光の申し子   作:松雨

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本話の一部文章の改稿、および加筆を行いました。


最後通牒

 今現在、この世界の大半の人々が日本に対して抱く印象は、言うなれば穏やかな巨人。本国の民間人はともかく、つい先刻ブシュパカ・ラタンに艦隊を引き連れて来られるまで、日本との交流が全くなかったアニュンリール皇国の本国政府関係者ですら、ほぼ同様の印象を持っている。

 

 これは、他者(他国)を圧倒する国力(軍事力)を持ちながらも、それを滅多に表へ出すことなく、基本平和的に物事を解決する姿勢を取っているが故であった。

 

 人の性質は、この世界基準で見るとかなり異質ではあるものの、性格は基本どこでも好意的に見られる程度には穏やか。

 ミリシアルやムーを筆頭とした列強国、文明圏内か否かは問わず、酷い対応をしなければ比較的平等に接してくれる。

 何かやらかしてしまったとしても、誠心誠意謝罪した上で賠償を約束し、それを履行すれば威嚇のためにでも武力を向けてくることはない。

 

 当然、常識の違いなどからすれ違い、大きなトラブルになる事もあるし、日本人の中にも我を押し通そうとするなどして、他者に迷惑をかけたり傷つけるような愚か者も一定数は存在している。

 

 しかし、人口の多さから見た割合は低く、単純な人数でも少ないと言える程度。世界に与える影響度はまだしも、この世界基準で判断した際の民度は、とても素晴らしいと言っても過言ではなかったのだ。

 

「さて、単刀直入かつ速急に申し上げましょう。我が国は貴国……アニュンリール皇国に対し、最後通牒を突きつけます」

「最後通牒……」

「国交がなく、公式に承認していない国家同士である貴国と我が国……このような初接触になったのは、誠に残念です」

 

 だからこそ、日本が武力を持ち出してきたということは、それ即ち相当危険なラインにまで事が進んでいる証拠に他ならない。

 そこで引き返す判断を下せなかった場合、待っているのはかつてのロウリア、パーパルディアやグラ・バルカス、今現在絶賛戦争中のリーム王国のような運命だ。

 

 しかも、アニュンリールの場合は初手で外交官2人……近藤と井上から、書面にて最後通牒を突きつけられているため、なおのことたちが悪い。

 

 日本が艦隊と共に外交官を派遣してきた知らせを聞き、早急に会談の場所を用意して招き、相対しているアニュンリール側の2人……本部長のゴルヴィスや外交担当の『カール』は、まるで生きた心地がしない程の緊張感に苛まれている。

 

 なお、その内容は最低でも本日より2週間後までに工作員等も含めた貴国の軍勢を撤退させ、第三文明圏から完全に手を引くと確約すること。

 

 件の戦争にて被害を被った日本(我が国)や神聖ミリシアル帝国、パーパルディア皇国に対して()()()()()が謝罪し、相応の賠償を確約すること。

 

 これらが遵守されなかった場合、アニュンリール皇国(貴国)を脅威的な敵性国家であると認定し()()()()()()、その上で自衛隊と神聖ミリシアル帝国軍が合同かつ全力で対峙すること、以上の3つだ。

 

 日本とミリシアルという、この世界にて科学と魔導のトップを走る2ヵ国を本気で敵に回す事に比べれば、この最後通牒を受け入れた方が、普通であれば被害は小さくなる。

 

「こ、これは……まさか、そんな……」

「あぁ、なんということだ……」

 

 しかし、現在日本の外交官2人と相対しているゴルヴィスや外交官のカールは、内心で今後のアニュンリール皇国は色々な意味で地獄と化すと察した……いや、察してしまった。

 

 本来であれば、ミリシアルと同等かそれ以上な自国の文明を、文明圏外国家と同等レベルにまで落として偽装していた理由が、世界の敵たる魔帝の復活であるからだ。

 

 リーム王国の件がバレているだけでなく、海魔や魔導潜水艦などによって、秘密裏に他国の船を沈めてまで隠してきた自国の真の実力も、上空からと思われる鮮明な魔写(写真)と共に筒抜け。

 

 そうなると、最後通牒を受け入れたとしても世界一般的なアニュンリール皇国の認識との乖離から、何故ここまでして秘匿していたのかと強い疑念を持たれ、最悪そこから巡りめぐって真の目的が明るみとなり、世界が敵に回る。

 

 受け入れなかった場合は、怒れる日本とミリシアルとの戦争が始まって多数の犠牲を払うのみならず、その過程で魔帝の復活を企んでいる証拠が回収され、同様に世界が敵に回って国が焦土と化す。

 

 今のミリシアルと()()()()()()()()()()()では、どう足掻いても世界を相手取るには断然力不足。ある程度の補給が見込める状態で、なおかつ魔帝か日本と国力や技術力が互角くらいでないと、戦いすら成立しないか一瞬上手く行く程度で終わる可能性が高いのだ。

 

「貴国は、その行為により我が国の友好国のみならず、我が国の民を間接的に害した」

「……」

「それに、ついでと言っては彼らには大変申し訳ありませんが……貴国は、グラメウス大陸のエスペラント王国やヘイスカネン、グラ・バルカス帝国近辺でも間接的に戦火を焚き付けている」

「ぐっ……!」

「我々にはまるで、かつてのグラ・バルカス帝国のように世界征服でも企んでいると、そう言わんばかりの行動としか思えない」

「……」

 

 ちなみに、アニュンリール側は海を経由したものだけではなく、空を介した情報漏洩にも同様に気を遣っていたし、国内に潜むスパイや裏切り者経由の漏洩なども想定し、対策を重ねてはいた。

 

 魔帝を除けば最高クラスの魔導文明国家であり、他国への驕りのようなものがある中では、かなり警戒心を持てていた方だと言える。

 

 ただ、やはりまだ足りなかった。日本が僕の星(魔帝の人工衛星)と同等のものを持ち、造れる技術があることさえ早めに頭に入れられていれば、少なくともリーム王国を裏から支援することはしなかった。

 

 ましてや、目立つようにして世界中に手を回すなんて真似は、言わずもがなしなかっただろう。

 

 まあ、現状どこかに遠征して奪うことを考慮に入れなければならない程の資源状態な上、魔帝の復活を第一に考えている以上は、遅かれ早かれこうなるのも必然。

 

 進もうが退こうが、アニュンリールが地獄と化す事が確定したのも、まさに自業自得と言わざるを得ない。

 

「とにかく、この最後通牒を受け入れてくれることを願います。貴国のためにも」

 

 なお、日本の外交官2人はアニュンリール側に最後通牒を突きつけ、底冷えするかの如く声色で告げるべき事を告げるという目的を達成している。

 

 故に、冷や汗ダラダラで青い顔をするゴルヴィスとカールを尻目に、護衛の自衛隊員と共にさっさとこの場を後にしていくのであった。




ここまで読んでいただき、ありがとうございます。評価や感想をしてくださっている方々には、心より感謝いたします。

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