光の申し子   作:松雨

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マグドラ群島大演習(後編)

「誘導弾の迎撃に成功したならば、今度はこっちから反撃開始! ウルティマⅠ型、発射準備開始せよ!」

『了解……復唱ー! ウルティマⅠ型、発射準備開始!』

 

 これが全てではないものの、日本の用意した37機の標的機と放たれた53発の演習仕様誘導弾、これらを全て余裕を以て迎撃に成功した海上自衛隊、及び第零式魔導艦隊はすぐに反撃の準備へと取りかかっていた。

 

 艦対艦誘導弾ないし艦対艦誘導魔光弾を放つ目標としては、演習支援の護衛艦4隻の前方に配置されている、廃艦予定のミリシアルの旧式艦艇14隻。

 

 周辺海域への影響から燃料などは全て抜き取られていて、当然ながら人員も配置されていないため回避行動などは取れず、海上で浮かんでいるだけとなっている。

 

 また、装甲強化なども当然不可能であるため、魔導艦艇特有の防御力の低さも相まって、戦艦であっても演習用の的としてはいささか不十分だ。未来に、魔帝の超兵器群と相対する事を想定した演習であるのなら、尚更だ。

 

 ただし、ミリシアル側は日本側にその事を既に伝えていたので、そう言う意味では問題などないが。

 

『稲葉司令! 敵艦隊、こちらの射程距離に入りました!』

『いよーし! ならば、新開発の25式艦対艦誘導弾のお披露目といこうか! 重複に注意しつつ、撃ちぃ方始めぇ!』

『了解! 目標、ミリシアル艦の狙わない敵戦艦及び空母、および他艦艇……撃ちぃ方始めぇ!!』

「うぉっ、流石に先手は日本国に譲ることになりましたか……リナン司令」

「そうだね……でも、こっちの誘導魔光弾ももう少しで射程に入る。魔導機械の補助があっても、気は抜かないで」

「勿論ですよ」

 

 そうして海上を悠々自適に進んでいく内に、先に標的艦を兵器の射程距離に収めたのは海上自衛隊で、放たれたのは先進技術試験艦にも搭載している、最新の艦対艦誘導弾だ。

 

 威力と妨害耐性が大きく上昇していて、ステルス能力や低空飛行能力も上昇している上に、空中目標にも誘導が可能な様に調整がなされている、防衛省肝いりの強力な切り札の1つ。

 

 クルセイリース大聖王国との戦争時に、40㎜対空レールガンと並び対パル・キマイラ戦で無類の強さを発揮、日本を無傷の勝利へと導いた立役者にもなっている。

 

 ちなみに、その戦いに関する通信や映像などの記録は日本政府により残され、ミリシアル政府へと提供された。

 

 なお、得られた戦果があまりにも凄過ぎたが故に、自国と日本さえ居れば魔帝戦を乗り切れるのではないかとの意見が、一部のミリシアル政府職員の間で出てしまう程。

 

 無論、技術面のみを見たならばともかく、その他の面も含めて見た場合だと現実的ではない事は理解しているので、世界全体で来るべき時に備えて動き続ける方針に変化はない。

 

「敵艦隊、全て140㎞圏内に収まりました!」

「やっとかぁ。目標、日本国の誘導弾の対象から外れた敵戦艦及び空母、残りは判断に任せるよ……ウルティマⅠ型、発射!!」

『了解……ウルティマⅠ型、発射ぁ!!』

 

 日本の護衛艦隊より最新式の対艦誘導弾が順次放たれ飛翔していく中、ミリシアルの第零式魔導艦隊も敵艦艇を射程距離に捉えると、すぐにリナン司令よりウルティマⅠ型の発射命令が下された。

 

 25式艦対艦誘導弾と違い、性能面では威力以外の全ての面で劣っていると言わざるを得ないが、印象的な飛翔時の様子とグラ・バルカス帝国との戦争にてミリシアルを大いに救った実績は、決して劣るものではない。

 

「むっ。敵艦艇(演習支援艦)より、誘導弾様のものが発射されました!」

「なるほど、こっちの対艦誘導魔光弾を撃ち落とす気だね。実戦だと当たり前だけど……さて、ウルティマⅠ型がどこまで通用するか、固唾を飲んで見守ろう」

「そうですね」

 

 そして、今日の演習にて発射予定のウルティマⅠ型を全て発射し終えると同時、演習支援の役割を担う護衛艦4隻から迎撃用の対空誘導弾が発射される。

 

 最新型の23式艦対空誘導弾を含め、迎撃に使用されるのは海上自衛隊にて実際に配備されている対空誘導弾であり、放つ護衛艦にイージス艦は1隻もないとは言え、レーダーなども最新型であるため防空能力は相応に高い。

 

『我が方の対艦誘導弾、一部敵対空砲火網に絡め取られるも順調に飛翔中! 想定よりも多数残っている模様!』

『うむ。上空を亜音速で飛ぶミリシアルの誘導魔光弾に寄せられているからだろうが……何だ、あの爆発の破壊力は。尋常ではないぞ』

『ミスリル改級……日本で言うところの大和型戦艦以下の艦艇であれば、直撃すれば例外なく一撃で沈む威力らしいです。魔帝の海上要塞対策を念頭に置いていると』

『あの威力が必要になる程の相手か……全く、魔導の極致は脅威でしかないな』

 

 故に、反撃として放たれた25式艦対艦誘導弾やウルティマⅠ型は、敵役の護衛艦による迎撃網に捉えられ、その数を徐々に減らしていく。

 

 迎撃難易度の低い、ミリシアルのウルティマⅠ型の方が損耗率の上昇速度も早いが、爆発の破壊力の高さから近くを飛んでいた迎撃用の対空誘導弾に、予期せぬ破損をもたらすなどの偶然も発生させ、日本側を大いに驚かせている。

 

「くっ……やはり、日本国の防空能力は汎用護衛艦でも凄いなぁ。もう5割くらい撃墜されてるよ」

「現状のウルティマⅠ型だと、日本にとっては迎撃難度が高くないですからね。まあ、その辺の改良は本国の優秀な魔導技師であれば、数年もすればどうにかしてくれるでしょう」

「だね。将来、魔帝のパルカオンを相手にするなら尚更だよ」

 

 なお、日本の25式艦対艦誘導弾が標的艦まで残り30㎞を切ったタイミングで、ミリシアルの放ったウルティマⅠ型は発射した数の約半分が撃墜されていた。

 

 しかし、その代わりとして日本の25式艦対艦誘導弾は数をあまり減らすことなく、順調に目標へと飛翔していっている。

 特段狙った訳ではないが、ウルティマⅠ型が日本のそれと比べ、レーダー的に良くも悪くも目立っている事が理由だ。

 

 威力はともかくより一層精度の高い、日本の25式艦対艦誘導弾の隠れ蓑となり、対象に痛打を与えやすくなると言う意味では決して悪くはないものの、やはり望ましい状況とは言えない。

 

『敵対空砲火、更に激しさを増します! しかし、命中まで後5、4、3、2、1……! 標的艦艇、大炎上! かなりのダメージを与えられました!』

『うむ、結果は上々か……ミリシアル曰く、旧式の魔導艦艇は素の防御の脆さが最新型と比べればより顕著らしいが』

 

 そうして、ミリシアルのウルティマⅠ型が対空砲火網に引っ掛かり撃墜されていく中、それをすり抜けていった25式艦対艦誘導弾が、標的艦艇の急所に次々と正確に突き刺さり、強烈な爆発を引き起こしていく。

 

 既存の誘導弾よりも大型化、かつ高威力化しているそれは旧式とは言えど、命中した戦艦や空母に1発または2発で致命傷を与え、撃沈に至らせる成果をもたらした。

 

「うっわぁ、何あの命中寸前の変態軌道。狙いどころもこの上ない程正確……」

「破壊力も凄かったですよね。流石は日本国、科学の極致と言えるでしょう」

「魔帝もきっと、こんな国が自分たちを待ち構えているなんて思わない。油断は禁物だけど、頼もしい限りだよ」

 

 魔導電磁レーダーなどを通し、この成果を含めた日本の技術を見ていたミリシアル側は、ただただ感心するしか出来ていない。

 

『旧式なんですよね。だったら、そんなものだと自分は思い……っ!? ミリシアルの誘導魔光弾、標的艦艇に着弾……凄まじい威力です!』

『案の定轟沈……これ、多少命中箇所が逸れたくらいだと、普通に沈みそうじゃないか?』

『装甲の薄い艦艇であればその可能性もあるでしょう。厚い艦艇も、決して油断は出来ないでしょうが』

『だよな……政府と防衛省に、誘導弾の更なる高威力化を陳情しておこう』

 

 ただし、ミリシアルのウルティマⅠ型の破滅的な破壊力を見ていた日本側も、魔導技術の優秀さに負けず劣らず衝撃を受けていた。

 

 それと同時に、ミリシアル他この世界の国家の殆んどが恐れおののく古の魔法帝国は、もしかしたら想定を遥かに超える脅威なのかもしれない。

 

 場合によっては、軍事技術への予算の割り当てを今以上に多くしなければいけないとの、そんな考えを巡らせるくらいには。

 

「最後のウルティマⅠ型、問題なく命中! 用意した標的艦は、ほぼ全て海に沈みました!」

「ふぅ……」

 

 こうして、最後のウルティマⅠ型が命中し標的艦を沈めたことにより、実戦さながらの様相を呈した1日目の海上本格演習は、トラブルなどもなく無事に終わったのであった。




ここまで読んでいただき、ありがとうございます。もし可能であれば、評価や感想の方をよろしくお願いいたします。

既にしてくださっている方々には、心より感謝いたします。

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