光の申し子   作:松雨

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アルーニ防衛戦(後編)

 アルーニの上空で、皇国側にとって脅威となる『何か』を開放しようとしていた、リーム王国軍の爆撃機。

 

 しかし、その『何か』は与えられた役割を微塵も果たす事はなく、唐突に飛来してきた多数の誘導弾により、爆撃機やパイロットもろとも空の塵となって終わる。

 

 無論、脅威はまだ完全に除去されてはおらず、故にそれだけで気を抜けるようになる訳ではない。

 

 だがこれは、アルーニを守る皇国側にとっては福音をもたらし、攻める王国側にとっては絶望の始まりとなる知らせになった。

 

「全弾命中を確認!! アルーニ上空の敵機の反応、全て消滅しました!」

『おぉ、流石は日本国。寸分違わず全て命中させるとは』

「ははっ。そう仰る貴国も、結果的には誘導弾を全て命中させているではないですか」

『まあ、実際そうではあるんだがな……』

 

 ちなみに、その多数の誘導弾を放った存在の正体は日本のF-35ライトニングⅡとF-2、およびF-15J改の編隊13機と、ミリシアルのエルペシオ5、およびジグラント5の編隊機19機である。

 

 アルーニに最も近い海域の護衛艦『かが』や、近代化改装を一部終えている『アロンダイト』、皇国内の航空自衛隊基地や神聖ミリシアル帝国軍の基地より、巡航誘導魔光弾による攻撃が落ち着いたタイミングで、ようやく援軍を送り込めたのだ。

 

 で、送られてきた援軍の任務は爆撃機を全滅させるだけではない。必要に応じて地上部隊を支援し、リーム領土や領海より飛び立つ敵航空機を撃墜、場合によっては越境しての攻撃も視野に入る。

 

 言わずもがな、優先するべきはアルーニの皇国軍、日本およびミリシアルの即応部隊の支援となっているが。

 

 敵の殲滅に拘り過ぎるがあまり、深入りし過ぎて味方の支援どころか、自分たちの生死に関わる問題となってしまっては本末転倒。当然の摂理であろう。

 

 なお、リーム王国軍による皇国に対する攻撃は陸上や空中からのみならず、海上や海中からも当然行われている。ただし、こちらに関しては完全に委託された日本とミリシアルの最新鋭艦隊が対処にあたっているため、現状は全く問題はない。

 

『ん? そう言ってる間にも、敵機が増えたようだぞ』

「ええ。しかし、それも時間の問題。更なる攻撃機の援軍、および艦隊の巡航ミサイル等による遠距離攻撃により、収まりますよ」

『おう。まあ何にせよ、俺らのやる事は変わらんしな』

「ですね……とにかく、皇国のオーバーロード種よりも圧倒的格上な敵の魔導ジェット機だけは、何としてでも削っておきましょう」

『では、後方の我々は敵地上部隊を破壊しましょう。無論、誤射は致しませんよ』

 

 そして、アルーニ上空の爆撃機を全滅させた日本とミリシアル合同の編隊32機は、続いてレーダーにより探知した音速の1.7倍程の敵機22機を即ロックオン、残っている空対空誘導弾や空対空誘導魔光弾を躊躇なく発射した。

 

 同時に、空対地誘導弾や空対地誘導魔光弾を装備している一部のF-35ライトニングⅡ、およびジグラント5が現地よりもたらされる情報を元に、アルーニのリーム王国軍に向けて放つ。

 

 正確無比な命中率と相応の破壊力を持つ日本製の対地誘導弾に、命中率は劣るものの日本を大きく上回る破壊力のミリシアル製対地誘導魔光弾。

 

 いかに高い技術力を誇る南方連合とは言えど、諸事情により大っぴらに艦隊を差し向ける真似が出来ず、かつアウェーな環境下に置かれてしまっては、迎撃の難度がかなり高まるのは間違いない。

 

「敵機、回避行動! しかし、3、2、1……命中、命中、命中!! 撃墜に成功した模様!」

『おっとぉ! やはり反撃はあったが……装備のお陰で助かったぜ。いくら相手にとってのアウェーとは言え、油断は禁物だな』

『こちら、ミリシアルの対地攻撃隊。3発迎撃されるも、皇国軍支援の目的は達成』

 

 現に、上空で飛び交う合同編隊間の通信では敵機、および敵地上部隊への命中報告が次々と飛び交う。更に、苦し紛れで放たれた敵の誘導魔光弾もミリシアルは危なげなく回避、日本に至っては殆んど反撃される事すらなかった。

 

 制空戦闘機も含め全体的にステルス性を高めていたのと、他の部隊や海上の両国艦艇による支援により、防御能力が飽和状態だったのが理由である。

 

 その結果、出撃してきた敵機は爆撃機と同様にいやにあっさりと全滅、アルーニを攻めていたリームの地上部隊も大ダメージを受け、戦況は更に皇国側へと傾いていく。

 

 ただ、その代償として各種誘導弾や誘導魔光弾は近距離のものを残して殆んど枯渇、潤沢に残っている武装は機銃や魔光機関砲のみとなり、加えて満を持したと言わんばかりにリームのワイバーンロード、マラストラス型の飛行系量産魔獣がアルーニに向けて来る羽目になってしまう。

 

 その数はおよそ100。3倍強の差だ。

 

『おいおい、まだ出てくんのかよ。面倒くせえな』

「数は脅威ですね。しかし、先程撃墜した機体程の存在ではないようです。マラストラス型魔獣も特殊能力はない上に、飛行速度もワイバーンオーバーロードと同等、もしくは若干上回るくらいみたいなので……格闘戦と行きましょう」

『よし来た! 全員まとめて落としてやるさ!』

「ふぅ。経験済みとは言え、やはり有視界戦闘はあまりしたくないものですね」

 

 しかし、この場に居るのは最新鋭の機体や兵装を使いこなす、航空自衛隊員とミリシアル空軍の面々。視界外戦闘のみならず、至近距離の格闘戦もお手の物であり、非常に強い。

 

 何なら、日本側にはこの手の戦闘経験がある人物が複数名居るので、普通に戦えば負ける確率はゼロに等しいのだ。機体の故障と言ったどうしようもないトラブル、破滅的な驕りと手抜きをしまくるなどがなければだが。

 

「そらっ! 残りのミサイル全部お見舞いしてあげますよ! 我が国の民と友邦を害そうとするならば、容赦はしません!」

『……あんた、性格変わり過ぎじゃね?』

「申し訳ありません。彼、そう言うところがありまして……」

『いや、俺らは別に気にしてないぜ。前に居た、意味不明な叫び声を上げながら敵を倒してた奴に比べれば、可愛いもんだ』

「あはは……それはまあ、凄い方が居たものですね」

 

 なので、アルーニ上空を通り過ぎ、リーム領空に入ってすぐの空域にて格闘戦が始まると、リーム側の航空戦力が凄まじい勢いで減っていた。いや、溶けていると表しても過言ではないだろう。

 

 当然、リーム側も反撃をしようと必死に追いかけるのだが、あまりの速度差に容易に振り切られ、その隙を突かれるかあっという間に後ろを取られて機関砲に撃ち抜かれる、その繰り返し。

 

 ワイバーンロードはもとより、魔王の側近であるマラストラス擬きも、まるで弱者。鷹や鷲などの猛禽類に狙われた獲物、捕食者と被捕食者のような関係性が築かれてしまっていた。

 

 生き残るだけであれば現状、隙を見て逃げれば何とかなるものの、言わずもがなリームの兵士にそれは許されていない。やったとしても、敵前逃亡で悲惨な末路を辿る。

 

 下手すれば、愛する家族にも何らかのペナルティが加わる可能性すらあった。

 そもそも、日本やミリシアルやパーパルディアの兵士がリーム本土まで攻めてきた時、一般人に何もしない保証が彼ら彼女らにとって、ないも同然。

 故に、頑張って戦わずに逃げる選択を、リームの兵士が選ぶ事は一切なかった。

 

『ふぅ……まあ、こんなもんか。一応聞くが、あんたらの方は大丈夫か?』

「ええ、問題ありません。兵装がスッカラカンになりましたが」

 

 なお、その頑張った結果は案の定報われる事などなく、ほんの数十分でアルーニを攻めようとしていたリーム側の航空戦力は、日本とミリシアル相手に何も出来ず、あっけなく全滅させられるのであった。

 

 ちなみに、空中からの援護と万億の吸血騎士を含む皇国軍、日本とミリシアルの即応部隊の奮戦によって、リームの地上戦力もさほど間を置かずに完全排除される事となる。




ここまで読んでいただき、ありがとうございます。評価や感想をしてくださっている方々には、心より感謝いたします。

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