光の申し子   作:松雨

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怒りの鉄槌

 エルペシオ5の編隊12機による敵迎撃機の撃墜、ジグラント5の編隊10機の先制攻撃と空爆により、死に体と化していた統合基地のラルス・フィルマイナ。

 

 ムーの攻略の総本山としての役割はもはや果たせず、外部との通信設備や対空陣地も崩壊、海軍と空軍の残存兵器や人員や設備に至っては、ないに等しいと言い表せる状態となっていた。

 

 各種食糧や医療品倉庫などへの損害も凄まじく、6割~7割が火災などにより実質的に消失している。

 

 しかし、空対地誘導魔光弾(グランドⅠ型)や魔導爆弾の攻撃は、最新鋭技術の助けもあって正確無比ではあったが、物量が完璧ではなかった。

 

 統合基地として持たされた機能は死んだも同然ではあるものの、現時点で()()()()()が完全に死んだのかと問われれば、そうではないと言うしかない。

 

 課された任務が統合基地を更地にする事であるのも相まり、誰が見ても()()()()()()判定を下せるまで、ミリシアル側は攻撃の手を緩める訳にはいかないのだ。

 

「水と土属性魔力安定度数、魔力回路、魔力供給共に異常なし! 本機のスターヴェール(星の衣)、順調に行けば投下ポイント到達までに展開可能!」

「それならば良し。他の機体のシステムはどんな感じなのだ? よもや、不具合が発生しているのではなかろうな?」

「同様に問題なしです、ノーシャ様」

「ならば良し! このまま向かい、大切な友好国と我が国の不倶戴天の敵、グラ・バルカスの愚か者共を滅せよ!」

「「「はいっ!!」」」

 

 だからこそ、ジグラント5の編隊12機よりバトンを渡された、超大型戦略魔導爆撃機『ヴォルケーノ』10機の編隊は、レイフォリア沖40㎞上空2000mで最後の仕上げの準備に慌ただしく入っていたのだ。

 

 彼ら彼女らのやる事は、対空能力のほぼ消失したラルス・フィルマイナ上空に到達したら、ひたすら搭載していた爆弾を落として基地を破壊するだけである。

 

 ただし、その中にはミリシアル史上最高クラスの破壊力を誇る、以前は古代兵器のパル・キマイラにしか搭載出来なかった超大型の魔導爆弾、ジビルも混じっていた。

 

 コア魔法には圧倒的に劣れど、あまりにも高過ぎる破壊力故に投下時の高度が低過ぎると、その投下した航空機ごと破滅してしまう程。

 

 なので、万が一低高度でジビル混じりの爆撃を行う際の対策として、展開にかなり時間のかかる高負担な高出力装甲強化・対爆防御システム……通称、『スターヴェール(星の衣)』を備えている。

 

 重要ではありながら、比較的難易度の低い任務に軍人たちがここまで慌ただしくなるのも、このシステムの展開準備が非常にシビアであるからとの理由があったのだ。

 

 勿論、一定程度の訓練と正確無比な分厚いマニュアルの存在があるからこそ、慌ただしい程度で済んでいるのだけども。

 

「スターヴェール、本機を含めた全ての機体にて展開完了! 不具合などの発生やその兆候も見られません!」

「うむ、最も望ましい展開じゃな! 敵の迎撃らしき反応もなし、このままジビル投下の用意を整えつつ、敵陸軍エリアの方へ向かうぞ!」

「はい! ところでノーシャ様、投下高度は如何なさいますか?」

「予定通り、850mにせよ! 問題なく展開出来ておるのなら、爆炎と爆風のダメージは星の衣で抑えきれるはずじゃ!」

「了解しました!」

 

 巡航速度(834㎞/h)で航行しつつ、統合基地(ラルス・フィルマイナ)との距離が10㎞となったタイミング、10機のヴォルケーノ全てで星の衣の展開が完了した。

 

 魔力の流れと、機首より発生している淡い黄色と水色の光の粒子が機体を包み込んで守り、通った空域に輝く光の軌跡を残すその光景は、装置が問題なく稼働している証である。

 

 ただし、その瞬間より凄まじい量の魔力が使われだした事の証でもあるため、出来る限り早めにジビルを投下し終えるために、乗員たちは準備に勤しむ。

 

「ジビル投下ポイント、到達しました!」

「よし、各機! 各々1発ずつ投下せよ! 焦らず、落ち着いて行うのだ!」

 

 そして、死に体だった統合基地の中でも、比較的残存兵器や人員などが多かった陸軍エリアの上空へ、高度を下げつつ到達した10機のヴォルケーノは、戦車や装甲車が展開されていたところや何らかの倉庫らしき建物の屋根の上に、ジビルを投下していった。

 

 普段死にもの狂いで行った訓練の賜物か、それとも編隊の女性指揮官『ノーシャ・エルメラス』の投げ掛けた言葉が効いたからか、全くミスをする事なく訓練通りにここまで進む。

 

「ぐっ……! おぉ……何と言う破壊力……相変わらず、次元の違う兵器じゃな……でだ、星の衣の減衰率はどうなっている?」

「この機体はほぼ35%です! 報告によると、最も減衰率の高い機体で40%との事です! 機体そのものへのダメージ、および衝撃による不具合などはありません! 衝撃による怪我人は居るかもしれませんが」

「ふむ、少し低高度過ぎたようじゃな……皆の者、指揮官たる私の愚かな判断に付き合わさせる形になってしまい、誠に申し訳ない」

「大丈夫です、ノーシャ様! それを言うならば、意見に賛成した俺を含む面々にも責任はありますので! ちなみに、今の一撃で爆破範囲内の敵地上兵器などは瓦礫と化した模様です!」

「当然じゃな。魔帝の地上の超兵器ならまだしも、あ奴らの地上兵器程度で耐えられるはずなどないのだ」

「ですね。艦艇であれば、分かりませんけど」

「破壊対象が違うからな。我が国のミスリル改級戦艦と同等か、それに比肩するレベルなら耐えられるやもしれん。ジビルの仕組み故に、艦艇の乗員は別問題じゃが」

 

 そして、自由落下していく合計10発のジビルは滞りなく地面に着弾、キノコ雲が立ち昇る程の猛烈な爆風と爆炎と衝撃波を発生させ、周囲にある物を見境なく薙ぎ払い、爆散させていく。

 

 無論、それは影響範囲内を飛んでいる10機のヴォルケーノにも襲いかかるものの、膨大な量の魔力を媒体とした星の衣が減衰する代わりに、全て防ぎ切る事に成功する。

 

 なお、この空爆によって統合基地の陸軍エリアは瓦礫と鉄屑以外何も残さずに消滅、その近くにあった辛うじて残っていた司令部の建物も爆発の余波により、地下深くに作られた司令室以外は倒壊の憂き目にあった。

 

「さてと、まだまだ残っている部分はある。最後まで気を抜かず、任務へ取りかかるのだ!」

「了解しましたっ!!」

 

 で、陸軍エリアの消滅を確認した指揮官のノーシャは即座に指示を出し、編隊を5機ずつに分けて海軍エリアと空軍エリアと思われる場所に向かい、各々もう1発の投下を行う。

 

 ちなみに、星の衣の減衰率が彼女の想定を超えていたため、2発目のジビル投下からは、飛行高度を1350mまで上げると即座に決定された。

 

 言わずもがな、この決定に異を唱える乗員は誰もおらず、むしろ大手を振って歓迎する程だったが、この流れを鑑みれば当然と言えるだろう。

 

「……見事なまでに更地じゃな」

「ですね。これで、ほんの少しでもカルトアルパスで起きた例の事件の遺族の人たちの恨み、理不尽に侵略され命を奪われたムーの人々の恨み、晴らせたでしょうか?」

「うーむ……」

 

 こうして、1発目のジビルが投下されてからおおよそ1時間、ヴォルケーノ10機に搭載されていたジビルを含む、全ての爆弾が投下され終えた後、既に死に体だった統合基地は文字通り、全てが灰塵に帰す事となったのであった。

本作独自の種族に関しての質問

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