光の申し子   作:松雨

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アルーニ防衛戦(中編)

 リーム王国軍によるアルーニへの電撃戦は当初、南方連合の()()()()()の甲斐もあって、成功への道標がはっきりと見えていた。

 

 日本やミリシアルの即応部隊によるアルーニ防衛隊(皇国軍)への支援、皇国軍兵士による死に物狂いでの抵抗も相まって、少ないとは言い難い損害は出ていたが、それでも今後の作戦に支障をきたすレベルではなかったのである。

 

「嘘だろ……アイツら、蹴りだけで魔導装甲車ぶっ壊しやがった! てか、戦車の砲撃って避けられるものだったっけ?」

「司令部にも差し向けた量産型魔王、単純な膂力だけなら日本に倒された本物の魔王ノスグーラにも引けを取らないって聞いたんだが、普通に叩きのめされてるぞ!?」

「クソがっ! 歩兵の装備じゃかすり傷にもならな――」

「なっ……虚空から剣が生えてきただと!? こんなの、未来でも見れなきゃ対策出来る訳ねえ!!」

 

 しかし、皇国軍側にルディアスから秘密種族2人(万億の吸血騎士)が援軍として派遣され、戦場に到着したその瞬間より、戦況は誰の目から見てもガラッと変化してしまっていた。

 

 この世界の常識からして絶対にあり得ない膨大な量の魔力と、類い稀なる超絶身体能力や高い戦闘技術を武器に、次々とリーム王国軍を薙ぎ倒していく万億の吸血騎士(吸血鬼兄妹)

 

 攻撃力のみならず単純な魔法防御も凄まじく、王国軍の攻撃が殆んどと言って良い程に通用していない。パーパルディアの最上位地竜の白炎熱線以上、量産型魔王の黒い炎球(魔法)を直撃させることでようやく、漏れ出る魔力による瞬間自動防御(オートガード)体質が発揮される程度には硬いのだ。

 

「ん~……ノスグーラ擬きと魔装戦車って奴以外、手応え無さすぎてつまんない!! いやまあ、皇国の軍人さんや皆を守りやすいって意味では、相手に手応えなんてない方が良いのは分かってるけどさ」

「はぁ、お前と言う奴は。この戦いは皇国を守るためであって、楽しむためのものではないのだぞ。しかし、効かぬと分かっていてもチクチク鬱陶しい……『夜の篝火(ノクスイグニス)』!」

「「がっ……ぐぎゃあぁぁ!!!」」

 

 仮に傷を与えるレベルで効いても、吸血鬼特有の再生能力も秘めているという二段構えなので、2人に対しての攻撃は実質無駄にも等しかった。

 

 現状で対抗可能なのは、敵味方関わらずに言うなら純粋な物理で対応出来る日本、硬い魔法防御を突破する魔導兵器ないし強力な魔法を持つミリシアル、および南方連合である。

 

 なお、純粋な物理防御も決して柔い訳ではなく、物理攻撃に対抗する防御魔法もあるにはあるが、硬い魔法防御を最初から無視可能な日本なら、魔導文明国家たる2ヵ国よりは対抗しやすくなる。

 

「えぇ……ただの前蹴りで戦車がぶっ飛んで、装甲車に足がめり込んで、魔王がボロ雑巾みたいに……うわっ、リームの兵士が鎧ごと蒸発したんですけど……あの紫の炎、一体どれ程の熱量なんでしょうか」

「パーパルディア皇国、ここまでの切り札を隠し持っていたとは……いやはや、恐ろしいなんてものじゃない。我が国で言うところの、魔帝の超兵器のポジションなのだろうな」

「ええ。しかし、そのお陰で戦況は幾分か有利になりました。空からの援軍が来るまでは、余裕で持ちこたえられそうです」

 

 ただし、当の日本やミリシアルは万億の吸血騎士の2人が見せる、あまりにも常識外れな暴れっぷりに安心と頼もしさを感じつつも、ドン引きしていた。

 

 特に、フェン王国にてパーパルディア皇国軍と衝突してこれを圧倒、本格的な国家間戦争に突入しかけていた日本の陸上自衛隊隊員は、こんな状況でもそんな想像をした結果、悪寒が全身に走る。

 

 現代兵器を使わずとも、その身1つで現代兵器と同等かそれ以上の立ち振る舞いをする人の形をした化け物を、最悪相手にしなければならなかった未来を容易に想像出来てしまったのだ。致し方ないだろう。

 

 しかし、実際は本格的な大戦争に発展する前に講和が決定、日本に対して10人の秘密種族が牙を向ける事態は防がれる。

 少しでもどちらかの政府の判断が遅れたり、運命の歯車が噛み合わなかったりしていれば、こうはならなかったであろうギリギリの領域であった。

 

 無論、当時の日本であっても、秘密種族に牙を向けられた際に対抗するための手段は多数あった。陸上兵器に限定したとしても、万億の吸血騎士でさえ一目置く10式戦車の発展強化版を含めて、複数存在している。

 

 現在の日本であれば、それらを含めて各地に点在する妖精塔の妖精や精霊、特に400~600m級の妖精塔を守護する強力な妖精数人に協力を仰げば、属性や概念的相性の有利から優位に立ち回れるのだ。

 

 そもそもの話、吸血鬼や悪魔の弱点や対処法がアニメやゲームなどの娯楽を通じ、一般の有志や日本政府を介して自衛隊全般に広まっている。

 

 何なら、妖精塔や妖精・精霊の出現に端を発し、日本全国で科学の発展と共に廃れた『神秘』の力が急速に盛り返す、そんな傾向が僅かでありつつも報告されていた。

 

 時が経てば、基本的な文明や技術は科学のみで維持しつつも、盛り返した『神秘』とも共存共栄していく、そんな未来が日本にはやって来る可能性は高い。

 

 そうなれば、いかに敵の『神秘』が強力無比なものであろうと、打ち倒されてしまうだろう。

 

「むぅっ! おぉ、中々の破壊力ではないか……感謝するぞ、貴殿ら。我もこやつも少々、油断してしまっていたようだ」

「役に立ちましたか。大きなお世話かと思いましたけど、良かったです」

「とんでもないよ! それにしても、ノスグーラ擬きを一撃で粉砕するなんて凄いね! 魔力を感じなかったから、今のは日本のやつかな?」

「ああ。生憎、我が国はまだ歩兵携帯型誘導魔光弾を、日本程大量に本国以外に持ち込めるレベルには至っていないのだ。技術も未熟、仮に放っていても上手く命中していたかどうかも分からんしな」

「一応、持ってはいるのか」

 

 なお、それはそれとして万億の吸血騎士の2人は、日本という国を警戒しつつも高く評価している。願わくは、再びいがみ合う事なく居てくれと内心で考える位には。

 

 1度フェン王国でいがみ合った仲でありながら、今ではそれを過度に引き摺らず皇国を友邦として扱い、どんな意図があれどこうして皇国を守るために、ミリシアルと共に命をかけてくれている。

 

 ルディアス以下皇国の全てを愛する2人が、そう願うのもおかしな話ではない。

 

「ちぃっ!! あれは、あやつらの……っ!?」

 

 すると、今まさに遥か上空を悠々自適に飛行し、万億の吸血騎士2人含むエリアへ()()を投下しようとしたリーム王国軍の爆撃機が、唐突に飛んできた多数の誘導弾によって爆発四散、全滅するのであった。




ここまで読んでいただき、ありがとうございます。評価や感想をしてくださっている方々には、心より感謝いたします。

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