カームとの約束を守り、学院長との魔導通信装置越しでの相談の末もらった10日間休みの7日目の朝、弱まってくれたと思わせてからの体調悪化が完全に解消されたため、私は気分転換にカルトアルパス最大の酒場に立ち寄っていた。
究極に美味いと噂のお酒がある場所だけど、ちょっとしたレストランの様なお店が併設されていて、そこの料理も凄まじく美味しい事でも有名である。
故に、お酒はおまけないし全く飲まず、それ目当てで来店してくるあらゆる職種・人種などを問わず、訪れる人々がとても多い。ちなみに、私自身も料理の噂に釣られてやって来た内の1人だ。
「ハハハ! まさか、こんなところでアンタに会えるとは思ってなかったぜ。あんまり街中で見ねえってんだしな」
「仕事が趣味みたいな感じでしたし。まあ、お陰で体調悪くしてこっぴどく怒られたので、今はこうして息抜きにご飯を食べに来ているんですよね」
「なるほどな。ああそうだ、体調って言えば……えっと、確か、魔力流急転症で合ってたか?」
「ええ、合ってますよ」
「ふぅ……何と言うか、早く完全な治療法が見つかると良いな」
「そうですね。今はともかく、小さかった頃は地獄の拷問が如き苦しみを味わったので……こんな思いを、他の人にはして欲しくありませんから」
案の定、ここのレストランの料理は噂に違わぬ美味であったし、おまけで友人や知人や家族とバカ騒ぎする人たちが笑顔で過ごしている、平和だから故の光景が見れている。
それに、少々酔っ払っているせいかお酒臭いものの、気の良い商人のおじさんと会話しつつ、彼から『クワ・トイネ公国』製の良い香りのする上質な茶葉を買ったりと、今までの息抜き少なめ生活の割には中々楽しめていた。
(外国旅行かぁ。行くとしたら、ムーか日本……かな?)
第三文明圏の更に外、日本のある近辺の国家まで行った経験のある人からの話は実にためになり、それでいて中々面白そうではある。ただし、使える時間が3日程となると、外国に行けても空港のある国……『エモール王国』やムー位しかない。
上手い事ムーの許可がもらえさえすれば、移動手段がミリシアルの旧式輸送機と限定されはするものの、『アルタラス王国』やパーパルディア皇国にも同様に、行くだけなら可能になる。
が、アルタラスの方はパーパルディアに征服されたみたいだし、その占領地で欲望の限りを尽くしている方の国には、グラ・バルカス程ではないにせよ恐怖を感じるので行く訳がないけど。
「何でだよ! じゃあ、あそこでご飯食べてるあいつを追い出せってば!」
「なっ……おい小僧! あの人に向かって――」
「まあまあ。ほら、これでどう? こんな見た目だけど、私はちゃんと大人なの」
「本当だ……突然ごめんなさい。お店の人も……」
「分かれば良いの。さあ、早く外に行きなさいな。どうしても入りたければ、親御さんとか知り合いの大人連れて来てね」
後は、私の見た目に起因するお店の入り口付近でのちょっとしたトラブルを諌めたり、その流れで話しかけてきたオフの軍人さんやおばちゃんたちへの対応など、食事に集中する事が難しくなる事態も起きている。
確かに、私は日本で言う女子中学生、ミリシアルで言うなら女子中等生の平均身長と同じ背丈で成長が止まっている。子供然り、私を良く知らない大人たちや他国の人から、間違われるのは無理はない。
多少面倒なやり取りではあったものの、常々持ち歩いていた身分証明カードが役に立ったので、大事にはならなかったので良しとしよう。勿論、頻度が高すぎたり頑なに認めようとしなかったらその限りではないけど。
「ふぅ、ごちそうさまでした。とても美味しかったので、明日以降もまた来ようと思います」
「そうですか! うん、オロールさんお墨付きともなれば、新人のアイツも喜ぶだろうなぁ」
「新人さん……なるほど、将来有望ですね。忘れなければ、私の感想をお伝え下さい」
「了解です! 今度は是非、うちのお酒も堪能して下さいね!」
そんなこんなで食事を終え、料金を支払ってから酒場を後にした私は、取り敢えず巨大商店が立ち並ぶエリアへと足を運ぶ事にした。
1年前に部下の子たちと立ち寄った時を最後に、仕事だ仕事だと無理をしていたがためにずっと来ていなかったけど、あの時と雰囲気はさほど変わっていないみたいだ。
(……嫌な事だけ、忘れられたら良いのになぁ)
私の命や人生を助けてもくれたけど、同時に和らぎはすれど完全に消す事が出来ない痛みを伴う苦しみを与えてくる
まあ、今の私は大魔導師としても軍事系の技術者としても大成功し、人間関係もさほど苦労せずに良い感じに構築出来ている上、金銭にもかなりの余裕がある。
何なら、大好きな神聖ミリシアル帝国に、一生会えないものの優しかった両親の子供として生まれてこれただけでも、恵まれ過ぎているとすら言えるだろう。そう考えれば、この苦しみに対抗する活力が沸いて出てきた。
「すみません、赤髪のお嬢さん! お財布落としましたよ」
「えっ? あ、本当だ」
そんな風な考え事をしつつ、私の仕事場でもあるカルトアルパス魔導学院の側をのんびり歩いていた時、後ろから男の人に声をかけられた。
どうやら、私が知らぬ間にお財布を落としたのを男の人が気づき、拾って声をかけてきてくれた様だ。
「えっと、ありがとうございます……へっ?」
「……? どうかしましたか?」
そう思いながら後ろを振り向いたのだけど、お財布を手渡してきた人物が、どこからどう見ても日本人としか思えない容姿をしていたたため、時間差で思わず立ち竦んでしまった。
本作独自の種族に関しての質問
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多くして欲しい
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多くしても問題ない
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これ以上は望まない
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作者にお任せ