自由気ままなポケモン旅   作:火野ミライ

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無印~カントー編~
レポート0.旅立ちの音色


槍の様に落雷が落ち、絶え間なく振り続ける雨。風は木々を吹き飛ばし、海は激しく揺れる。海生物がせわしなく動き、暗雲の中で巨大な影がぶつかり合う。その戦いで生じた稲妻が海の真ん中で波に揺れる一隻の観客船に落ち、爆炎を上げ海を赤く染める。船からなんとか身を出し助かった一部の人々だったが高波に飲まれ夜闇の中へと消えていくのだった……………

 

やがて上空でぶつかり合った黒い龍と黄色の怪鳥がどこかへと消えた頃、小さな島の中央に塔がそびえ立っている忘れ去られた島。かつて所有していた大富豪によって【リバティガーデン島】と名付けられたこの島に船の残骸にしがみついた一人の女性が漂流してきた。

 

その時生じた小さな物音。それに反応した額のV字が輝く小さな羽を持つ生物。塔の外へと飛び立ち、雨の中を飛ぶ。やがて漂流した女性の元へとたどりついた。

 

浜辺に倒れる女性は20代中半であり、身体のあちこちから血を流しており瞳は何も映していない。今に星になりそうな女性の姿に小さな生き物が慌てて近寄りどうしようかと慌てふためく。その物音に意識が無かった女性が反応した。

 

「ねぇ、この子を…………」

 

耳を澄まさなければ海面に打ち付ける雨音に遮られそうな小さな声。喋る事も辛そうな女性は大切に抱えていた布に包まれた何かを小さな生物へと差し出す。

 

「私達の、息子を……………」

 

言葉を最後まで紡ぐ事をできずに空へと旅立った女性。その手に握られていた布が無慈悲にも地面に落ちそうなところをなんとか受け止めた小さな生物。その時一筋の風が吹き、中に入っていた赤ん坊が顔を出す。水色に輝くその瞳が託された小さな命を見つめた時、この出会いを祝福するかのように月が顔を出すのだった。

 


 

ポケットモンスター、縮めて【ポケモン】。

森に、洞窟に、海に、空に、宇宙、この世界の様々な所に生息する不思議な生き物。人々は彼らと支え合い生きている。その種類や生態にはいまだ分かっていない所が多い。

 

彼らの共通する生体を利用し【モンスターボール】と呼ばれる手のひらサイズのボールでゲットし、人とポケモンは家族のような関係へとなっていく。中にはポケモンの強力な力を悪用する者が現れるが、ポケモンの力を借りなんとかなるケースも多々ある。

 

そんなポケモンと人が共生する世界にある一つの地域【カントー地方】の【マサラタウン】に僕は要る。普段はカントー地方から遠く離れた【イッシュ地方】で暮らしている(と言っても他の地方へと旅しに行くこともあるから常に家にいるわけではない)。

 

そんな僕が何故この地にいるのか? その疑問はマサラタウンに生みの親の母方の祖父祖母が暮らしているからの一言で片付くだろう。この世界に生まれて初めて顔を合わせた2人は出会い頭に涙を溜めながら抱擁をしてきたのにはさすがに驚いた。しかしそれと同じぐらい生みの母が愛されていた事が分かった。

 

正直言って今年で17歳になる僕が受け居られるか否かという事は気にして無かった。僕はただ、腹を痛めて生んでくれた人の顔を知りたかっただけなのかもしれない。そう思いながらカントーへとやって来たのだから。それでも彼らの感極まった声に心が温まり、なにか付きものが取れた気はした。それから積もる話をしたのが昨日の話。

 

現在は一夜明け、いろいろお世話になった【オーキド博士】の元へ向かう。イッシュ地方ではなかなか見る事はない野生や外飼いのポケモン達の姿を眺めながらゆっくりと歩みを進める。この後は【クチバシティ】に行く以外予定は無いから、カントー巡りをしても良いかもしれない。

 

なんて考えを巡らせながら風で少し浮いた帽子をかぶり直し、再び歩み出そうとしたところで視線を感じ後ろに振り替える。

 

「ピギッ!?」

 

振り返った先に居たのは水色のノースリーブに赤いスカートを履き、その上から青に近い緑のジャケットを羽織り、足元はルーズソックスに白のスニーカー。赤い髪をツーサイドアップにし白い帽子をかぶっている小柄な少女。こちらを見つめる青緑色の瞳に涙を浮かべ震えている。

 

登り始めた朝日の輝きや雲の間を抜け、スポットライトの様に目の前の少女を照らす。それにより少女が黄色の肩掛けカバンをしている事に初めて気が付いた。少女の服装とスニーカーが新品の輝きを放っている事から駆け出しのトレーナー。それもこれからオーキド博士にポケモンを貰いに行くところ。

 

そんな彼女からしたら僕は身長的にも恐怖の対象でしかないだろう。容姿も性格と違って怖いと思わせるようだし……… 後頭部を優しく掻きながら少女へと近づき視線を合わせる為に軽くしゃがむ。

 

「僕はトウヤ、海の向こうからやって来たんだ。君は?」

 

優しく問いかけると少女は恐る恐るだけど口を開いてくれた。

 

「ル、ルビィでしゅっ!」

 

出来るだけ優しい笑みを浮かべるそのそばで小さなポケモンが羽を広げ空へと飛翔した。この少女【ルビィ】との出会いが僕、【トウヤ】のカントー旅の始まりだった。




キャラクター紹介「トウヤ」
イッシュ地方からやって来た本作の主人公。これまで様々な地方を旅してきたからポケモンの知識や身体能力がかなりのもの。次の目的地はクチバシティらしいが…………

好きなカントー御三家は?

  • フシギダネ
  • ヒトカゲ
  • ゼニガメ
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