光の申し子   作:松雨

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アニュンリールの決断

 ブシュパカ・ラタンへの日本艦隊来訪、およびそこで突きつけられた最後通牒については、会談終了後外交官のカールを通して即座にアニュンリール皇国の本国政府へと伝えられた。

 

 皇都の『マギカレギア』を含む数々の都市、各種軍事施設や魔帝の超兵器関連の施設が写った衛星写真、世界各地で行われている戦争やその他事象への介入の証拠など。

 

 これら、今回のリーム王国の件とは全く関係ないが、それと同等以上に漏洩してはまずい案件が日本に筒抜けだった件も、当然伝えられている。

 

 結果、アニュンリール本国政府や関係各所は蜂の巣をつついたかのような騒ぎとなり、挙げ句の果てに情報漏洩の犯人探しが始められるなどで通常業務に支障をきたす程、酷い状況になってしまった。

 

 ただし、皇帝である『ザラトストラ』を含む複数人の皇族が自ら動き、関係各所に落ち着くよう強く促した事もあって、それ程長くは騒ぎが続かなかった。

 とはいえ、日本がどうやって情報を掴んだのかに関する調査自体は、いずれ行われると確定している。

 

「リームへの支援? そんなもの、今すぐにでも打ち切れ。奴らがいくら騒ごうが知った事ではない」

「今すぐにですか? 魔帝の遺産の件もありますが……」

「致し方あるまい。ミリシアルだけならまだしも、日本も同時に相手して勝ち切れるだけの力は今の我が国にはない。ましてや、世界中を敵に回すなど愚の骨頂だろう?」

「それは確かに。えっと、貸与した武装の処遇は如何しましょう?」

「相手が相手、損失を前提で用意はしたが……出来る限り回収しろ。前線とその付近に配備されたものは、最悪回収出来なくとも致し方ない。重要書類なども回収、もしくは即座に燃やせ」

「了解致しました。すぐさま指令を飛ばします」

 

 日本艦隊来訪の翌日、あらかた騒ぎが落ち着いてから半日後に行われた緊急会議にて、ザラトストラの一声により実質リーム王国の終了が確定する事となってしまった。

 

 だが、アニュンリールは善意で裏からほぼ無償で支援をしていたのではない。リームが偶々自分たちにとって非常に都合が良かったから、面倒な手順を経てまで支援をしたのである。

 

 そもそもの話、有翼人は魔帝を作り上げた光翼人(先祖)程ではないものの、他種族への差別感情が強い。

 

 であれば、逆にリームへの支援が自分たちにとって都合が悪くなった場合、何の迷いもなく打ち切るのも至極当然と言えるだろう。

 

 ちなみに、リームの件と同時進行していた他の案件に関しても、魔帝復活の鍵となるビーコン回収以外は凍結すると、軽い感じで決められた。

 

 ザラトストラがそう言ったからというのもあるが、会議に参加している他の面々も日本を今敵に回した場合の損害を考え、恐ろしくなった事が要因で反対意見などは全く出てはいない。

 

「問題はこっちだな。ヒスタスパ、今すぐはとても無理だが、出来る限り早めに魔帝関連の省庁には手を加えねばなるまいよ」

「あー……我々が、国を挙げて魔帝復活に尽力していると知られたら……」

「日本が、どのような手段で我々の隠蔽を突破したのかが分からん以上、いつ情報が抜き取られてもおかしくはない。我々と力量が近いミリシアルにでも知られれば最悪だ」

「もしかしたらですが、既に手遅れかもしれませんよ」

「ああ。だが、まだ間に合う可能性もある以上、やらねばならない」

 

 リーム王国の実質的終了が片手間で確定する最中、次なる話題は魔帝関連の情報に関する漏洩対策へと移っていく。

 

 アニュンリール皇国には、魔帝復活を前提に動いている国であるが故に、誰が見てもどういう機関なのかがすぐ分かるくらい、ど直球なネーミングの国家機関が複数存在しているからだ。

 

 日本の転移前であれば、ミリシアルを含む列強諸国の目を欺くのみならず、中規模の文明圏国家に攻め込まれる程に隠蔽が上手く行っていたので気にせず済んだが、今はそうではないのである。

 

 昨日の時点では知られていない線が濃厚ではあるものの、推定される調査能力からしてこのままでは力不足も甚だしいが、どれだけ尽力しても1~2ヵ月程度で完璧に対策出来る案件ではない。

 

 しかし、日本はアニュンリール本国政府の謝罪と賠償を強く求めている。ブシュパカ・ラタン島の偽装政府は、日本にとってはあくまでも地方自治体かそれに準ずる扱いなのだと、ザラトストラ他上層部はそう見ている。

 

 そして、本国政府の列強3ヵ国に対する謝罪と賠償はこの際仕方がない(コラテラルダメージ)としても、列強3ヵ国の人間の本土への上陸や大使館の設置だけは、現状何としても回避しなければならない状況。

 

 彼らを経由して世界全体に自国の真の実力が明るみになるのみならず、それらを隠れ蓑にありとあらゆる工作員が入国して、アニュンリール全体に散らばりでもすれば、言い逃れの出来ない確たる証拠が大量に確保される確率を、著しく上げる事にもなりかねない。

 

「日本、何とも恐ろしい国。神々……国旗からして太陽神だと思うけど、魔帝やそれに与する者を完膚なきまでに叩き潰すために、遣わされた使いのようなものなのでは?」

「神々の使いか。うーむ、魔帝の海上要塞の主砲と酷似した武装を載せた戦闘艦、我々の隠蔽を易々と突破して秘密を丸裸にする調査能力、そして異世界からの転移国家。あり得る」

「しかし、あれ程強力な使いともなれば、相応の対価は払わないといけないのではないでしょうか」

「さあな。その辺は、神のみぞ知るという奴だろう」

 

 内心でそのような事を考えているためなのか、ザラトストラを含む緊急会議に参加している面々はここに至り、満場一致で日本をこの上ない程の脅威的な国であると認定するのであった。




ここまで読んでいただき、ありがとうございます。評価や感想をしてくださっている方々には、心より感謝いたします。

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