光の申し子   作:松雨

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過剰な戦力の行き先

 戦争に端を発したミリシアルの急激な技術力向上に伴い、陸海空軍の装備更新は、歴史上前例のない速さで行われた。

 勿論、まだ全てが次世代のものに更新された訳ではないが、旧世代と比べれば一気に30~40年進んでいる。

 

 そして、官民一体の協力体制により兵器などの増産や兵士の増員も行われ、軍事力強化により一層寄与する事となっている。

 これにより、世界最強の魔導大国として世界的地位を築いていたミリシアルは、元々高かったその影響力を更に強めていく。

 

 なお、それに付随したミリシアル8世の感謝談話が国営放送を通じて発表されると、内容が内容だったために、日本の今世界における地位も一気に向上していた。

 

 だが、それによって今まで主力だった多数の各種兵器や装備が一気に旧式と化し、改造しても国内で使う場面がそれ程多くないため、廃棄するにしろしないにしろ、費用が無駄にかかるだけの装備品が増えている問題が発生してしまう。

 

 戦争時ならともかく、平常時に軍関連の事柄に回される費用はどうしても少なくなってしまうため、いかにして無駄な損失を抑えつつ旧式兵器や装備品を処分するかが、現状ミリシアルの課題の1つだ。

 

 だからこそ、ミリシアルは正式に自国の旧式兵器や装備品の輸出、それらの扱い方などを教える魔導技師の派遣を解禁した。一応、魔帝に対抗するための技術力向上という、表向きの理由は用意されている。

 

「ほ、本当なのですか!? アーヴィス大使」

「ええ、本当です。先日、貴国に対する我が国の旧式兵器や各種装備品の輸出、各種技術教官の派遣が許可されました。勿論、ある程度の制限は付きますが」

 

 結果、第一文明圏の国々にのみならず、第三文明圏の国々の一部や列強パーパルディア皇国、パンドーラ大魔法公国への輸出が異例の早さで決定したのだ。

 

 無論、国交があり敵対していない事を大前提として、国交があっても希望をすれば無条件で輸出してもらえる訳ではない。

 付き合いが深いなどで、ミリシアルから見て総合的に信用に値すると判断された国家のみ、駐在大使を経由してのより細かな話し合いの場が持たれる。

 

 何がどのくらい欲しいのか、支払いはどうするのか、いつまでに納品すれば良いのかなど。

 

 とは言え、ムーや日本のように国力が高く豊かな列強国であればともかく、それ以下の大半の国々にとっては、特別に安い価格を提示されたとしても、航空機1機や艦艇1隻であれど高く厳しい。

 

 例え購入費用が工面出来ても、それらにかかる高い維持費は所有している限り、無限に発生してしまうから尚更だろう。

 技術支援を受けつつ、自国で何とか出来るレベルに到達するまでに、下手をすれば国家財政にヒビが入ってしまうかもしれないのだから。

 

「いえ、とんでもありません! 魔導の最先進国たるミリシアルの技術の一端を享受出来るだけでも、十分にありがたいです!」

「喜んで頂けたようで何よりです、カイオス首相。まあ、貴国を取り巻く状況的に、そうもなりますか」

「ええ。今のところは均衡を保っている感じではありますけれど……いやはや、難しいものでして」

「なるほど。しかし、安心してください。我が国の方でも、いざとなれば介入する準備を整えておりますので」

「おお、それは心強い。ですが、我々は貴国には及ばずとも列強国。可能な限り、自国で解決するつもりです」

 

 無論、購入を希望し認められた国々はその辺を承知しているし、実際に話し合い中のパーパルディア皇国に至っては、各国で最も多くの購入希望を出している。

 

 何故ならば、どういう訳か元々の技術力から見れば絶対にあり得ない優れた兵器、および物品をどこからか手に入れていた隣のリーム王国との関係が、今現在良くないからだ。

 

 しかし、判明している数の上ではそれ程多くなく、それを抜けばパーパルディア側が物量でも質でも上である事。

 加えて、パーパルディア側には秘密兵器ならぬ、妖精塔の亜種である城の出身で、皇帝ルディアスがつい最近までミリシアルや日本にすら存在そのものを秘匿していた、最後の切り札たる()()()()10人の存在があった事が、比較的冷静さを保てている理由だった。

 

「そうですか。確かに、他国に頼りきりでは自国の真の発展には寄与しませんからね」

「はい。だからこそ、皇国人の知識と知恵と力だけ……一応、先日陛下が公表なされた彼女たちも含めますが」

「ああ……確か、吸血鬼や悪魔でしたっけ? 日本人が名付けたとか何とか……」

「ええ。まさか、日本国が居た前世界で考えられていた空想種族の特徴が、そっくりそのまま当てはまるとは、陛下も彼女たちも想定外だったそうで」

「でしょうね。あれはまるで、実際彼らの前世界で過去に存在していたかのような情報量と質でしたし」

 

 なお、その種族は見た目だけはほぼ人間だが、当人の申し出から人間の常識に当てはめると、化け物としか言えなくなる。

 

 例えば、生身での高速飛行が可能かつ、例外なくその速度はオーバーロードを見慣れたルディアス本人はもとより、カイオス以下現政権の首脳陣が速いと認める程。

 

 保有魔力も常人のそれではなく、首脳陣への顔見せがてら行われた演習にて、原理不明の無詠唱高出力防御魔法でワイバーンの火炎弾を無傷で防ぎ、牽引式魔導砲の直撃によるダメージも、同様に防ぐ事が可能。

 

 屈強な軍人が束になっても意味を成さず、何なら地竜との綱引きにすら勝利可能な程の膂力を持つ。

 

 防御力も凄まじく、マスケット銃の弾程度であれば無防備で受けても無傷、それ以上に強力な武器や魔法などで傷を負っても短時間で自動再生、あくまで当人たちの自慢話ではあるものの、四肢欠損以上の大怪我ですら再生するという。

 

 その分、弱点や時間および天候による制限がいくつも存在しているらしいが、本人たちがあまり語ろうとはしないため、判明している内容は少ない。

 

 はずだったが、日本にてその種族の姿が公になるや否や有志による調査が行われ、その結果アニメやゲームなどに登場する『吸血鬼』や『悪魔』と性質がほぼ同一であるとすぐに判明、日本人経由で弱点など諸々の情報が出回ってしまう。

 

 なので、その10人は日本と日本人に対して要らぬ警戒を抱いてしまうが、今のところトラブルなどは発生していない。

 

「おっと……失礼。アーヴィス大使、話が大分脱線してしまいました。ひとまず、これにて会談は終了としましょう」

「いえ、私の方こそ夢中になってしまったので大丈夫です……では、本日はありがとうございました、カイオス首相。この件につきましては、事前に決められた案で進める事と致します」

 

 なお、途中で話し合いが脱線しながらも、ミリシアルとパーパルディアの話し合いはトントン拍子で進んでいき、近い内に各種旧式兵器や装備品がそれなりに多く輸出されると、そう決まったのだった。

本作独自の種族に関しての質問

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  • 多くしても問題ない
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