TUONI ~闇を被った死神~   作:サークル『熊の巣穴』

60 / 214
7

 少しして、獄介が戻ってきた。

 

「ちょっと、電気が通ってないみたいですね。すぐ良くなると思うので」

 

 などと、瑩達を落ち着かせるようなことを言ってみせた。

 しかしそれはおかしい。ならば、倉庫の照明は何だと言うのか。

 

「でも、そこの電気ついてますよ?」

「ソーラーパネルがあるからね。日中の陽射しが強かったら、一晩は十分賄えるんだ」

 

 なるほど、それならば問題はないだろう。

 しかし顔面を蒼白にしたままでは、説得力がない。

 

「なにかあったんですか?」

「えっ」

 

 明らかに尋常でない様子を感じ取った瑩は質問をぶつけた。

 この反応がまた露骨だったが、やや間を置くと、彼は口を開いた。

 

「電話回線も、ダメみたいで」

「電気が通らなかったら、電話も繋がらないんじゃ?」

「いや、ここは避難場所の公共施設だから、電話回線だけで通話できる固定電話があるんだ」

 

 光回線でなければ、通話に必要最低限の電力供給は電話線のみで行える。

 過疎地である大桑村でも、災害時などはそれで問題なかった。

 しかし双方が使えないとなると、線そのものに異常が発生した可能性があった。

 

「この施設だけの問題……ということはありませんか?」

「どうでしょう。それは降りてみないと」

 

 その推測は、スマホの電波が届かない時点で怪しかった。

 電波を発するアンテナは、少なくともこの施設が管理しているものではない。

 

 瑩は出入り口から外を見渡した。

 多目的ホールと旧校舎、それぞれから線が延びている。

 その先には電信柱。もちろん、途切れてはいない。

 

 恐らく線に問題はない。ならば、原因はここよりも上流にある。

 

「大丈夫よ。そのうちどうにかなるから」

 

 弥生は生徒を安心させたかったのか、あるいは本心からか、能天気なことを言い出した。

 常識的に考えて、彼女がそんなことを言える状況ではない。

 

「先生……電波が届かないのに、どうやってJVFから連絡受けるつもり?」

「……あっ」

 

 自分の車が壊れていることは、完全に頭から抜けていたようだ。

 

「じゃ、下まで様子見に行ってくるので、待ってて下さい」

 

 さすがにここは動かないと、クレームが入って自分の職が危うくなる。

 こういう時に機転が効く獄介は駆け足でホールを飛び出した。

 

 倉庫の備品には、用途がよくわからないが木刀が含まれていた。

 何やらへこみや欠けが見受けられるそれを手に取る。

 瑩はそれを片手に、ホールを飛び出した。

 

「えーちゃん!?」

 

 その形相は尋常ではなく。

 友達の春香や、指導する立場であるはずの弥生ですら、彼女を呼び止めることは出来なかった。




◆一体なぜ木刀を───?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。