リーム王国の、パーパルディア皇国に対する侵略戦争。
最終会議の決裂からおおよそ6日後の昼間、リーム王国軍によるアルーニへの電撃戦、南方連合の支援を元とした各州都市への
後者の攻撃は、パーパルディア側には例外を除いて迎撃は愚か感知する事すらほぼ不可能であり、防空網を容易にすり抜けたそれは各所へと着弾、少なくない被害をもたらしている。
しかし、皇都エストシラントを含む主要な港や空港が存在し、諸外国にとっても重要な場所となり得る街に関しては、日本やミリシアルの最新鋭艦隊や部隊が既に到着済み。
各種要因も重なってほぼ全弾迎撃に成功し、初撃を損害軽微で乗り切っていた。ただし、その影響により部隊を他へ援軍として送る事が、出来なくなっていたが。
「クソっ、何なんだこの化け物!
「ちいっ!?
「進軍速度が速すぎる、物量が多すぎる! 空からの攻撃も厄介な……日本とミリシアルの即応部隊のお陰で何とかなっているが、援軍はまだなのか!」
「あっ、たった今魔信が……皇帝陛下は『
「おおっ! クソみたいな状況だが、まだ捨てたもんじゃねえな!」
加えて、膨大な物量や南方連合の支援による高い質を誇る兵器、および生物兵器を用いた電撃戦を仕掛けられたアルーニは、空中でも地上でも現状圧倒的とは言わずとも、不利な戦いを強いられている。
ミリシアルの重戦車『ヴォルカⅠ型』擬きや、ミリシアル本土に配備され始めている次世代魔装戦車に酷似した、魔装戦車『リヴォリーネ』。
有害鳥獣駆除などの理由で、『トーパ王国』に日本が派遣した陸上自衛隊の10式戦車が砲撃で倒した魔王ノスグーラ、それの廉価版にあたる量産型魔王。
最上位地竜の白炎熱線による集中砲火でかすり傷、それ以下ではまるでダメージを与えられず、日本やミリシアルの即応部隊に任せざるを得ない程に、パーパルディア側の武装が力不足となっていた。
アルーニ上空の制空権に関しては、南方連合の用意した対空誘導魔光弾の掃射により、
日本とミリシアルの戦闘機部隊による援軍、もしくは万億の吸血騎士と呼ばれる存在が駆けつけるまで、この状況は変わる事はない。司令部はそう見ていた。
『あいつらをどうするかって? 訳分からんヤバい奴はミリシアルと日本に任せとけ! 俺らの武装とミリシアルの旧式で相手できる奴だけ相手しろ!』
「了解! とは言え、こっちにもあの化け物共が襲ってくる以上、厳しいですよ!」
『そんなのは分かっている! 分かっているが……』
『8時の方向、敵機編隊! 形状からして、恐らくは魔導爆撃機の可能性大!』
「ええい、我々にどうしろと言うのだ!? 日本とミリシアル……早く来てくれ! 吸血騎士様方でも良い、とにかく頼むぞ……!」
そして、そのタイミングで敵の爆撃機と思わしき編隊を、司令部や現場の魔導レーダーが捉えてしまう。
日本やミリシアルの即応部隊による対空砲火を警戒してか、かなりの高度から侵入しているため、残っている飛竜がそもそも近づいて攻撃を仕掛ける事すら出来ない。
「友軍全機撃墜! エルペシオ4でも、まさかここまで相手に遊ばれるとは……!」
「ミリシアルの高名な魔導技師が、エルペシオ4は強力ではありますが、次世代機クラスの相手にはならないだろうと言っていました。本当にそのようです」
「誘導魔光弾……か。我が国がそれを使えるまでに、一体何十……いや、何百年かかる事やら。来るべき魔帝復活の日、果たして役に立つのか?」
「……さあ。何とも言えませんね」
ミリシアルから輸入したエルペシオ4であれば普通に近づける上、誘導魔光弾対策が多少されているものの、やはり大半がその前に対空誘導魔光弾で撃墜され、幸運とまぐれが最大限に味方して2機を撃破したのみで終わっている。
しかし、古の魔法帝国の超兵器群のように、自分たちの抵抗が全く意味を成さない相手ではない。決して軽くはないものの、代償を支払えば刃が届く相手ではあった。
それに、自分たちが心折れてアルーニを守る事を放棄すれば、リーム王国は南方連合の支援を後ろ楯に皇国を蹂躙する。
そうすれば、少し前までの皇国軍が文明圏外国家の民に行っていたような、考えるだけでおぞましい行為の犠牲者となるだろう。
無論、アルーニに居る皇国軍兵士の殆んどは、過去に1度もそんな下劣な行為を行った事もなければ、やりたいと思った事もない。
家族もろとも殺される可能性があったため、恐怖のあまり実際に声を上げられなかったが、内心では皇国の行為に良い気はしていなかったのだ。
『司令官。そんな事より、今はこの場で持ちこたえる方が重要課題です。再び届いた魔信によりますと……後5分。5分もすれば、万億の吸血騎士の準備が整い、到着するらしいので』
『おお、ようやくか! 日本とミリシアルの援軍はどうなっている?』
『推定ですが、そこから更に10分前後との事です』
『なるほど……お前ら、聞いたか!? すまないが、もう少し死ぬ気で持ちこたえてくれ!!』
「よっしゃあ! 5分くらいなら全然余裕ですぜ!」
「いや余裕はねえよ!! しかし、持ちこたえる事自体は可能……司令官。お任せください! 例え死んでも踏ん張って見せますので!」
そして、文明圏外の国々に対して偏見を持ち、良くない考え方をする人物も少なくない数居るとは言え、罪のない一般人が蹂躙される未来はアルーニの皇国軍にとっては、決して訪れさせてはならない暗黒の未来。
自分や友人、その家族がしょうもない事で笑い、ささやかながら幸せに過ごす日常を壊させないためならと、命を賭けて敵をアルーニで釘付けにするつもりでいた。
言わずもがな、出来る事なら死なずに生きて帰りたいと思ってはいるので、頼むから早く援軍が来てくれとも願ってはいるが。
「ふむ……よくぞ持ちこたえた、アルーニの
「本当にご苦労様! さてと、兄様。あれ、全員ぶっ殺すんだよね?」
「うむ。ルディアス陛下も、敵は生かして帰すなと言っていたからな。後、日本とミリシアルの奴らは間違えても巻き込むなよ。協調している以上、国際問題になる」
「はーい! ふふっ、腕が鳴るなぁ!」
そんな彼ら彼女らの願いが通じたのか、司令部の建物寸前までやって来た量産型魔王の前方に、赤黒い稲妻や霧のようなものが出現し収束、特殊な灰色ローブを身に纏った膨大な魔力を身に宿す万億の吸血騎士……2人の兄妹吸血鬼が現れた。
想定よりも2分程早い最強クラスの守護者の登場に、周辺の皇国軍兵士の士気は一気に高まっていくのであった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。評価や感想をしてくださっている方々には、心より感謝いたします。
本作独自の種族に関しての質問
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多くして欲しい
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多くしても問題ない
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これ以上は望まない
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作者にお任せ