光の申し子   作:松雨

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パーパルディア=リーム最終会談(前編)

 パーパルディア皇国、エストシラント北方500㎞に存在している、地理的にも歴史的にも重要な街『アルーニ』。

 

 日本とのいざこざがきっかけで条約が結ばれた以降は、住民たちの賛成多数で出来たデュロ州と同様、北方最大級の『アルーニ州』の中核都市として、皇国を経済的・軍事的にも大きく支えている。

 

 昨今の技術の発展に加え、日本とミリシアルからの支援なども相まって、その活気は属領より搾取するばかりだった頃とは比較にならない。治安に関しても、両国の外務省から第三文明圏でも上位とのお墨付きだ。

 

 ただし、ここ最近のリーム王国との関係悪化を受け、明くる日の対日紛争では出番がなかったリントヴルム(地竜)上位(ロード)種と最上位(オーバーロード)種が、アルーニの皇国陸軍基地に7割程度集結する。

 

 新型マスケット銃や日本から輸出されたコンパウンドボウなどで武装した、皇国陸軍兵士1万人も同様に集結していて、如何にも戦争寸前の雰囲気だ。

 

 無論、ワイバーンロードやオーバーロードも空軍基地に集結出来るだけしている上、一部はマギカライヒ共同体と結ばれた技術交流条約により、試作の飛竜強化機が装備されている。

 

 万が一に備え、避難用の馬車や日本製の車などが目立つ場所に用意されている事もあってか、町の雰囲気も普段のように陽気で賑やかなものではない。

 

「とうとう、始まるね。お話」

「そうだね、アストラ」

「ふぅ。ごめんね、宰相。わたしの力じゃ――」

「君のせいじゃない。むしろ、政権の中枢に居ながら陛下を止められなかった、私の力不足のせいだ。もう少し積極的に、恐れず行動していれば、変わってたかもしれないだろう?」

()()()()()。けど、あれが(南方連合の使者)消えてくれなきゃ、どのみち……」

 

 そして現在、アルーニ州政府庁舎にて行われる『パーパルディア=リーム最終会談』、要請に応じた日本とミリシアルの駐皇国大使も出席するこの話し合いに、亡命する形で皇国にやって来ていたリームの宰相と星の妖精……『アストラ』も、顔を出す事となっている。

 

 私やこの子(星の妖精)の意見を聞き入れないどころか、意にそぐわないと見るや否や都合の良い事ばかり言う方を盲信し、あまつさえ露骨に殺そうと刺客を差し向けてきた。

 

 加えて、他にも色々と他国と問題を起こし続けるのみならず、そのせいで超列強国たるミリシアルや実質第三文明圏の盟主たる日本の介入を招き、亡国の道にリームと言う名の馬車を乗せてしまった政府の方々には、正直愛想が尽きかけている。

 

 とは言え、立ち止まる最後のチャンスはまだここにある。亡命した自分達の事はもう一生信じなくたって良いけれど、住まう民のためにもどうか思い直してそのチャンスを物にし、皇国に謝罪と賠償をした上で手を取り合って欲しい。

 

 このような言葉を、リーム側の使者に直接伝えるためと言うのが、2人が最終会談に顔を出す理由であった。

 

「失礼。リームのお二方、準備はよろしいかな?」

「ええ、勿論ですとも。カイオス首相」

「……うん」

「では、参りましょう」

 

 なお、これは皇国側の要請ではなく、星占いによって映し出された()()を見た宰相が逆に自ら、姿を見せた結果自分に何があろうと構わない覚悟を以て皇国政府に要請し、数日間の議論の末に許可を勝ち取ったものである。

 

 亡命し保護してもらった立場でありながら、万が一のリスクを自身で再びぶんどって背負うのみならず、カイオス以下皇国の面々にも余計な手間とリスクを背負わせた負い目が、宰相には出来た。

 

 カイオスと宰相はこの会談がうっすらと出来レースで終わると、アストラに至っては黙ってはいるが、そう確信を持っている。

 代償と数日のインターバルを無視して再度星占い(固有魔法)を使い、見えたのが大きく不明瞭となった()()であったとしても。

 

 それでも、やらないでおくと言う選択肢はどのみち選べない。世界、特にミリシアルや日本を筆頭とした中位~最上位列強諸国からの心証を悪くしないため、必要な事であるのだから。

 

「なっ!? 宰相殿に、アストラさん!? 偽……いや、どう見ても本物……まさか」

「不本意だったよ。リームの導き手たるこの私がよもや、このような手段を取らざるを得なかったなんてね。君を含め、無辜の民には謝罪してもし切れない」

「はぁ……未来を見通せる、アストラさんも居るんです。きっと、最適な手段がこれしかなかった……そうですよね?」

「……ごめんね」

「いえ。俺はその、大丈夫です」

 

 そうして、会談のために来ていたカイオス首相が来賓待機室へと足を運び、直々に日本とミリシアルの駐皇国大使も待つ会議室に2人を案内した刹那、リーム側の使者が大層衝撃を受けた。

 

 南方連合の使者経由で、亡命した事を当然のように知ったバンクス以下リーム政府上層部が全力で行った情報操作によって、宰相が殺されたと思い込まされていたのが理由である。

 

 後は、偶然か必然かリーム側の使者が、宰相に対してとても強い恩義と信頼を感じている人間であり、ここに居るのも長い目で見ればリームのためなのだと、理解したからなのもあった。

 

 ちなみに、殺した犯人は日本やミリシアルの支援を受けたパーパルディアの工作員として、同じく世論操作も行われている。

 当然のように完全なる虚偽の情報であったため、両国は駐在大使を呼んで抗議を行ったものの、どこ吹く風であったという。

 

 結果として、両国との関係も当然のように悪化、官民問わずリームから撤退していくと同時に、入国審査を目に見えて厳しくされる始末となってしまっている。

 

「あっ、色々申し訳ありません。カイオス首相に、日本とミリシアルの大使の方々」

「問題ない。それよりも、話し合いを始めよう……ミリシアルと日本の大使の方々、よろしいかな?」

「はい。いつでも問題ありません」

「私としても、同様です」

 

 そんな感じで、第三文明圏を中心に不穏な方向へ情勢が動いていっている中、カイオス首相の一声によりアルーニ政府庁舎の会議室にて、今後の行方を左右する会談が始まるのであった。




ここまで読んでいただき、ありがとうございます。もし可能であれば、評価や感想の方をよろしくお願いいたします。

既にしてくださっている方々には、心より感謝いたします。

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