光の申し子   作:松雨

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リームの魔帝超兵器管理課

 第三文明圏準列強であるリーム王国と、ミリシアル・日本・パーパルディアの列強3ヵ国が連合を組み行う戦争。

 衝撃を以て受け止められたこれは、多くの人々が予想しているようなリームの圧倒的不利(流れ)で、状況が推移している。

 

 南方連合ことアニュンリール皇国の支援により、一部の戦闘初期ではパーパルディア皇国軍を蹂躙したものの、それですら秘匿戦力やミリシアルと日本の援護が加わった瞬間から逆転、敗退を繰り返していた。

 

 加えて、その支援も日本が正規空母やさつま(先進技術試験艦)を含めた艦隊をブシュパカ・ラタンへと差し向け、アニュンリール本国へ強い軍事的圧力をかけた事によって、10日程で一方的かつ強引に打ち切られてしまう(全てなかった事にされた)

 

 それどころか、打ち切りの過程でリーム側に一定数の死者も出ている。このままでは、破滅的不利となるまでにそう時間もかからないだろうというのが、リーム王国軍や政府上層部の見解だった。

 

「まさか、これ程までに早くこいつの出番が来るとはなぁ」

「南方連合も身勝手に支援を止めて引き上げましたし、戦況も最悪。現状取れる最善手はこれしかない」

「ああ。しかし、相手には同じ魔帝の古代兵器を擁するミリシアルが居る。日本も併せて対峙するとなると……はぁ」

「それでも、圧倒的に強い。我が国の通常兵器など、日本やミリシアルにとっては赤子の手を捻るようなものですから」

 

 故に、バンクス(国王)はリーム唯一の魔帝の超兵器、ティルターン(魔鋼の巨人)を解放してパーパルディアへと進撃させる事を決定した。

 

 幸か不幸か、今はパーパルディアに亡命している宰相と星の妖精によって、ティルターンにはアニュンリールの手が届いていない。

 その上で、遺跡での保管状態がこの上なく良好というのも相まって、列強3ヵ国が相手でも相当な立ち回りをしてくれると、リームの魔帝超兵器管理課の面々は見込んでいる。

 

 なお、乗り込んで操縦するための操縦士2名の技術はまるで足りていないが、そこは高精度の魔導コンピューターやマニュアルによる補助で何とかする手筈となっているが、本当に何とかなるかは不透明。

 

 本物を動かすのと遜色ないシミュレーション機器、何の憂いもなく操縦訓練を行える環境が存在しない。

 

 魔帝兵器に関わる経験が、ミリシアルに比べて圧倒的に不足しているという絶大なハンデがある中で、これは相当な痛手であろう。

 

「なーにを過剰に心配してんです? ティルターンの凶悪無比な武装の数々、まさか忘れたと?」

「うるせえよナドン。んなもん、忘れる訳ねえだろ」

「同じく。ただ――」

「やはり……そうは言いましたが、うちも1機でミリシアルや日本を相手するのは不安……というか、ぶっちゃけ無理かと。もう少しうちに権力と勇気があれば、軍人の彼らを死地に送らず済んだかもしれないのに」

「貴女のせいではない。我々は一介の軍人ないし軍属の技術者、上の方針に逆らうだけの力はないのだ」

「世知辛いですね」

 

 加えて、搭載されている武装は、自国では替えが全くといって良いほど利かない。予想外のトラブルなどで故障でもされれば戦力の弱体化は必至であり、それが動力源……魔核波機関であった場合は悲惨の一言。

 

 たとえそれが一切なくとも、主力となる各種誘導魔光弾の弾数や()()()()()()()()()に必須の、特殊な液体魔石燃料の保管量に限りがある以上、早急に決着をつけなければ大幅な弱体化は免れない。

 

 何より、戦場まで素早く運搬するための手段がない。魔帝がこの超兵器を遠方に運搬する際には、輸送特化型空中艦(パル・キマイラ)と呼ばれる艦艇を使用していたのだ。

 

 仮に、首都近郊が戦場になっていれば話は別ではあったものの、現在の陸戦場はリーム側の国境付近の町村。相応に距離が離れている。

 

 各種誘導魔光弾ですら100~200km程の射程で、それ以外の特殊魔法兵器は効果こそ極めて強力だが、射程が最も長いもので12kmと現代戦としては異様に短い。

 

 更に、歩行速度は平地で最大時速65km、各部に取り付けられた外付け姿勢制御魔導ブースターにより飛行も出来なくはないが、あくまでも純粋な機動力の壊滅的な低さを補助するものであるため、短時間しか不可能。その状態での戦闘など以ての外だ。

 

「なあ、これからどうなるんだろうな。リーム」

「言いたくはないが、ロクでもない未来になる。上層部が、日本やミリシアルがティルターン1機で勝てる程度の国かどうか、もっとよく考えるべきだった」

「それに、ネガティブキャンペーン酷いもんな。宰相様が居なくなってから余計に酷くなってきてるし、俺が日本やミリシアルの立場だったら、こんなクソ国家とはもう縁を切りたいと思うぜ」

「本当ですよ……あーあ、うちらの家族さえ人質になってなければなぁ」

「「……」」

 

 それらを含め、世界の状況を一定程度理解している魔帝超兵器管理課の面々は、非常に憂鬱な気分の支配下に置かれていた。局地的には勝てても、戦争そのものに勝てる確率は極めて低いと示されているも同然なのだし。

 

 しかし、だからと言って管理課の面々もリームの軍人たちも、上に逆らうという選択肢はあっても取れない。

 

 自分たちだけが傷つくのであればまだしも、大切な存在が傷つくかもしれないともなれば、至極当然の話ではある。




ここまで読んでいただき、ありがとうございます。評価や感想をしてくださっている方々には、心より感謝いたします。

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