光の申し子   作:松雨

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パーパルディア=リーム最終会談(中編)

 パーパルディア皇国首相カイオスの一声によって、アルーニの州政府庁舎で始められた、リーム王国側の使者との最後の会談。

 

 皇国政府の要請を受け同席している、駐皇国日本大使の朝田とミリシアル大使のアーヴィス、星の妖精たる(未来予知能力持ち)アストラと共に亡命してきたリームの宰相。

 

 これだけの強力無比な札が揃えば、正常な判断能力さえあれば振り上げた矛を下ろし、交渉の席につくのが一般的だ。例え、自国に賠償命令が下る未来が濃厚であっても、である。

 

 世界最強の『力』を誇り、例外を除いて他の列強諸国が束になろうと敵わない、神聖ミリシアル帝国。

 

 異世界からの転移国家かつ、科学技術にてミリシアルを超える文明を築き、文明圏外国との戦争にて出てきた、古代兵器(パル・キマイラ)すら墜としてしまった、日本国。

 

 今現在、この世界の共通認識として、日本やミリシアルと国家ぐるみで付き合いを重ねていく時は、慎重さと冷静さがより一層求められると言うものがあるのだ。

 

 だからと言って、その他の国との付き合いに慎重さや冷静さが必要ない訳では、決してない。

 

「以上が、我々リーム王国の要求(命令)……となります」

「「「……」」」

 

 しかし、リーム王国はその2つの要素を欠いているから(蛮勇)なのか、はたまた最終的に勝利を確信しているからなのか、両国の後ろ楯があるパーパルディア皇国に対して、この上なく強気であった。

 

 ただし、強気なのは上層部とおおよそ7割の軍人のみであり、宰相を含めた知識人や平和主義者、旅行や仕事などで訪れた経験のある王国民は、最低でも日本やミリシアルと対峙する事には消極的。

 

 とは言え、リーム政府の情報操作も相まって、何故過去に散々やったはずのパーパルディアなんかに味方するのかと、国民感情そのものは悪化しつつある。

 

「これは……我が国としては、到底飲めたものではない。実質的な宣戦布告ではないか」

「中々に酷いわね。いくら、南方連合とか言う国の支援と魔鋼の巨人があるにしたって、皇国に加えて我が国や日本を相手取って、たかがリーム如きが勝てるとでも?」

 

 なお、リーム側が出してきた要求はあまりにも酷く、最後通牒が記された書類を見たカイオス首相とアーヴィスは、公式な会談の最中にも関わらず不快感を露にした。

 

 皇国には、自国に非がある私掠船云々や領土・資源問題はもとより、南方連合工作員の起こした出来事の罪を擦り付け、天文学的な賠償と()()()()()()()()()()()、各種技術の提供に無条件での属国化の要求などを。

 

 ミリシアルや日本には、そんな悪逆無道な皇国を支援して我が国を害したとして、財産の没収などによる賠償とメディアを通した公式な謝罪、各所での優遇を要求したのだ。

 

 しかも、万が一戦争になったとてお前らなんか鎧袖一触に捻り潰せると、何ならやっても良いんだぞと、完全に舐め腐る旨の文章も書かれている。

 

 もはや外交文書の体を成しておらず、傲岸不遜甚だしいこの文章を見た両国の反応は、妥当ではあるだろう。

 

「まさか。私には、決してそうは思えませんが……バンクス陛下や政府上層部の方々は、どうやら違うようで」

「なるほど。もしかしたら、最初から話をする気などさほどなかったのかも知れませんな。もしくは、急に気が変わったか」

 

 なお、リームの意思を伝えるために来ていた使者本人は、日本やミリシアルは当然として、皇国に対しても特段恨みなどは抱いておらず、自国の置かれた現実(状況)を直視できる平和主義者である。

 

 そのため、カイオスやアーヴィスから発せられる威圧感が増した時、自分も亡命しようかとの考えがよぎっていた。愛する妻子が居る事と、言わずもがな何の準備もしていない事もあり、すぐに頭から消え去ったが。

 

「陛下……どうしてこんな……」

「リームの宰相さん、でしたか。苦労なされているんですね」

「あぁ……気遣いをありがとう、朝田殿。重ね重ね、うちの国が本当に申し訳ない」

「いえ、謝らないで下さい。貴方は何も悪くありませんから」

 

 そして、バンクスや上層部が決して折れる事がなく、星占いで見た最悪の想定についてもあってか、今後の祖国の運命を憂いた宰相は項垂れていた。

 

 侵略などに対する報復と言った大義ある戦争ではなく、こちら側の侵略による無意味な戦争だからである。

 

 バンクス(陛下)は、自国に非しかない数々の出来事の責任を、皇国のみならず日本やミリシアルにも押し付け、自分自身には刺客を差し向けた。

 

 この最終会談も、蓋を開けてみれば実質話し合いをする気がなく、許容出来ない領域に達した我欲のために、自国の民を危機に晒す気が満々。

 

 あまつさえ、南方連合とか言う国家の使者を名乗る胡散臭げな集団を、ほぼ無警戒で招き入れる。

 このまま突き進むと、待っているのは喧嘩を売っている日本やミリシアルの傀儡になった方が、色々な面でマシだと思わざるをえないくらいの酷い未来だと、星占いを頼らずとも容易く予想が出来たのだ。

 

 だからこそ、会談が始まる前に言おうと考えていた事を、言おうとすら思えなくなるくらい、今の彼には精神的にかなりの負荷がかかっているのである。

 

「ともかく、リーム側は全く譲歩する気はなさそうですね……仕方ありません。カイオス首相にアーヴィスさん、よろしいでしょうか?」

「……そうですな」

「ええ。事ここに至っては、仕方のないことでしょう」

 

 そして、話の流れでリーム側の態度を冷静に見ていた朝田がある時、手持ちの鞄から出した1通の文書が、宰相の精神をより一層追い込んでいく事になってしまった。

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