光の申し子   作:松雨

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魔導技師の決意

「だから言ったでしょ? そうやって無理をし続けると、いずれそうなるって」

「……」

 

 体調不良からくる頭痛を感じ取り、学院長に断りを入れ仕事を切り上げた私は帰宅した後、いつもサポートしてくれる(家事手伝い兼カウンセラーの)政府所属の女性『カーム』からキツい説教を受けていた。

 

 理由は言わずもがな、最近の私が周りからの忠言をスルーしてあまり休まず、無理をしていたが故の体調不良で帰宅してきたからである。

 

 確かに、防空を念頭に置いた艦船(マラカイト級)や最新防空装備の製造、古代発掘兵器のリバースエンジニアリングに忙しく、周りの助けを存分に借りていたものの、しっかりとした休みが取れない時も度々あった。

 

 加えて、魔帝の遺跡から出てきた物品や書物などの助けもあり、劣化版だが記念すべき初の魔導潜水艦『シーハイド』や、各種対潜装備の製造にも手を出し始めていた。

 

 当然、普通の魔導技師でも厳しい仕事量を病気持ちの私がこなせば、最新の魔導医学や優れた才能を持つ彼女を含めた人々の補助があれど、遅かれ早かれこうなるのは自明の理だろう。

 

 服薬指導は守っていたけれど、この様では怒られるのも当然の流れと言える。甘んじて受け入れなければならない。

 

「重要な事だからもう1度言うわ。昔と比べて落ち着いてる傾向があるけど、貴女は『魔力流急転症』なの。他にも色々あるんだから、どれだけ忙しくても家に帰ってきて、休息を取らなきゃ駄目よ。この()も悲しむし」

「ごめんなさい、反省してます。今後は休息を沢山取るようにします」

「約束だからね。さて、早めのおやつにしましょうか」

「うん、分かった」

 

 しかし、言い訳になるので口には出さないが、今に至るまで無理をしていたのは決して我欲からではない。

 情報局の人や世界を渡り歩く商人などと言った人、レイフォル近郊から逃げてきた人々からもたらされる、グラ・バルカス帝国の数々の所業を聞いてからずっと、()()()()()()()()()()から無理をした訳だ。

 

(ある意味では我欲……なのかな?)

 

 百歩譲って、下劣なパガンダ王国軍を圧倒的な武力と技術力の差で蹂躙し、滅ぼした件については理解しよう。どこの国だって、外交交渉に出向いた皇族を処刑されれば激怒するだろうし。

 

 ただ、それから戦争を仕掛けて滅ぼし植民地化したレイフォル近辺での、全員でないにしろ人を人とは思わない扱いをしている件については、決して擁護出来るものではなかった。

 

 しかも、かの国はこの国(ミリシアル)を含めた全世界を、支配下におこうとしているらしい。

 つまり、大好きなこの国に暮らす人々が、老若男女問わず小さかった頃の私と同等かそれ以上の目に遭わされるかも知れないのだ。全く以て、冗談ではない。

 

 そして、自分で言うのは猛烈に恥ずかしいけど、今の私は努力と生まれもった天性の能力のお陰で、とても優秀な魔導師かつ技術者としてここに居る事が出来ていた。

 

 だから、私は当然の責務と言わんばかりにその力と知識を全力で活用、自分のみならずこの国の人々を守る助けになるため、常々頑張っている。

 

「ありがとう。毎日が平和で楽しいのも、貴女みたいな人々が頑張ってくれているお陰。カルトアルパスの皆も、同じ思いだと思うわ」

「カーム……」

「でもね。自分の身を削ってまで皆を想い、守ろうと努力してくれているのは、()()()()()()()()()()()。分かってるとは思うけど、オロールも沢山の人に慕われてる訳。勿論、私もその内の1人だから」

「……うん」

 

 すると、そんな私の心内を察してか、食事の手を止めたカームから思わず涙ぐむ程に嬉しい一言を贈られた。

 と同時に、ずっと纏わりついていた過剰な恐怖が紐をほどかれるかの如く消えていき、今後はもっと自分の身体を労り、休息をしっかり取ろうとの決意も固まる。

 

 とは言え、休息中に何をしたら良いのかが正直分からない。寝てるだけは論外だし、猫だってずっと構われるのは嫌だろう。

 それならばと本を読もうにも、家には魔導書や軍事関係の書物以外が殆んどなかった。

 

 今日はもう、ひとまず家から出ずに食事後は猫のお世話をしてから寝るとして、明日以降は取り敢えず適当に店でも回り、美味しい料理を味わったり新しい服を買って着てみたりでもしようか。

 

「それとね、新型の魔導戦艦・空母は同じくテスト中、天の浮舟もエンジンと武装を改良した型がもうすぐ出るって」

「そうなの? まあ、ルーンポリスとルーンズヴァレッタ魔導学院だからなぁ……1位と2位だし、優秀だもんね。じゃあ、第零式魔導艦隊ももうすぐ更新かな?」

「ええ、恐らくね。それと、オロールのところのマラカイト級防空巡洋艦も、正式に採用が決まるそうよ」

「なるほど。責任超重大だし、頑張らなきゃ……あっ。勿論、休息はちゃんと取るから。この様子なら、1週間くらいかな?」

 

 そんな感じで話の流れを変えた後は、カームが更に私を安心させようとして振ってきた軍事関係の話や、他人から見たら下らない日常的な会話も含め、楽しげに大笑いしながらこの一時を過ごした。

 

 他所にバレては恥ずかしい、ないしまずい会話をプライベートな自宅で、かつ大声でしても心配ないような対策はとっくの昔にバッチリ済ませている。

 

 学院と政府から支給された魔導通信装置以外の魔波を内外から遮断する多重結界、内部からの音漏れを防ぐ結界、屋根に取り付けた周囲360度を撮影可能な特殊魔導カメラ、最新式の家や窓鍵、その他私の魔法知識を総動員した複数の防犯・防謀対策などである。

 

 当然、頭がおかしいレベルでの初期費用がかかったけど、今まで貯め込み続けていたお陰で何とかなった。ちなみに、維持費込みでも生活には支障をきたしていない。

 

 なお、この間用事があって我が家を訪れた政府の人にはドン引きされたが、その事については考えないようにしよう。

 

「それじゃ、早いけどお休み。カームは今日泊まってく? 2階の部屋空いてるけど」

「ううん、一通り家事が済んだら帰るわ。まだ役所での仕事が残ってるから」

 

 そうして、私では明らかに作れない美味しさのお菓子を堪能した後、襲い来る眠気と弱まった頭痛をこれ以上悪化させないため、寝室へと向かった。

本作独自の種族に関しての質問

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