光の申し子   作:松雨

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今話初登場の独自艦艇の名称を変更しました。


魔帝に抗う盾

 技術の進歩。民間か軍事か、時に早いか遅いかの違いこそあれ、その歩みが完全に止まったり後退するのは、余程酷い妨害か破滅的事態が起きでもしない限り、恐らくどんな世界でも起こる事はない。

 

 エモール王国の空間の占いによって、遥か過去に聞くのも嫌になるレベルの暴虐の限りを尽くした、忌まわしき古の魔法帝国(ラヴァーナル帝国)が確実に復活すると決まっているこの世界では、殊更あり得ないだろう。

 

 この事実は、前まで全力で対立していたグラ・バルカス帝国にも数々の証拠と共に伝えられ、条約遵守の上で軍事力の増強と技術発展を皇帝陛下が、各所への根回しを済ませた上で促したと聞いた。

 

 あの圧倒的物量は言わずもがな、日本には劣れど高い科学技術力を誇るかの国は、来るべき魔帝との戦いで強力な味方になってくれると、そう考えたとの事。

 

 心情的にはまだあれだけど、皇帝陛下の考えは理解も納得も出来るものではあるから、反対意見を持つのは勿論の事、考えて述べようとも思わなかったけど。

 

「言葉にするだけなら簡単、されど実現させるとなればとてつもない難易度の偉業を、また1つ。まさか、本当に成功してしまうとは……君たちは、非常に素晴らしい!」

「ありがとうございます。戦争時の潤沢な予算と人員があったとは言え、尋常ではありませんでした」

 

 勿論、ミリシアルの魔導技師たちは、グラ・バルカスとの戦争が終わった後も次世代技術の研究開発を続けて成果を生み出し、カルトアルパス魔導学院でも大きな成果を生み出す事に成功している。

 

 1つ目は、防空に比重を置いたミリシアル独自の艦載武器システムである、『ガラヴァード』。魔帝の対空魔船や、日本のイージス艦が持つ艦載武器システムを大いに参考にし、技術的に再現不可能な一部をオミットした上で生み出されたものだ。

 

 91の目標を同時に探知・追跡し、同時に7の目標に対して艦艇の武装による自動対処が可能で、その際にありとあらゆる情報から脅威度を算出、その値が高い目標を優先して迎撃するシステムが組まれている。

 

 2つ目は、ガラヴァードによる迎撃が満足に行えない状況に陥った際、艦艇を敵の攻撃から保護するための魔導結界展開システムである、『マーナアイアス』。

 魔帝の艦艇に搭載されている魔導電磁結界の術式を解析し、ミリシアルでも使用出来るように一部オミットが施されたものだ。

 

 それでも、凄まじい魔力消費から展開可能な時間が1度に数秒程度と非常に短く、再度展開可能になるまでのインターバルがかなり長い上、結界展開中の攻撃が一切不可能になるが、瞬間装甲強化と合わせればかなりの防御力を発揮する。

 

「だろうな。にしても、1隻建造するだけでえげつない額……ミスリル改級戦艦も価格を聞いたら大概だったが、最新鋭技術とは言えこんなに跳ね上がるものなのか?」

「はい、そんなものですね。むしろ、現状これで極力抑えた方です」

「マジかよ。そりゃあ、1隻が限界になるわな……てか、結界がないにせよこの艦艇以上のイージス艦を12隻も建造・維持してる日本、化け物過ぎて笑えてくるわ」

「まあ、魔境な前世界でも列強扱いされるくらいだったみたいですし」

「ははっ。魔帝がそっちに行ったらどうなるんだろうな」

「伝承通りの振る舞いをした瞬間、負けるでしょうね。コア魔法なんて使おうものなら、それと同等の核兵器が全世界から数千~万単位で飛んできて、国ごと消滅するかもしれません」

「そこまで行くと哀れだな。こっちでも、そのくらいで終わってくれれば良いが……」

 

 3つ目は、前述の2つを含めた様々な兵装やシステムを、コスト度外視でこれでもかと詰め込み、1隻のカダリナン級対空魔船『カダリナン』を完成させた事。

 

 いずれは3隻体制を目指すとは決まっているものの、ミスリル改級戦艦が可愛く思える程の建造費と維持費から、現状はこの1隻のみでストップがかかった。

 

 代わりとして、日本の汎用護衛艦のような感じで機能を絞って建造費と維持費を大きく抑えた、魔光駆逐艦と魔光巡洋艦の建造計画が作られ、進められている。

 ちなみに、現状で完成しているのは魔光駆逐艦が2隻、魔光巡洋艦が1隻で、後は試験航行を行うのみだ。

 

 また、現状ミリシアルは技術的に未成熟であるため、総合的な戦闘能力は、結界込みでも日本で現状最新鋭だと言うイージス艦『まや』はもとより、魔帝の発掘古代兵器である対空魔船『ディアン』よりも、当然の事ながら下回ってはいる。

 

 しかし、以前のミリシアル艦艇と比べると、カダリナンは防空能力が大幅に上昇して他の戦闘能力も段違いで強くなり、文字通り次元が違う。

 

 このまま順当に進化し続けていけば、魔帝の復活までにかの国と同等の矛と盾を得て、暴虐の権化に対抗可能になるのだから、私も身体に気を付けつつ頑張っていかなければ。

 

「そう言えば、マグドラ諸島で日本の自衛隊とうちの第零魔導艦隊が、演習を行うって話がありますが……」

「可能なら、ここからはカダリナンを出したい。向こうが、先進技術試験艦を含めた最強の艦隊で来ると言うのに、こっちが旧式艦隊だと何か違うって思う者が半数を超えているんだ」

「3ヵ月後でしたよね。なら、カダリナンは出せますけど……日本、クルセイリース大聖王国との戦争に決着つけたんですね。先進技術試験艦が出てくるって事は」

「ああ。何でも、交流があるガハラ神国の巫女から、早期決着させねば想像を絶する地獄がやって来ると強い口調で助言され、全力で取りかかったらしい」

「なるほど、ガハラ神国が……」

 

 そんな感じで、心の中で決意を改めて固めていると、私の仕事場にやって来ていたミリシアル政府の役人さんから、日本の自衛隊との演習にてカダリナンを出したい旨を伝えられる。

 

 いつ復活するのかが不明な魔帝との大戦争に向け、技術的に最も近い両国で緊密な連携を取れるように、ミリシアル側から提案していたマグドラ諸島での軍事演習だ。話し合いによって、何もなければ1年に1~2度の頻度で行われると決められているとの事。

 

 現状は日本とミリシアルだけだが、各種調整などが済めば数年以内にグラ・バルカスやムーも加えた4ヵ国での演習に拡大し、最終的にはパーパルディアやエモールも加えた列強諸国での大演習とする予定らしい。

 

(……)

 

 ただでさえ、ミリシアルを超えている日本がわざわざ先進技術と銘打つ、想像すら出来ない超技術が多数搭載されているであろう艦艇をこの演習に向かわせるなんて、どれだけ本気なのかが良く分かる。

 

 それに、魔導と科学の違いこそあれ技術者の私にとっては、クルセイリース大聖王国との戦争にも使われたと言う、先進技術試験艦とやらがどんな艦艇なのか、正直とっても気になって仕方ない。戦争ではなく演習だから、尚更楽しみだ。

 

 無論、私は軍人ではないので現場で直接見る事は出来ず、撮影された映像を通して後日見る形にはなるけど。

 

「では、オロールさん。苦労をかけてすまないが、どうかよろしく頼む」

「はい、お任せ下さい」

 

 そんな事を考えながら、何もなければ3ヵ月後に行われるマグドラ諸島での演習に向けて、私は技術者として出来る事をしていこうと、そう思った。




科学の国の妖精塔(その1)から(その3)につきまして、文章の追加および改稿、設定の変更などがあります。気が向いた際で構いませんので、目を通して頂けると助かります。なお、今後の物語進行に影響はありません。

本作独自の種族に関しての質問

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