「そうか、アルーニは守り切れたか。カイオス」
「はい、陛下。電撃的侵攻に一時は陥落の危機だったようですが、皇国軍の奮戦に加えて援軍の助力により、事なきを得ました」
日本とミリシアルの支援を受け、リームと本格的に戦争を行っているパーパルディア皇国。
その中心たる
カイオスやエルトが外交ルートで奮闘していた中、かつての出来事以降一歩下がった立場ながらも、自身が動かせる超兵器級の戦力を動かした。
国内各所や諸外国から、現政府の国家運営への干渉と取られかねないなどの、自身にリスクのある行為であると理解しつつ動いた彼にとって、この勝利報告は何より嬉しいものであったのである。
「そうか。まあ、理不尽の権化たる万億の吸血騎士……
「はい。彼らで不可能ならば、もう打つ手はありませんでしたからね。まあ、古の魔法帝国級の相手でもない限り、そうはならないでしょうけど」
「日本国……だな。今更だが、フェン王国で刃を交えた程度で済んで僥倖だった」
無論、カイオスや他の政府上層部の面々もそうなのは当然として、現場の軍人や皇国に住む一般人からも、ルディアスの懸命な判断に対して歓喜の声が上がる。
戦争の動向を見守る諸外国は理解を示し、当事者たる日本やミリシアルもルディアスの介入を歓迎している。
何せ、今回は純然たる国家防衛のために、自身の抱える戦力を使ったのだ。皇国の通常戦力のみで対応可能だったならともかく、明らかにそうではない以上、どこからも責められる謂れなどない。
もし、これで責めるような者が現れたとしたら、それはリームや南方連合の工作員か反ルディアス派による世論操作と判断されても、致し方ないと言えよう。
「しかし、これで終わりではない。リームの風見鶏共もまだまだ戦力は抱えている上、奴らを支援する南方連合……ああ、そう言えば確か、日本が人工衛星などを介して正体を掴んだんだったな」
「南方の文明圏外国家、
「真相は我にも分からん。だが、それ程の文明を持つ事実を隠すとなると、世界に露見してはまずい何かが
「確かに。そうでもなければ、わざわざ隠しませんしね」
そうして、ルディアスとカイオスの話はリームを支援する南方連合、もといアニュンリール皇国に移っていく。
今までは距離の問題もあるが、アニュンリール人の消極的態度や、国家そのものの底知れぬ不気味さから、パーパルディア側から関わる事ははほぼなかった。あっても精々、先進11ヵ国会議時に使者同士軽く挨拶を交わす程度。
しかしながら、ここに来て唐突に表舞台へと足を踏み入れ、リームを介して間接的ながら敵対してきた。それも、日本やミリシアルがパーパルディア側についているにも関わらず。
いくら自国を大きく上回り、ミリシアルすらも僅かに上回るかもしれない力を持っていても、そこへ日本も加えて喧嘩を売るなど、今のルディアスからしたら自国民を巻き込んだ壮大な自滅にしか見えない。
カイオスやエルト、その他日本を良く知る知日派の面々もルディアスと同じ考えを抱いている。
「それにしても……悉く、この世界の常識を打ち破ってくれるな。日本は」
「同感です」
「しかし、古の魔法帝国もまさか、こんな化け物国家が復活早々待ち構えているとは思うまい。慌てふためく光翼人の顔が目に浮かぶようだ」
「出来れば、復活してもらわない方が嬉しいのですけどね」
「うむ。いくら日本と言えど、魔帝が相手では無傷では済まないだろう」
純粋な科学のみで魔帝と同等かそれ以上、クルセイリース大聖王国との戦争では、魔帝のパル・キマイラを沈めている。
しかも、ある時期を境にミリシアルの大魔導師すらも超えるレベルの妖精が守護する塔が、
加えて、前述の妖精や精霊とはまた別の、日本古来の強大な『神秘』勢力が盛り返してきている。
これも、当然の如くミリシアルの国営放送を介して世界のニュースとなったが、ドン引きを通り越して無の境地に達する程の反応も多い。
現状、科学では文句無しの絶対的強者でありながら、魔法でも一気に下から駆け上がってきているのだ。平静を保てと言う方が無理難題である。
「ルディアス陛下~! 言い付け通り、敵を全員ぶっ殺してきたよ! あっ、カイオスさんも居たんだね!」
「おい。相手は偉大なる皇帝陛下と国家の指導者だぞ、ヴィリア。俺に対してならまだしも、口の聞き方と振る舞いには気を遣うべきだ」
「ふっ。ここは我の自室、公衆の面前ではないのだ。ミリオン、気にしなくてもよい」
「同じく。この程度、何とも思いませんので」
「申し訳ない。寛大なお心に、感謝致します」
そんなこんなで2人の会話が続いていたある時、唐突に室内に赤黒い稲妻を伴う黒い霧のようなものが出現、そこから任務を終えた万億の吸血騎士が灰色フードを脱いだ状態で現れる。アルーニでの戦闘を終えてから、僅か5分足らずの出来事だった。
無論、通常の手段で現れたのではない。兄妹が持つ固有の瞬間移動
なお、すぐに霧散した赤黒い稲妻を伴う黒い霧のようなものは、言うなれば特殊な形をした亜空間の門。故に、色は禍々しくとも毒性はなく、精神異常などを起こしたりする効果も当然ない。
1度に移動可能な距離など各種制限はあるものの、自分以外の生物や物体を運ぶ事も可能であり、上手く使えば戦闘にも応用が利く便利な能力である。
「さて……万億の吸血騎士よ。お茶会がてら、色々と戦場での話を聞こうか」
「勿論です」
「はーい!」
一言二言、この場に現れた万億の吸血騎士と会話を交わしたルディアス。念のため、戦場で大暴れしてきた2人からも話を聞こうと、気分転換を兼ねた自室でのお茶会に誘う事を決める。
なお、カイオスもついでに誘ってはみたものの、アニュンリール皇国絡みでの日本やミリシアルとの会談があるのを理由に、やんわり断られてしまっていた。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。評価や感想をしてくださっている方々には、心より感謝いたします。
本作独自の種族に関しての質問
-
多くして欲しい
-
多くしても問題ない
-
これ以上は望まない
-
作者にお任せ