第三文明圏にて、列強たるパーパルディア皇国に次ぐ国力と軍事力を誇るとされる、
パーパルディアに次ぐとは言ったが、文明国と文明圏外国のそれと同等以上に力の差は大きく、まともにやり合っても勝つ事は不可能。
有数の経済都市であるデュロと、その近郊の港町や町村で構成される『デュロ州』のみを相手にする想定ですら、国力を全力投入して何とか戦いにするのが限度なのだ。
加えて、現在のパーパルディアは日本やミリシアルから、自国の体制変換に即した支援を受けている最中。その過程で国が成長していっているため、時が立てば経つほど差は開いていくばかりである。
「おぉ……これは何とも、凄まじい機体ですなぁ」
「そうでしょう、バンクス様。これで、パーパルディアのオーバーロードはもとより、ミリシアルが提供したというエルペシオ4が相手でも、怖くはありませんよ。ただし、油断は禁物ですがね」
「ははっ、実に頼もしい。しかし、どうしてそんなものを我々に提供してくれるのだ? 南方連合の使者よ」
「貴国に第三文明圏で力を持ってもらえると、我々にとって都合が良いのですよ。身も蓋もない言い方をするなら、貴国に利用価値があるからです」
「むぅ……何でも正直に言えば良いというものではないぞ」
「ほほ。だからこそ、貴国も我々を思う存分利用すれば良いのです。お互いにお互いを利用し合う……とても素晴らしい関係ではありませんか」
しかし、ある時期を境に突如として現れた南方連合を名乗る、本土の場所が不明の魔導強国が、何故か
現在のミリシアルと、ほぼ同等の国力と技術力を誇るという南方連合からの支援は、私掠船云々や領土・資源問題などでパーパルディアとの関係が絶賛悪化中のリーム王国にとっては、まさに渡りに船。
今まで1度も国の名前を聞いたことがなかったり、使者の格好や振る舞いも怪しさ満点な上、他にもいくつかの疑問点が存在している事を考慮に入れても、存分に利用価値があるとの判断に至ったのである。
故に、リーム王国は非常に強気であり、現在行われているパーパルディアとの最終交渉が決裂した場合、しっかりと場を整えた後に戦争を
王国政府上層部も概ねその方針に賛成しているものの、リームの導き手と呼ばれる宰相だけは難色を示しているため、今のところは戦争寸前でこらえている状態である。
なお、その宰相の存在は、南方連合を名乗る国の使者にとっても目の上のたんこぶ。幾度も水面下で命を狙っていたが、宰相に常に付き従う強力な星の妖精の加護により、その全てがひっそりと失敗に終わっていた。
「全く……まあ良い。それよりも、あの機体……『フィンドム』だったか? 魔石資源は何とかなるが、機体に使う燃料に加工する技術や魔導機械、メンテナンス要員、操縦技術を持つ者、我が国にはないぞ」
「ご心配なさらず。今しがた、それらの手配も済ませております。遅くとも3週間以内には、仮装魔導艦や航空機などで第1陣が来るでしょう。周辺諸国に怪しまれないようにこちらも努力はしますが、万が一の際はよろしく頼みますよ?」
「無論だ。そのくらいはしよう」
そのため、一旦水面下での宰相の暗殺は後回しにしておき、リーム国王バンクスとの各種交渉に集中する事を、南方連合は決定している。
「ああ、そうそう。これらの支援――」
「南方連合の使者殿。申し訳ないが、ヒルキガ地下大空洞の共同遺跡調査の話でしたら、私としてはご遠慮頂きたいと再三申し上げているはずです」
「……宰相様」
「無論、貴国の支援はこの上なくありがたく、感謝している事に代わりはありません。ですが……」
「宰相、貴様――」
「国王陛下。お言葉ですが、貴方もこの子の『星占い』や『星読み』に、幾度となく助けられているはずです。その効果を、疑っておられるのでしょうか?」
「ぐっ……それは……」
しかし、 今日の交渉の場にも同席している宰相と、彼を守るようにして同行している星の妖精が悉く邪魔をしてくるため、現状は自分たちの思い通りに全くなっていない。
やはり、どうにかして即座に宰相と星の妖精をこの世から消すか、最悪もう後戻りが出来ないレベルになるまで幽閉するなりして、事が済んだらひっそりと死んでもらうかしなければと、内心でそう思っている。
ちなみにだが、ここまで無言を貫いている星の妖精には、南方連合の使者が考えている事が、彼女自身の高精度な推測能力と『星占い』と『星読み』の併用により、ほぼ全てが筒抜け。
それ故に、リーム王国の事をこよなく愛する宰相にとって屈辱的であろう、敵国パーパルディアへの一時的な亡命を勧める事を決意した。
あわよくば、その段階で現在のパーパルディアとも友好関係を築いている、なおかつ南方連合と同等以上の力を持つ列強2ヵ国、日本とミリシアルに介入依頼を持ちかける事も考えている。
リーム王国最大の規模で、近くには魔石鉱山もあるという『アルメテイル峡谷』の地下200mに存在している大空洞、そこにあった遺跡に固く封印されている魔帝の超兵器、『
「ふぅ……バンクス様、この話はなかった事にします」
「おぉ……すまない使者よ、助かった。これの代わりになるものはいずれ必ず……」
「いえいえ。我々としても、これは欲をかき過ぎてしまったと反省した次第ですので、必要ありませんよ。宰相様に星の妖精様、この度は誠に申し訳ありませんでした」
「分かって頂けたのなら何よりです、使者殿」
「では皆様、我々はこれで。また後日、お会いしましょう」
すると、南方連合の使者はこれ以上粘っても面倒になり過ぎると判断したらしく、この件に関してはなかった事にすると約束した。
ただし、それは表面上の話。実際は、本国の意向の下万が一に備えて、裏ルートで侵入している優秀な工作員と水面下で接触し、どうにかして奪取する方向へと切り替えただけである。
加えて、宰相と星の妖精の暗殺に関しても方針を再度翻し、更にこちらにも工作員を増員することを決めた。
「……」
なお、そんな下劣な思惑などお見通しと言わんばかりに、軍基地を立ち去っていく使者の背中を、宰相の背後から顔を出している星の妖精は、仇の如く睨みつけるのであった。
本作独自の種族に関しての質問
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多くして欲しい
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多くしても問題ない
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これ以上は望まない
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作者にお任せ