光の申し子   作:松雨

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文明の偽られた町 

 鎖国政策を取り、諸外国との交流を極めて限定的なものとしている事を含め、様々な理由からかなり不気味に思われている、アニュンリール皇国。

 

 南方世界と呼ばれている広大な領域を支配する、文明圏外国家として認知されているものの、それは正しくはない。実際は、現在のミリシアルと同等か若干上程度には発展している、強大な魔導文明国家である。

 

 諸事情により国家を挙げて文明水準の偽装を行っていて、それ専用に本国の北側にある、四国より若干面積の広い『ブシュパカ・ラタン島』を、軍備も含め表向きの文明水準と同等に作り上げ、かつ唯一の交流窓口としている程だ。

 

「はぁ!? ちょっと待て、それは本当なのか?」

「はい、ゴルヴィス本部長。誠に残念ながら、本当です。」

 

 そんな、ブシュパカ・ラタン島北部の港町は今、非常に慌ただしくなっていた。正確に言うなれば、文明水準の偽装に関わる司令本部の役人や本国の役人、外交関係者だが。

 

 何故なら、この港町に本国のものではない第三国(日本)のものと思われる、空母2隻を含む10隻の艦隊がやって来ていると、通信士からワイバーンで哨戒中だった軍人を経由して緊急報告されたからである。

 

 ムーやグラ・バルカス帝国、神聖ミリシアル帝国のような本国からしてみれば旧世代の艦隊ではなく、科学文明でありながら明らかに同等の兵装を備えた艦隊。

 

 加えて、外交官の両側は自動魔導小銃に酷似した銃で武装した軍人(自衛隊員)が控え、ミリシアルが提供したと思われる魔導探知機により、攻撃魔法に対する警戒も非常に厳重なものとなっていた。

 

 外交官を含めて応対した人間、日本人の目がまるで敵を見るような目だった事も相まって、生きた心地がしなかったという。

 

「何と言う事だ! 理由は説明されてはいるが……どう考えても、何かしらで怒りを買っているとしか思えん! 本国なら恐らく心当たりはあるだろうが」

「こんな世界に身を置きながら、あまり力をひけらかさない温厚な国家として有名ですからね。日本」

「クソっ! こんなことなら、もう少し日本の情報を収集しておくべきだった!」

 

 ワイバーンで哨戒中だった軍人曰く、その艦隊を派遣してきた日本の外交官が言うには、目的は外交締結関連の話し合いであるようだが、それにしては警戒度合いが高過ぎる。

 

 アニュンリール皇国の艦隊と同等以上の艦隊を連れて来られれば、この世界の大半の国々にとっては砲艦外交も同然。現に、司令本部の役人や本国もそう判断しているという。

 

 しかし、説明された理由は主に、皇国周辺での原因不明の艦船沈没事例の多発、100m級の海魔の生息。その他にもあるにはあったが、例を挙げればキリがない。

()()()()()、皇国でも対処に苦慮している事象として発信している事が原因では、何も言えなかった。

 

 裏の事情を知る、本国役人や司令本部長のゴルヴィス以下数名に至っては、プレッシャーのあまり胃痛を発症してしまう程。

 これらが全て、とある目的の下に行われている鎖国政策の達成のために、皇国政府が秘密裏かつ意図的に起こしていると知っている故に、そうなってしまったのである。

 

「まあ良い。それより、北の港町の様子はどうなっている? あの日本が艦隊を派遣してきたのだ。文明圏外国家の奴らにパニックが伝染してもおかしくはないだろう」

「はい! しかし、それは我が国が対処に苦慮している現象への過剰な警戒心故であると、我が国と敵対しにやって来たのではないと説明し、どうにか落ち着いてはもらえましたが……納得いかない者もそれなりに居るようではあります」

「そうか、まあ無理のある説明だったのだ。致し方あるまい。当たり前だが、これが意図的とバレたら艦隊がそっくりそのまま敵へと様変わり。ブシュパカ・ラタンは灰塵に帰し、本国にも洒落にならない損害を与える事となるだろう。絶対に、気取られてはならんぞ」

「ええ、勿論ですとも!」

 

 そして、当然の如く日本の艦隊は、ブシュパカ・ラタンへ商売をしに来た文明圏外国家の人々の目にも入り、大騒ぎとなる。

 

 一応、司令本部の役人以下複数の有翼人がなだめた事によって、割かしすぐに騒ぎは収まったものの、彼ら彼女らの話題は日本が艦隊を派遣しに来た事一色だ。

 

 滅多な事では自衛隊の護衛艦を動かさない温厚な日本が、吹けば飛ぶ様な格下の文明圏外国家に、ムー以下であればそれだけで全戦力を殲滅出来そうな程の艦隊を派遣。

 

 それも、戦争中のリーム王国にも相応の戦力を派遣しておきながらなのだ。どう考えても、騒ぎにならないはずなどない。

 

 ちなみに、この北の港は本国の超巨大旅客船が複数隻停泊出来るよう、自然に出来た場所に上手い事作られているが、それでも200m級の艦艇込みで10隻ともなると、流石にかなりギリギリとなる。

 

 故に、港内に停泊しているのは旗艦でもある先進技術試験艦、もとい大型装甲護衛艦(イージスシステム搭載艦)『さつま』1隻のみ。

 

 281mもの大きさを誇る正規空母級の船体に、40㎜対空レールガンや近距離対空レーザー砲を各々1門ずつ、多数の性能向上版の対空・対艦ミサイルに各種誘導魚雷、127㎜速射砲2門を艦首と艦尾に各々備えている。

 

 流石に第二次世界大戦後期の戦艦クラスの装甲はないが、現代艦としては異例の装甲化が成されていて、動力源に関しても()()()()、他の護衛艦のものを発展させたものとなっている。

 

 無論、初めての事だらけであるさつまを建造するにあたって、技術的な問題は当然複数発生している。実際、ギリギリ戦場に投入出来る領域に達した今でさえ、全てを解決したとはとても言い難い。

 

 しかし、どちらかと言えば政治的な問題の方が遥かに厄介で、それでいて数が多かった。そもそもの話、さつまは旧世界にてアメリカの都合(外圧)により、半ば強制的かつ秘密裏に建造が決まった艦艇なのだ。

 

「あぁ……嘘……でも、あれはまさしく……」

「ん? お前は……フォトン(本国の魔導技師)じゃないか。青い顔をしてどうした?」

「あ……本部長!! もしかしたら、ですが……日本は、魔帝の海上要塞に比肩する船を作る程の技術があるのかも知れません!!」

「「……はぁっ!?」」

 

 なお、偶然か必然か、さつまの40㎜対空レールガンは魔法の有無や口径以外の要素では、魔帝の魔導電磁加速砲に似ている。

 神聖ミリシアル帝国でも、何かしらの形でさつまを見た事があり、かつ超兵器に関わる魔導技師や魔帝対策省の面々であれば、すぐに気づく要素だ。

 

 故に、アニュンリール本国の魔導技師はさつまを司令本部の窓から遠目で見た時、町中の文明圏外国家の人々がその大きさに驚く中、小口径ながら存在感を醸し出すレールガンを見て、冷や汗をかきながら驚いてもおかしくはないだろう。




ここまで読んでいただき、ありがとうございます。評価や感想をしてくださっている方々には、心より感謝いたします。

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