アルーニの中心街付近に居を構える、日ミ2ヵ国合同軍司令部の司令会議室は、今までの戦勝気分が大風に吹かれた塵レベルで吹き飛び、雰囲気が変化していた。
出現警告以降、自分たちに牙を向ける現実的な脅威として認識していた、魔帝の超兵器魔鋼の巨人もといティルターンが、予想を遥かに超える凶悪無比な防御能力を誇っていたためである。
「どうするのだあんな化け物! 我々とミリシアルがあれだけ撃ち込んでも、未だに破壊出来ていないどころか、まともなダメージすら与えられていない!」
「うーむ……バリアや強固な装甲で防がれたという訳ではなさそうですが、私には何とも。ミリシアルの方々の方が詳しいかと」
「すまないが、私らにもあまりよく分からんのだ。魔帝の兵器は対策省の管轄、
「正直、ここまで厄介な相手とは思いもよりませんでした。まるで、空中戦艦がおもちゃ……失礼。相応しくない発言でした」
「気にするな。ぶっちゃけ、俺もこいつもそう思っている」
新旧入り交じった日本の高性能
特に、ティルターンから数km圏内という近距離での迎撃速度が、まさしく異常としか言い様のないものだったのが2ヵ国……とりわけ、日本の自衛隊の面々を戦々恐々とさせてしまっていたのだ。
しかし、直接的なダメージは与えられずとも、間接的には相当なダメージを与える事に成功したと言えなくもない状況ではある。
この場に居る者たちは真相こそ知らないが、ティルターンのミサイル防衛最大の立役者である、秘匿された魔法『
当然、魔力の流れによる負荷は凄まじい事になり、状況によってはオーバーヒートのような事態に陥り、最悪一部が破損したりという事もない訳ではない。
事実、ティルターンの歩行速度が現在攻撃前と比べて7割減少しているが、これは移動に関わるシステムに障害が発生し、魔導回路がまさしく同様の理由で破損しているためなのだ。
そして、今現在も続けられている日本やミリシアルによる攻撃により、徐々に歩行速度は低下している上、他所のシステムにもガタが来始めている。
無論、こんな事もあろうかと半手動の修復機構が備わってはいるため、攻撃の手を緩め時間を与えてしまえば、いかに操縦士が素人で魔力が足りない状態であれども、何とかなる。だが、戦闘中故に修復に必要な時間を確保するのは不可能に近い。
修復しようとして防御能力が一時的に大きく低下しようものなら、その隙を突かれて破壊されてしまうのだから、至極当然と言えよう。
「ひとまず増援部隊が来るまで、現有の地上戦力で奴の相手は、防衛以外では止めておいた方が良いだろうな。例の魔法とやらの影響力が、地上に及ばないとも限らん」
「大軍拡計画……この世界に来る前からやっていれば、あるいは……」
「ああ、貴国が先日大々的に報道していたあれか。国内の反発が激しいと聞いたが、大丈夫なのか?」
「正直分かりません。しかし、大丈夫でなくとも必ずやらねばならないことではあるでしょうね。何せ、あんなのを2機3機と保有する悪の帝国が、いずれ確実に復活するのですから」
「……確かに。何なら、もっと保有してそうだがな」
加えて、攻撃能力に関しても防御に引けを取らない脅威度だが、単純にリームに存在していたティルターンには搭載数が少なく、主に陸上自衛隊が敷いた防空網を攻略出来ず、遠距離武装が枯渇した。
また、ここへ来てリーム側はやけくそだと言わんばかりに、温存していた通常戦力を解放してきたのだが、その殆んどが日本やミリシアルにとっては数世紀も昔の相手と言わざるを得ず、パーパルディアにとっても旧式の旧式。結果は無論、アルーニの遥か手前で阻止に成功していた。
だからこそ、戦争中にも関わらずこのようにして対策のための会議や増援の要請などといった時間を、比較的余裕を以て作る事が出来ているのだ。
「さてと、例の謎魔法について考えていても仕方ない。ともかく、我々の攻撃を受け続けてもなお、未だに進撃を続けるあの化け物にどう対処するかだが……」
「物資が枯渇する勢いで、遠距離攻撃をし続けるしかありません。幸いにも、全くの無傷ではないようですので」
「持久戦か。しかし、今回の対リーム戦争……パーパルディア単体ではとても無理だったろう。我々と日本の支援が何とか間に合ってよかった」
「罪なき犠牲者が増える事は、平和を望む者として決して許してはなりませんからね」
しかし、現状日本とミリシアルの技術力と物量によるごり押しは、最も有効な手段として働いている。『虚廃』の近距離防御能力が異常に高過ぎたせいで、本当に有効なのかと両国にとって疑念が浮かぶ位には、与えたダメージが少ないが。
その上、両国は念には念をという事で更なる物量の追加や、数は少ないものの次世代の
日本は、地上・車載発射型の【25式大型対地誘導弾】。ただし、相手が動く巨大人型兵器とは当然想定になかったため、期待通りの性能を発揮してくれるかは不透明。
ミリシアルは、以前から既に存在していた大型魔導爆弾のジビルを、破壊力はそのままに小型化した【ジビルⅡ】。ただし、こちらも技術面での不安が僅かながらあり、破壊力も高い故に使用可能場所は限定される。
ちなみに、投入を決定しているとは言われているものの、それはあくまでも現存の兵器ではティルターンを倒し切れず、アルーニが蹂躙される恐れが高くなってきた場合にのみ。
「全くだ。ああ、平穏な日々が待ち遠しいよ。自衛隊さん」
「……そうですね」
想定にない振る舞いを行い、味方や無関係な民間人に被害を与えてしまう事を、両国は何よりも恐れているのだから。
本作独自の種族に関しての質問
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多くして欲しい
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多くしても問題ない
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これ以上は望まない
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作者にお任せ