転生したら猫妖精だった件 作:スライム作者
500人のゴブリン達を迎えた翌日。
リオンの予想通り、名付けをしたゴブリン達は進化をした。
進化したゴブリン達は早速狩りや素材集めに動き出し、まだ名付けの終わってないゴブリンは村での作業となった。
「それじゃあ、リグルド。少し出てくるよ」
「リオン様、やはり村の外に出るのなら護衛を付けた方が……」
「心配いらないよ。今はこの辺りで危険な魔物なんて出ないだろし」
「そ、それはそうですが……しかし万が一という事もございますし……」
「大丈夫だって。何かあったらエンリュウに連絡を寄越して。エンリュウ、頼んだ」
『承知しました、リオン様』
リオンはリグルドとエンリュウに見送って貰いながら、村を出て森の中に入っていった。
「ここならいいかな」
そう呟きリオンは、纏っているボロ布の背中に入れた切れ込みから翅を出す。
その翅は透明の薄緑色で、鋭利な刃物の様に光っていた。
「よし!いくか!」
掛け声と共に、空高く舞い上がる。
この翅は、リオンの持つユニークスキル《
その為の翅だった。
この翅については、水浴びをしている際にリムルに指摘されて気づき、今は自由に空を飛べるように訓練をしている。
(俺の今までの生き方は、籠の鳥みたいだった……それが今じゃ、籠から飛び出し自由に大空を飛んでる……)
そんな事を考えながら飛行訓練をしていると、遠くから何かが聞こえた。
「ん?なんだ?」
声らしきものがする方に向かうと、そこには細身の直剣を持った1人の猫耳少女と、その少女に対峙する細身の直剣を2本手にした狼耳少女、そして、槍を持つ2人の牛の頭をした男が居た。
「もう限界なんじゃないかい、
狼耳の少女はそう言って、猫耳の少女に言う。
「……誰が渡すものですか!あなた達の思い通りになどさせません!」
猫耳の少女は強い意志を持って、狼耳の少女の言葉を拒絶していた。
だが、その言葉とは裏腹に、猫耳の少女は既にフラついており、立っているのもやっとの状態に見える。
それでもなお、猫耳の少女は立っていた。
その姿を見た狼耳の少女はため息をつくと、冷めた目つきになり猫耳の少女を見る。
「ふーん……そこまでしてその秘宝が大事かい?」
「当たり前です!これは私が父様と母様から託された、一族の希望なんです!誰にも渡しません!!」
猫耳の少女は、力強く言い切った。
その瞳には覚悟と決意が宿っており、とても嘘や偽りを述べている様には見えない。
それを見ていた狼耳の少女は、心底呆れた表情をしていた。
「そういうなら仕方ないね……なら、少し痛い目にあってもらおうか」
狼耳の少女は狂気的な笑みを浮かべ、金色の瞳を怪しくギラつかせている。
その視線を受けて猫耳の少女は一瞬怯むが、直ぐに立て直すと鋭い眼差しで睨み返した。
「……やってみなさい!私は絶対に負けません!!一族の名誉にかけて、貴方達を倒してみせる!!!」
猫耳の少女は叫ぶと同時に地を蹴り、狼耳の少女に向かっていく。
それを見て狼耳の少女は笑う。
「ただの箱入りお嬢様かと思えば、結構ガッツあるじゃん………君たちは手を出さないでよ。これは、ボクの獲物だ」
狼耳の少女は、2人の牛男に言うと、向かってくる猫耳の少女を迎え撃つべく構えを取る。
猫耳の少女のスピードはかなりのものだったが、その動きを予測していたのか、簡単に捌いて見せた。
「くっ!?」
「ほらほら!さっきまでの威勢はどうしたんだい!一族の名誉にかけて、ボクを倒すんだろ!」
「まだまだぁ!!!」
猫耳の少女は諦めずに何度も攻撃するが、全て防がれてしまう。
次第に猫耳の少女の動きが悪くなり、疲労の色が見え始めた。
その様子を見て、狼耳の少女は不敵に笑いながら言った。
「へぇ〜まだやるんだ?でもそろそろ終わりだよね。君の実力はよくわかったし、ボクの相手じゃないよ。まあ、ここまで頑張ったご褒美として、一撃で終わらせてあげる」
狼耳の少女は、そう言うと右手に持つ直剣を振り上げる。
その瞬間、狼耳の少女は何かに気付き、その場を飛びのく。
そして、狼耳の少女が立っていた場所に亀裂が入る。
「これは………」
「《水刃》だよ」
そう言い、リオンは猫耳少女を庇う様に、狼耳少女の前に立つ。
「誰だい、君は?」
「通りすがりの
「ああ、なるほどね。その娘助けに来たって訳か。悪いけど、邪魔しないでくれるかな?」
「それは無理な相談だな。どんな事情があるにせよ、目の前で殺されそうな人を見捨てることはできない」
リオンはそう言いながら、狼耳の少女を観察する。
銀灰色の長い髪に、金色に輝く瞳。
その肌は透き通るように白く、整った顔立ちをしている。
服装は、黒い服で防具の類は一切装備しておらず、武器は細身の剣を2本のみ。
一見すると軽装だが、体幹が良く相当鍛えられている事がわかる。
そして、その強さ。
少女が、相当な実力者で、猫耳の少女より強いのが分かる。
だが、リオンが勝てないという程ではなかった。
「ボクだって好きで殺しをしてるわけじゃないさ。そこのお姫様が、大人しく秘宝を差し出してくれればボクも大人しく引き下がるんだけどねぇ」
「そんな事、私が許すはずがないでしょう!!」
猫耳の少女は、そう言って再び狼耳の少女に立ち向かう。
「もういい加減にしてくれないかい?正直、君じゃボクには敵わないよ」
「そんな事は分かっています!それでも私は、引く事はできないのです!!」
猫耳の少女の叫びを聞き、狼耳の少女はため息を吐いた。
「はぁ……本当に困ったお嬢様だね。そんなに死にたいなら、望み通りにしてあげるよ」
そう言うと、狼耳の少女の雰囲気が変わる。
先程までとは比べ物にならない程の殺気が放たれ、猫耳の少女は気圧されていた。
「覚悟はいいかい?君に恨みは無いけど、これも仕事だからね。悪く思わないでくれよ」
狼少女は一瞬で、間合いを詰め、猫耳少女の首に向け剣を振る。
だが、それをリオンが守った。
《身体装甲》のスキルを使い、腕を硬化させ狼少女の剣を防ぐ。
「ちっ!やっぱり、君の方が厄介そうだね。なら先に、君から片付けようか」
狼耳の少女は、瞬時にリオンの後ろに回り込むと、背中に向けて剣を振る。
だが、リオンも既にその動きを読んでおり、背後に回られた時点で回避行動に移っている。
その為、狼耳の少女の斬撃は空振りに終わった。
「へぇ、ボクの攻撃を避けるなんて、中々じゃないか。それに、その速さ……只の
「ああ、そうだ。リオン=テンペスト。それが俺の名だ」
「……ふーん。なるほど、道理で強いはずだよ」
狼耳の少女は納得したように呟く。
「折角だからボクも名乗っておこう。もっとも、名前なんてないけどね」
そう言い、狼少女は笑う。
「『
狼少女こと
その言葉を聞いた猫耳少女は、驚愕の表情を浮かべていた。
「
猫耳の少女は、信じられないものを見たような顔をしている。
「へえ、ボクの事を知っているんだ?だったら話は早い。秘宝、渡してくれるかな?」
「ボクが本気を出せば、君も、その
「………わかりました」
猫耳少女は剣を降ろし、首から下げていた袋に手を伸ばす。
だが、それをリオンが止めた。
「それを渡す必要はない」
「……何故ですか!?このままでは貴方も……」
「例え死んでも渡したくないものを、俺を死なせたくないから手放そうとする。君は優しい子だ。でも、俺はその優しさに甘えるつもりはないよ」
「でも!それじゃあ貴方も!!」
「大丈夫。こんなところで死ぬつもりもないから」
そう言い、リオンは笑う。
「ははは!格好いい事言うじゃないか!君みたいなのは初めてだよ。ああ……とても楽しくなりそうだ!」
そう言うと、
「さぁ、殺し合おう。君とボク、力の限りを尽くして戦おうよ!」
その様子はまるで新しい玩具を与えられた子供のようで、戦う事に喜びを感じているように見えた。
(この子は戦いが好きなのだろうか?)
リオンは疑問に思いつつも、油断せずに構えを取る。
「いい加減にしないか、
だが、そんな中、牛男の1人がそう言う。
「お前の依頼は、フェリーン族の秘宝の回収!それを忘れたのか!」
その言葉を聞いて、
「うるさいなぁ……言われなくても依頼は果たすよ」
「なら!そんな妖精如き放っておけばいいだろ!さっさとフェリーンの小娘を殺し、秘宝を奪え!」
牛男がそう言った瞬間、
「うるさいよ……ボクに命令するな」
「ぐっ……あ……!」
牛男は苦しそうにもがくが、
「ボクは今最高に機嫌が良かったんだ。それを、君の耳障りな声のお陰で、気分最悪だよ」
「がっ……あ……!」
「これ以上ボクを不快にさせるな。殺すよ?」
そう言うと、ギリギリと音が聞こえそうなくらい、牛男の首を強く絞める。
牛男の顔色はみるみると青くなり、必死に藻掻く。
そして、完全に意識を落とす寸前で手を放し、解放する。
「げほっ、ごほ、がは!」
「次は無いよ。よく覚えておくんだね」
「わ、わかった……」
牛男は完全に怯えた表情で、何度も頷く。
「悪いね。折角の戦いに水を差してしまったよ。興覚めしちゃったし、ここは一時休戦………近いうちにまた来るよ。その時は、今度こそ相手してもらうよ」
そう言うと、
その後ろを牛男2人は追う。
「じゃあね、リオン。ボクは君を気にいったよ。次は本気で殺し合いたいものだね」
そう言い残し、3人の姿は消えた。