神聖ミリシアル帝国海軍の中でも、最高の練度を誇る軍人たちが配属され、最新鋭の装備がどこよりも優先的に宛がわれ、訓練は非常に厳しいものの花形部署として名高い、第零式魔導艦隊。
この艦隊へ配属されるだけでも海軍軍人にとってはとても名誉な事であり、艦隊司令官ともなれば強い尊敬の眼差しで海軍はもとより、陸軍や空軍からも一目置かれる存在となる。
無論、この艦隊はミリシアル本土を侵略しようとする相手に対して向けられる、言わば護国の盾。真っ先に、自分たちの命すらも賭してくれる存在なだけあり、一般人からも同様に尊敬されているのだ。
そして、数多の人々の協力の甲斐もあって完成した、ミリシアル初の自国産対空魔船『カダリナン』を含め、次世代の艦艇5隻は当然の如く、最初から第零式魔導艦隊所属と決まっていた。
ちなみに今後、順次完成していく次世代艦艇に関しては、既に存在している戦艦や空母の近代化改装計画もあり、1隻の対潜魔船以外は他の艦隊へと振り分けられる。
「おお、貴殿方が日本国の……私は第零式魔導艦隊の司令官、リナン・カルカノスと申します。この演習期間で、是非とも交流を深められたら嬉しいです」
「日本国海上自衛隊、先進護衛隊群司令官の
「そうですか。ふふ、それは良かった」
そんな、ミリシアルの顔とも言うべき存在である彼らは今現在、マグドラ群島最大の有人島『フォグ』の『フォグ離島防衛海軍基地』に停泊している。
かねてより話が持ち上がっていた、日本の海上自衛隊との演習を行うためだ。
内容としては、敵性国家が日本やミリシアル艦隊に対して、いきなり多数の航空戦力を擁した艦隊で攻撃してきたため、それを両国が協力して防ぐと言うもの。
日本からは敵の戦闘機を模した標的機、最新の演習用ドローンなどが大量に、ミリシアルからは旧式戦艦や初期の空母を含む諸事情から輸出すら不可能な艦艇と、実際に砲弾や誘導弾などを撃ち込む標的も用意されていて、かなり本気である事が窺えた。
加えて、この演習は数日かけて行われるくらいの規模になるものと決まっているので、用意された物資の数は相当多い。日本はともかく、ミリシアルにとっては用意が相応に難しいものもあったが、政府が強く支援した事もあって、何とかなっている。
暴虐の権化たる魔帝はまだ居ないが、エモールの占いでも復活時期が読み取れない以上、それが今年中に起きない保証は当然ない。
加えて、この世界では最近あちこちで規模の大小に関わらず、戦争が発生している、もしくは発生していた。圏外文明国と言う、文明圏の国々にとって未知の存在も一部表舞台に出て来ているため、更に世界が混沌とする可能性も高くなってしまっている。
故に、ミリシアルはグラ・バルカスとの戦争が終わろうとも危機感を抱き、世界の安定のみならず自分を含む自国民の安寧のために、同様の危機感を抱いていた日本に演習を呼び掛けたのだから。
「それにしても、イージスシステムと同等の機能を持つ、ミリシアル独自の武器システムの開発・実用化と、それを搭載した艦艇建造。貴国の技術者は、さぞかし苦労なされた事でしょう」
「ええ、そう聞き及んでおります。日本と魔帝と言う素晴らしい参考資料があるにしても、技術的には飛び級していたので……」
「確かに、凄まじい発展速度ですからね。我が国が支援しているムーもそうですが、ミリシアルも基本的な技術に対する理解が素晴らしいと、自分は思います」
「ありがとうございます。ただまあ、それはここ30年間の話であり、それ以前は実に酷い有り様だったみたいですけど」
そして、今回演習を行うミリシアルの第零式魔導艦隊には、次世代技術が使われた艦艇があるが、日本の先進護衛隊群にもクルセイリース大聖王国との戦争でも使われた、次世代技術の使われた先進技術試験艦と呼ばれる艦艇が存在している。
性能向上版の対空ミサイル、対空目標にも対応可能な対艦ミサイルなども勿論なのだが、1番目を引くのは40㎜の対空レールガン、誘導弾迎撃用の近距離対空レーザー砲が各々1基ずつ備わっている事だった。
司令官同士が挨拶と話し合いをする中で、日本のこの艦艇について簡単に聞いたミリシアル側は、口径などの違いこそあれ本来であればパルカオンに搭載されるような超兵器用兵装が、普通に搭載されている事に対して驚きを隠せていない。
無論、ミリシアルとしても兵器の解析は進めているものの、日本のレールガンとレーザー砲にもある問題に加え、不可視かつ複雑な魔導回路を正確に刻み込む技術が現状不足しているからだ。
もし、この3つの課題を解決出来たのであれば、保有している古代発掘兵器の修理が可能となり、損傷を今よりも恐れなくて済むどころか、パルカオンの自国での生産にまた1歩近づける。
それだけでなく、魔帝の超兵器に対抗するために計画中の、独自の超兵器建造計画も1歩進む。
故に、魔帝対策省主導で魔導技師たちが力を入れてはいるものの、難しさ以外に兵器の次世代化が重なった事も相まって、こちらはまだあまり進められてはいなかったが。
「さてと……稲葉さん。そろそろ時間が迫ってきておりますので、準備を始めましょう」
「確かにそうですね。もう少し、乗組員同士でも交流したいところではありますが、それは本日の演習が終わった後でも十分出来ますし」
「ははっ、確かにその通りです。では、また後程演習にて」
「ええ、後程会いましょう」
およそ15分もの間、司令官を含めた乗組員同士で顔合わせが行われ、それが終わった後は素早く艦艇内へと戻り、すぐさま演習が行えるように準備が始められるのであった。
本作独自の種族に関しての質問
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多くして欲しい
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多くしても問題ない
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これ以上は望まない
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作者にお任せ