TUONI ~闇を被った死神~   作:サークル『熊の巣穴』

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2021年5月29日22:37 永葉県大桑村大桑山城跡

 

 かつて、この地域の支配者が城を築いた山頂。

 そこに野心を持つ者達が陣を築いていた。

 

「……どういうことだ」

「いかがなされました?」

 

 上級魔将軍ラーイー。

 巨人の骨といった外観を持ち、眼孔の奥からは緑色の光が漏れていた。

 この侵略を魔王より任された最上位の責任者。

 

 そんな彼が、不機嫌な様子を見せたのだ。

 従者の魔族が息を呑むのも無理はない。

 

「統治者の気配が消えた」

「あの村長を名乗る者ですか。所詮は下等生物、分不相応な真似をしたのでしょう」

 

 ブンと風を切る音。

 直後、発言した下級魔族の頭部が潰れ、小さな頭脳とそれを守る脳漿が砂利に吸われていった。

 

 従者達に緊張が走る。

 

「分不相応なのはお前だ! 下等生物とはいえ、私の血をたんまりとくれてやったのだぞ!」

「その通りですっ、ラーイー様!」

「無礼者めっ、このこのっ!」

 

 あるものはラーイーを支持する言葉を叫ぶ。

 またあるものはかつての同僚であった肉塊を足蹴にし、唾を吐いた。

 

「ふん、このくらいにしておいてやろう。次の教育でもう少し反省するだろう」

 

 場の空気が落ち着くと、ラーイーは気を取り直して状況の分析を始めた。

 

「カサンディをやった者は?」

「見つかりませんでした」

「デミノをやった者は?」

「見つかりませんでした」

 

 今度はふたり分の肉塊が地面に横たわった。

 

「なんと……私は部下に恵まれていないのだ。命令違反者か無能しかいない!」

「そのようなことはありません! 私がおります!」

 

 従者の下級魔族が挙手した。

 ラーイーは彼を一瞥すると、ひとつ尋ねた。

 

「では、この状況を見てどう考える?」

「わかりません」

 

 ラーイーはこの従者を両手で掴むと、頭部を引き千切った。

 

「いいか、少し考えろ! 銃? だかなんだか。この世界の武器を使うふたり組! それがカサンディが死ぬ直前で報告され、デミノが絶望源をぶち壊しに向かった直後、やはりあの爆音が確認されている!」

 

 続いて、彼の脳内でこの村の地図が開かれる。

 研修センター。彼らが絶望源と呼ぶそこのすぐ下には、ラーイーの眷属である前村長の邸宅がある。

 気配が消えたということは即ち、死んだということ。

 

「狩られているのだ。魔将軍が」

「なんとっ」

「魔将軍様方が?!」

「また魔法少女かっ!」

 

 賑やかし達が特に考えもせず騒ぎ始めた。

 過去に制圧した敵対派閥の奴隷達。

 頭数を揃える伝令役ならば十分と考えていたが、思った以上に使えない。

 

 数人の顔面を潰すと、彼は改めて指示を出した。

 

「ここもじき狙われるだろう。下等生物どもで山道を固めろ」

「了解しました!」

 

 この程度の指示ならば、下級魔族でも果たすことが出来る。

 トテトテと走る赤い背中を見送ると、入れ違いにふたりの下級魔族が現れた。

 

「ラーイー様。亡骸をお持ちしました」

「ふん。そこに置いておけ」

 

 彼らが置いたのは、巨大な線虫の口しかない頭部。

 そして、炭化した肉片だった。

 

「そうかそうか……そういえば、お前の本体はこんなだったなぁ」

 

 線虫───カサンディの亡骸を拾い上げたラーイーは自身の指に切れ込みを入れた。

 指から黒い血が滴り、カサンディの身を覆っていく。

 

 ぽい。亡骸が放り投げられ、地面を転がる。

 血が体へ染み込み、黒ずむ。

 すると、突如として亡骸が暴れ始めた。

 

 陸に打ち上げられた魚の如く、ビチビチと跳ね回る。

 跳ねるたびに力が増し、失われた肉体が再生していく。

 本来の姿を取り戻すのに、5分と要さなかった。

 

「ご命令を。ラーイー様」

「ほほほ。いいザマだ、裏切り者の虫けら(・・・)め」

 

 侮辱の言葉を投げ掛けられても、カサンディは頭を伏せるような姿勢のまま動かない。

 文字通り、意思のない眷属として服従しているのだ。

 

「私はこれより暗黒儀式の準備に入る。それまでの間、共に山道を守れ。カサンディ。お前の身体はその辺の下等生物のものを使え」

「仰せのままに」

「はぁい」

 

 かつての横暴な姿はなりを潜め。

 従順な配下となったふたりは、命じられるまま山道へと向かっていった。




◆再生怪人出現ッ!!!
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