地面から轟音と共に砂煙が立ち上がる。
『おっとーー!? 再び爆発したぁ!! しかし、浅黄ムツキ選手が投げ込んだ爆弾ではなく、またもや何もない所からの大爆発です!!! 一体どういうことなんだーーーっ!? それとこれってルール違反にはならないのかーー!?』
再び爆発のシーンを激写したドローンから音声が流れる。先程の規模の威力であれば、おそらく直撃を食らったユウカの服装は
『まさか、まさかあの! ミレニアムの生徒会に所属している天才会計士の……いや、ミレニアムの大妖怪、冷酷な算術使いなどと呼ばれている……あの早瀬ユウカ選手のあられもない姿が映し出されてしまうのか~!!? これはとんでもないスクープになるぞーーーっ!!?』
興奮する実況と呼応するように、生徒達の歓声が第一スタジアムから響いてくる。砂煙に包まれたユウカの姿を、激写しようとしている撮影用ドローンが爆破地点へ近づいていく。
やがて煙が霧散していき、うっすらと人影が映像に映る。
『あれ……? おかしいぞ……?』
いち早く異変に気づいたのは実況役をを務めている川流シノンだった。
自身の目がおかしいのかと、指で目を擦った後、再び映像を見つめる。
やはりそうだ。彼女は確信した。
『どうやら……誰か他にあの爆発に巻き込まれた人がいるようです!! ど、どういうことだ~!!?』
ドローンが映し出している人影がなんと二つ。そして、彼女の戸惑いの声と共に二人の姿が現れた。
『なななっ、なんと! ここで乱入してきたのはなんと、面妖な術で競技者達を惑わせた久田イズナ選手です! そしてどうやら、ユウカ選手は無事なようです!』
無傷で事なきを得たユウカは、横で冷や汗を拭うイズナの方へ不思議そうに目を向ける。
「よかったです。ギリギリ間に合いましたっ。イズナのお手製隠れ布が犠牲になってしまいましたが……」
二人の背後にはボロボロになった布切れが散らばっていた。
どうやら咄嗟に布を地面に被せ、爆風をある程度抑え込んだようだ。
「あなたは……」
「えへへ、私の忍具はこれでもう全部使ってしまいました。ですが、このままゲヘナの方に主殿を連れてかれる訳にも行きません」
ユウカは少しだけ困ったように眉を潜めてから、表情を引き締めたイズナの眼差しを見て、すぐさま理解した。
(なるほどね。この子には一度先生を奪われた借りあるけど……)
ユウカはゆっくりと立ち上がる。この状況に驚く所か、むしろ愉快そうに頬をつり上げる爆弾少女を見据えた。
「確か名前は久田……」
「イズナと呼んでくださいっ。かつての敵と肩を並べて新たな強敵と戦う。これもまたイズナ流の忍者道……です!」
「ライバルとの一時的共闘ってことね。ふふ、アリスちゃんならすっごく喜びそうなイベントね」
ユウカは目を爛々と輝かせるアリスの表情を思い浮かべ、くすりと笑った。
「へ~、2VS1かぁ。でもぉ、銃を使えないこの状況下じゃまだまだ私に有利なんじゃないかなぁ!」
ユウカの状況は変化したものの、相対する少女はまだ焦る様子はない。それもそうだろう。こちら側はもう道具を所持していないのだ。手ぶらの状態では一人が二人になろうともあまり関係ない。
「ええ! でも状況は少しだけでも変わったわ! それにあなたも過度な武力行使ができない以上、この爆発の謎を解いてしまえば何もできないでしょう!」
ユウカはびしっと床に散らばる地雷を指し示す。
そう、この地雷さえ攻略してしまえば突破できるのだ。
「あはは! それが簡単にできたらもうここにはいないでしょ! それにあの行政官さんの通ったルートもな・ぜ・か地雷が作動しちゃったもんね? さ、どうやって爆弾のありかを突き止めるのかな? 残りはいくつあるだろうね? でも、そうやって立ち止まってたらもうゴールされちゃうかもね~っ!」
彼女は一切動じる様子もなく、新たに地雷を追加しようと黒鞄に手を伸ばす。
取り出したのは同じ円盤形の地雷爆弾。
それをまた、周囲にばらまいていく。
だが、それは全てダミーであることは確実だ。
(同じ手ばっかりね……やっぱり大会用に作成できたのはあの一つだけ。ダミー用の爆弾は大量に用意できているみたいだけど、本物はやっぱり全部予め地面に埋まっているのかしら。いえ、でも天雨さんが通るルートに設置されていた事実がある以上、見落としていることが他にもある……? 一体……)
ユウカは目をよく凝らし、周りを見渡す。手がかりがどこかにあれば敵の思惑が分かってくるのだが……。
「あれ? あそこに何かありませんか?」
「え? どれ……?」
「ほら、あそこです」
イズナは不思議そうな顔をしながら、ある場所を指差した。ユウカはその指先が示す場所を見つめる。
そこはダミー地雷が等間隔に置かれた間。つまり、そこには何も無い。
「何も無いじゃな……あれ?」
ユウカは違和感に気づいた。地面が不自然に盛り上がっているように見える。いや、そうではない。
(あれをどこかで……)
ユウカは己の脳内に整理されている記憶を一つ一つ開けていく。
そして思い出したのか、にやりと笑った。
「なるほど……。どうりで……」
「何か分かったんですか!」
イズナの耳がピクリと動き、ユウカの横顔に視線を向ける。
「ええ、簡単に説明するとーー」
ユウカはイズナに耳打ちをする。
説明が終わると、イズナは耳と尻尾をピコピコと動かし目を輝かせた。
「す、すごいですね! そんなものがあるなんて、さしずめ科学忍法とでも言うべきでしょうか!」
「あはは、ちょっとそれは分からないけど……」
ユウカは嬉しそうにするイズナを見て苦笑いを浮かべる。
「とにかくあれをなるべく排除しないといけないわね」
周囲を見渡す。しかし今は愛銃を身につけてはないし、彼女らのように道具を持ち込んでもいない。
「イズナにお任せください!」
自信満々に言った彼女は胸の前で手を合わせる。
「忍術!
不思議な言葉を言い放った後、おもむろにしゃがみこんで地面を己の手で削り取る。一体何をするのだろうかと見守っていると、熱で渇いた土が徐々に球状に固まっていく。
そしてそれを片手に持ち、膝を折り曲げる。
「さぁ、行きますよ!」
掛け声と共に飛び上がる。手に持っていた土を空中で投げ放つと、勢い良くユウカ達が注視していた場所へ吸い込まれていく。
すると、着弾した瞬間そこから爆発音が響き渡り、砂煙が舞き上がった。
『おーっと! 突然久田選手が何かを投げたと思ったら爆発しました! 一体どういうことだー!?』
実況の驚く声が響き渡った。
砂煙が徐々に薄くなり、地雷帯を挟んだ向こう側に立っている
ユウカはムツキの困惑している表情を確認し、ふふんと鼻をならし一歩前に出た。
「浅黄さんの使ってる見えない地雷。通称
ユウカはムツキにむけて指を突き付け、得意気に言い放った。