光の申し子   作:松雨

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魔核波技術

 ミリシアル・日本・パーパルディア列強3ヵ国とリーム王国が、戦争状態へと突入した。

 この一大事件は当然の如く世界中を駆け巡り、文明圏内外問わず凄まじい反応を以て受け止められている。

 

 戦争に至るまでの経緯から始まり、パーパルディア=リーム最終会談時の一部、魔帝の超兵器(魔鋼の巨人)の存在、リーム王国を支援する南方連合なる国家についてなども、各国のメディアを経由して公開されているのだから当然であろう。

 

 普通であれば、強力な魔帝の超兵器を持っているリームの方が、この戦争に勝利するとの考えもそれなりに生まれる。それ程までに、恐ろしい存在なのだ。

 

 しかし、こと今回に至っては、3ヵ国側が何やかんやで勝利を収めるだろうとの見方が強い。いや、圧倒的に強い。

 

 パーパルディア1国のみであればまだしも、3位以下を大きく引き離す上位列強のミリシアルと日本が、パーパルディア側についているのだから。

 

 かくいう私も、リームに魔鋼の巨人が存在していたと聞いた時は寝耳に水であったものの、落ち着いて考えてみてからは3ヵ国側の勝利を確信出来た。

 

 無論、一切油断せずに適切な判断を下し、3ヵ国が息を合わせて行動している事を前提としたものではあるし、勝利出来るからと言って犠牲者を出さないようにするのは、これまたかなり難しい。

 

 日本がいやにあっさりパル・キマイラを叩き落としたのを見たら感覚が麻痺するけど、普通は同じ古代兵器を相対させなければ、ダメージを与える事すら非現実的なのだ。

 

 だから、少なからず兵器製作に関わっている者として、私は出来る限り祖国の軍人さんたちの犠牲を減らすために、これから長く頑張っていくつもりである。

 

「オロールさん? その大量の分厚い本は一体……?」

「これですか? 私なりに出来る限り分かりやすく、使用しやすいように纏めた魔導書ですよ。魔核波技術の使用による魔力生成を行うにあたって、例の解説書に載っていた魔法がどうしても必要なんです」

「えぇ……分かりやすくしてそれって、何ともまあ……」

「相当な時間と集中力を使ってすら、これが限界でして。流石は魔帝の大魔導師……これで善い国であれば、手放しで尊敬出来たのですが……」

「それはまあ、確かに」

 

 ちなみに今、私は職場であるカルトアルパス魔導学院を離れ、ルーンポリス魔導学院の魔法研究部へと足を運んでいる。魔法版の原子力、通称『魔核波』を扱う技術の中核となる3つの魔法を広めてもらうために必要な魔導書、それを持ってきたかったためだ。

 

 魔力の供給がある限り、科学では放射線に相当する放射魔波(ほうしゃまは)を防ぎ、性質が似通う放射線をも同様に防げることが分かっている結界を展開し続ける、『対放射電磁結界(アトミナカル)』。

 

 眩く光る特殊な魔法の粒子を放出し、効果範囲内の放射性物質ないし放射魔波性物質を含む、あらゆる化学・魔法的有毒物質による汚染を、原因となる物質の破壊・相殺により取り除いて浄化する、『魔消の麗界(アルニッシャー)

 

 極めて強力な浸透・治癒・再生・浄化の魔力が込められた水の雫を生成し付与、死んでさえいなければ対象の生命を害するあらゆる肉体的要素を排除し、条件はあるものの四肢の欠損なども回復させられる、『潜深なる癒波(アルティナヒール)』。

 

 軍事的な利用が最大の目的ではあるものの、医療や魔導工場などでの万が一への備えや、かねてより成されていた日本からの依頼達成も必要であり、目的の1つに入っている。

 

 一応、私が個人で使えるレベルになったからこそ、こうして魔導書と言う形に出来た訳だけど、流石は魔帝の魔法と言うべきか難易度が高過ぎた。

 

 周りの同僚や部下の子たち、メテオスさん含む魔帝対策省の職員がサポートに入ってくれなければ、魔導技師としての仕事と両立する事は不可能であっただろう。

 

「魔核波技術。我が物に出来れば飛躍的な進歩を遂げられる」

「はい。気をつけなければ、使う側に刃を向けかねない技術でもありますが」

「ええ。それに、あの件は大丈夫なのでしょうか……」

「あー……まあ、その辺は外務省の方々に任せましょう。私たちは、政治家ではありませんので」

 

 加えて、魔核波技術には技術面での問題のみならず、その性質から外交・政治的問題をもはらんでいる。

 直近では、エモール王国他数ヵ国からの憂慮の言葉をもらった件についての記憶が、記憶に新しい。

 

 まあ、確かにエモール王国が建国された歴史的経緯を考えれば、色々と言ってくるのも理解は出来る。悪名高きコア魔法は言わずもがな、その先にある『浄滅の焔(ハイパーコア)』をも、生み出そうと思えば生み出せるようになるのだから。

 

 しかし、いずれ復活する古の魔法帝国は、私たちが抱える複雑な事情を鑑みてくれる程の理性は持たない上、なまじ高い技術力と国力を持つ。故に、少しでもしようと思えば容赦なくコア魔法をばらまく程度の事が、出来てしまうのだ。

 

 超兵器たる海上要塞や超潜艦、魔核波機関を搭載した330mの魔核波空母に魔核波潜水艦、これらを理解し対抗策を生み出そうとするならば、否が応でも魔核波について学んでいく必要があるのだし。

 

(……)

 

 なお、意外にも日本とムー、その勢力圏の国々からは「貴国は()()()()()。そう信頼している」と、一言を述べられる程度で終わっている。祖国に対する言葉としては、何とも嬉しい限りのものだ。

 

 だからこそ、軍事に魔核波技術を活用したとしても、それを侵略のためとか言う実に下らない事に使わせない。

 

 そして、例え防衛のために使う事が視野に入ったとしても、出来る限り決定には慎重を喫し、なおかつ使用後にタガが外れてコア魔法の連打なんて事態にならぬよう、私たちは己を律し続けていかなければならない。

 

 未来の歴史書に、祖国が()()()()()と記されるような、考えたくもない事態が訪れたりしないように。

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