時とほぼ同様の流れで準備が進められ、かなりの早さで準備が整う。

 

 多少ではあるが、1度目の経験がスメイズ艦長を含む乗員の心の枷を取り払い、手際を良くする手助けとなったためである。

 

「よし、そろそろだな……誘導魔雷、発射」

「了解……誘導魔雷1、発射」

 

 そうして、周辺海域の確認も終えて発射態勢が全艦で整った事が確認された瞬間、オーシャーンを皮切りに合計5発の誘導魔雷が放たれ、目標を食い破ろうと突き進んでいく。

 

 無論、万が一を避けるために第零潜水艦隊は同時に進路を変更、水中での最高速度を出してその場を少しだけ離れる。

 

「破砕音を探知。誘導魔雷5発全弾命中、および全艦撃沈が確認されました」

「……凄まじいな。やはり1発で十分だったか」

「そうですね、艦長。しかし、万が一はないとは限りません」

「確かに、違いない」

 

 第零潜水艦隊の面々が全員、息を潜めて待ち続けていたその刹那、魔法版ソナーが誘導魔雷の命中と目標艦艇の撃沈を捉える。1隻につき1発でも、命中しさえすればその時点で勝負が決まる事が確実となった瞬間であった。

 

 ちなみに、この時点で搭載されていた誘導魔雷の残数は合計で11発となっている。余裕ではないが、それなりの数が残っていた。

 

「さてと、レイフォリア港へ向かうぞ。ここから先は危険度が増してくるから、一応覚悟はしておけ」

「ええ。死ぬのは嫌ですが軍隊に入ったのは私。そうである以上、覚悟は出来ていますから」

 

 それ故に、緊張感が多少増しはしたものの、レイフォリア港へと向かう事に強い抵抗感を覚える者はおらず、士気が低下するといった事も一切なかった。

 

 結果、途中で危ない場面はあったものの、およそ半日続いた戦闘と言う名の一方的蹂躙により、第零潜水艦隊は合計で30隻ものグラ・バルカス帝国の艦艇を沈める事に成功するのであった。

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